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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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つまずき

「まあ、そこらへんにするんだ中尉」

 そう言ってキリルムらを制止したのは、ここのシェーゲンツァート軍の指揮官であるマリーン中佐であった。老齢で白いひげを蓄えたその姿はまさに温厚なミレース人の老人のステレオタイプ的見た目である。その実、軍の中でも温厚であまり前線には出ない軍人ではあったが、時勢はこの老体を前線に引きずり出すことを強いていた。

「中佐……わかりました、ただ俺たちはこいつのことを心配しているんですよ」

「ああ、わかっているとも。ああ」

 しわだらけの顔を更にしわくちゃにして微笑んだ中佐は、岩のようにごつごつした手でキリルムの肩を叩いた。それの意図に感づいた彼は、敬礼をするとジュードルを連れて野戦病院へと走った。現在スライが治療を受けている。まだ意識は戻ってはいないが、命に別状はないということに彼らはひとまず安心していた。そこでリンドを叱り飛ばすことにしたのであった。

「中佐殿、すみません」

 酷く肩を落としたリンドが、しょげたまま老軍人に謝る。すると中佐はそばの椅子に座るように促し、彼の向かい合わせにゆっくりと腰を下ろした。

「ああ……この歳になると座るのにも辛いな……ははは」

 リンドはふと、五年前に亡くした祖父のことを思い出した。海沿いの町で漁師をやっていた祖父は、仕事には厳しい人柄であったがこと孫のことになると人が変わったようにリンドたちに優しく接していた。その笑顔がとりわけ雰囲気がそっくりであった。

「伍長、君はまだ二度目の出撃だったそうだが、よくやったじゃないか、え?あのALのパイロットが誰か知っていたかい」

 どう意味だろうか、リンドはそのままの疑問をぶつけてみた。

「あれは誰か名の知れた人間が乗っていたのでしょうか」

そう、中佐は微笑んで答えると、五十mほど離れた場所に置かれている先ほどリンドがもぎ取った白いALの右腕を見つめた。

「あれはそう、きっとオースノーツの試作機だなあ。うむ……今調べさせてはおるが見たことはない型のそうだ。それにざっと見たところ印や部品がところどころ量産機のものとは異なる部品が使われているらしい」

一旦言葉を切って深く呼吸をすると、付き人からお茶を一杯受け取り喉を鳴らした。

「ん、すまんね。それでだが恐らくオースノーツのテストパイロットないしエースパイロットという可能性が高いだろうなあ、うん」

 いわれてみれば確かに他のALとあの白いALは見た目が異なっていた気がする。他のはオースノーツの主力であるクウィールだったが、あの対峙した奴はどうにも見た目が違った。いや、見た目だけではなく雰囲気も。ただのパイロットにはない、特別な雰囲気を。

「ただ、残念ながら誰とは言えない、今のところな。だが君はよくやったよ。君はこの戦争でよくやれそうな気がするよ私は。さ、行きなさい」

 リンドはすっくと立ちあがると背筋を伸ばして敬礼をした。そしてすぐさまアルグヴァルのもとへと向かい走り出した。整備場に向かう間、彼はいろいろと考えを巡らせていた。

(あれは一体どんなパイロットが乗っていたのだろうか。歴戦のパイロットだろうからきっと屈強な、それこそ隊長みたいな人なのか。いや案外若い貴公子みたいな男かもしれない。少しだけあってみたけれどオースノーツ語はわからないし、次に会ったら殺されそうな気もする。あれはきっとまぐれだったんだろう。そうさ、そうさ……しかしプラズマ……あれが試作兵器なのだったらまずいことになりそうだ。もし制式量産されたなら、プラズマ兵器自体の量産につながる。プラズマのマシンガンなんて作られた日には……!)

 リンドは左足を硬い何かにぶつけ、言葉もなく足を抱え飛び上がった。

「!!!!」

 見ると転輪が横たわっているではないか。それは痛いのも当然だ。というよりは考え事をしている間に着いたようだ、整備場に。

「失礼、失礼……通ります」

 せわしなく動き回る整備士たちの間を縫って彼はALの整備場に向かう。整備場といっても建物があるわけではなく野ざらしである。リンドが着いたのが車両の整備場でALはもう少し向こうにあった。数機のALやAWが整備を受けるために並んでいるのが見える。その中で自分のALを見つけ出すのはいとも容易かった。

「ハハッ、酷いやこりゃ……」

 そう口に出さずにはいられないほどに、アルグヴァルの状態は酷かった。無造作に横たえられた機体は、頭部と右腕は丸ごと喪失、無事なのは左腕くらいで全体的に装甲は弾痕が刻まれておりいたるところから内部のフレームを覗かせていた。とりわけコックピット周りや背中の装甲の損傷具合がひどく、あと一歩でコックピットごと潰されていてもおかしくはなかっただろう。

「お前か、こいつのパイロットは」

「はい」

 不機嫌そうな整備士に声をかけられた。

「こいつは無茶ってもんだぜ。でもお上さんはこいつを直せってんだからむちゃくちゃってもんさ。俺たちは直したり調整したりが仕事だが、これはスクラップ業者の仕事ってもんさ。見な」

 彼に促され、リンドはアルグヴァルの頭部の方へと回る。そこで目に入ったのはプラズマによって焼き尽された右肩であった。焼かれた装甲は周囲を真っ黒い炭で染め、破孔周辺はぐにゃぐにゃに溶けて歪んでいる。また破孔も大きい。

「よくもまあこれでまだ動くってもんだ。サイオスならお陀仏だぜ」

 サイオスとは三年前までシェーゲンツァートで運用されていた、まだALが生まれて間もないころの初期の機体である。3000機超の生産を誇ったそれも、現在ではルスフェイラに主力の座を譲っているが、サイオスの欠点は電装系の弱さと装甲が脆いということであった。

「すみません、こんなにしてしまって」

 彼が謝ると、整備士は鼻を鳴らしこう言った。

「まあいいさ、俺たちの仕事だ。だがこいつはもう右腕はここじゃあどうにも直せん。他はルスフェイラのをいくらか使いまわせるが、出撃は遠距離支援しかできんぞ」

 支援、近接支援が任務の重ヴァルの仕事ではないが、自分の招いた結果であることはわかっていた。こうなってもベストを尽くしてくれる彼らに頭が上がらないリンドは、もう一度謝るとその場を後にした。既にALを一機潰している身である。これ以上そう簡単に高価な兵器をつぶすわけにはいかないのだ。

クウィール:シュリーフェンのシェーゲンツァートでの呼び名。キラロル語でハイイロオオワタリという渡り鳥のこと。


サイオス:FRALL/02サイオス 全高:12ミラス 重量:101ガトン 動力:ラックスラー型核反応炉

 1985年採用のシェーゲンツァート最初の制式量産AL。初期の設計であるためまだ小型且つ鈍重で、機構も複雑であったが操縦のしやすさが人気であった。装甲の材質が対弾性及び耐熱性に難があり、また電装系が故障しやすいという欠点もあった。また今ほどの作業用装備を備えていない。


ルスフェイラ:FRALL/04ルスフェイラ 全高:14.88ミラス 重量:111.1ガトン 動力:マルコーニ型複合エンジンⅡ型

 1992年採用のシェーゲンツァート陸軍の現行主力AL。装甲、耐久性、射撃性能に優れたシェーゲンツァート切っての傑作機。とりわけ目立つような派手な見た目はない。前主力であったサイオスの欠点を学び、耐久性に重きを置いて開発された。後継機が現れても大戦を通じて生産され、十前後の派生型を生み出した。主武装はSLW/M-P01 60㎜突撃銃、バズーカ、SLW/M-T2二連装マシンガン、格闘兵装として鉈を備えている。

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