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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第七章 若き芽よ
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白波(2)

「ントリとフェクレムヌスより入電、AL発進準備完了。順次発進させる」

 ントリ、フェクレムヌスは水中用AL母艦のことだ。艦隊後方に位置する両艦から次々とALが発進し始めている。十機の水中用ALが水中より敵艦隊を攻撃するために発進しつつある中突然アラートが鳴り始めた。

「敵機直上ーーっ!!」

「敵機より爆弾投下ーー!!」

 雲の中を突っ切ってきたのだろうか、いきなり艦隊の真上に現れた敵航空部隊は真っ逆さまに降下し次々とウェポンベイより爆弾を投下、一旦上がらせた戦闘機を下げさせたことで対空迎撃が可能となり、退避し始めた敵機たちはすぐに対空砲を浴び無防備な腹を晒したことで全機があっという間に撃墜されてしまう。残った敵の護衛戦闘機も役目を果たせないまま逃走しようと試みるも、迎撃機とのドッグファイトにもつれ込まされてしまう。

 一方で艦隊には敵の放った爆弾二十五発が迫っておりそれらの内十六発は特殊弾頭であった。

 対空砲火の雨をかいくぐって一定の高度まで落ちてきた弾頭は次々と花開く、そしてそこからより細い小型弾頭が放射状に飛んでいくと艦隊に百六十発もの弾頭が降り注いだ。その多くは海面に突っ込み不発に終わったがそれでも二割がいくつもの艦に命中、弾頭は自身の推進力に合わせて重力による落下で加速、それによって花弁より放たれた種子は甲板を突き破り内部で大爆発を起こしてしまう。

「バフェ艦橋大破!死傷者不明!ザルメザー主砲大破!弾薬庫にて火災発生!アルールル艦首破損!」

 次々と艦隊の被害報告がシェーゲンツァートに寄せられ艦隊中央にいるため艦隊左翼から前方にかけて展開している艦から立ちのぼる黒煙がはっきりと確認できた。

「すぐに付近の艦に救助を行わせろ」

「ハッ!」

「対空監視引き続き厳にせよ!ソナーにも要警戒!敵潜水艦とALに気を付けろ!」

 戦闘機隊はそのまま艦隊上空でドッグファイトを繰り広げているが、敵か味方かわからないが一機また一機と火を吹いて落伍し海面に突っ込んでいく。途中でベイルアウトして展開したパラシュートが見えたが敵も味方もわからないためとりあえず救命ランチを下ろして回収に向かう。

 今のところ新たな敵航空隊の存在はレーダー上に映っておらず、また偵察のフリゲート艦からも敵空母から続いて上がってきたとの報告はない。だが先ほどの対空戦闘開始前に第二波が上がってきていることは確かであるため、ノーラに更に戦闘機隊を発進させるように指示を出した。

 そんな中、遂に主砲弾薬庫で火災が発生していた駆逐艦ザルメザーの艦歴に幕が下ろされることになる。一際大きな爆発音は艦隊の反対側にまで届き、シェーゲンツァートの艦橋のガラスはビリビリと振動し衝撃波がそこまで伝わったことがわかる。

 弾薬庫内の砲弾に引火、まだ多くの弾薬が残っていたがそれが全てに誘爆したことで大爆発が起き艦首切断、艦橋はひん曲がりガラスは全て割れ甲板上及び艦前方にいた者は衝撃波によって即死した。艦橋でも割れたガラスによって全員が死傷し動ける者は誰もおらず乗組員に退艦命令が出されなかったことで、より被害は甚大なものとなる。

 あっという間に転覆し横倒しになった艦体、艦橋と破孔両方からどっと海水がおしよせ中にいた乗組員たちは逃げ場もなく艦内部へと押しやられ脱出も出来ない。それでも何とか奇跡的に脱出できたものは海上を漂流し後からやってきた救助艇によって回収されていくが、その数は乗員数に対しあまりにも少なかった。二百三十一人いたザルメザー乗員の内最終的に救助されたのは十名、そのほとんどが後部主砲にいた砲術科の要員だった。また、あらかじめ接近していた救助艇一艇が爆発に煽られ転覆し乗組員二名が死亡している。

 第一波空襲によって沈没した艦はザルメザー単艦だが、損傷した艦は六隻に上り死傷者も出ている。圧倒的な戦力差と思われたこの海上戦でこれだけの被害を被ってしまったのは彼らにとって衝撃的な出来事であった。

 だが、彼らが飛ばした航空隊はオースノーツ連合艦隊により甚大な被害を与えることになる。



〈こちらエルネーリーダー、敵艦隊を確認、これより敵空母に攻撃を加える。全機続け〉

〈エルネー2了解〉

〈エルネー3了解〉

〈エルネー4了解〉

〈エルネー5、了解だ〉

 エルネー隊を始めとしたアルールルとノーラから飛び立った四十機の攻撃機隊は、傷ついた連合軍艦隊を視認すると狩りをするために機を大きくバンクさせ高度を下げる。四つの塊に分かれると低空水平爆撃、高空水平爆撃、急降下爆撃の三種類に分かれて攻撃にかかるがその前に既に控えていた敵迎撃機との空戦に入った。

 まず先行していた護衛の戦闘機隊が交差、同時に二つの爆発が起きオースノーツ連合側の戦闘機が二機空中で爆散し海に残骸が降っていく。先手を取ったように思われるシェーゲンツァート側であったが、シェーゲンツァートの戦闘機もすれ違いざまに機銃を受けて一機がコントロール不能に陥りカーブを描きながら海面に向かってなだらかに落ちていく。パイロットはある程度高度が下がったところでベイルアウト、落下傘は安全な高度をすいすいゆらゆらと落ちていき、機体は海面に突っ込んで水柱を上げた。

 戦闘機隊が奮闘しているところを、高空水平爆撃の班は迂回して敵艦隊に迫るが、その迂回によって連続して行われる予定であった爆撃に遅れることとなってしまった。

 現在急降下爆撃の部隊が敵艦隊直上より機を捻って降下中であり、対空砲火の逆降りの雨の中を高速で突っ込んでいる。全機が無傷のまま爆弾を切り離し次々と離脱していく。通常急降下時には落とすように定められた速度域があるが、シェーゲンツァートでもトップクラスの精鋭である彼らにはそういったルールを無視することが出来る腕があり、事実彼らの内半数は機体を水平に持っていった際に空母の甲板よりも低い位置を水を切るように飛んで逃げ去っていったのだ。そして彼らの決死のダイブは功を奏し、十二発の内命中した四発は内二発がフェンゼン級空母ファトルナースに命中し大爆発を起こし残りの二発もアギサ級巡洋戦艦アギサとノーティルバック級駆逐艦ノーテインに命中、ノーテインは艦尾を吹き飛ばされ浸水、艦首を大きく持ち上げて沈んでいった。

 空母ファトルナースは大炎上を起こし甲板上にて駐機していた機体と爆弾に誘爆、もはや鎮火できる規模ではなくなってしまっていた。また内部でも炎上は盛んであり機関部に直撃を食らっていたため完全に機能を停止、停電を起こした艦内はパニックに陥っていた。

 そんな連合軍に泣きっ面に蜂のように続いて低空からの水平爆撃隊が飛来する。先ほどオースノーツ側が行ったように水面ギリギリで発射されたロケット弾が飛来、それらの多くは旗艦であるグウォンゼオン級戦艦チトイゼを狙ったものであった。

 動きの遅い戦艦では回避は間に合わずこのままでは艦の左舷にことごとくを食らってしまう、そう思われたがここでなんと護衛である駆逐艦エンドラスが両者の間に割って入ったのだ。

 旗艦を守るために敢えて自分の身を盾にしたエンドラスのお陰でチトイゼには一発の命中弾もなかったものの、代償としてエンドラスは艦上構造物が原型をとどめぬほどに変形、艦体は三つに裂けて沈没し乗組員二百九十六名全員が戦死した。最後の無線すらない突風のような最期であった。

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