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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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肉薄 鋼鉄の激突

機関砲を腰だめに構え、その時を待つ。

旋回している敵機に、ここぞとばかりにトリガーを引いた。が、リンドは失念していた、腰だめで機関砲を撃てたのは重ヴァルだからである。現在の中ヴァルでは、その反動を吸収しきれないのだ。いくらプログラム制御があるとはいえ。そのため機関砲は発射開始すぐに砲身がぶれ銃口はあっという間に上にずれていき128㎜の弾丸は一発も掠めることすら叶わずに向こうへと消えていった。そしてそれを待っていたかのように、敵の白いALは急加速をかけると先ほどと同様に地面をすべるように接近しつつマシンガンの弾を的確にぶち込んできた。今度は弱点を狙う必要はない。通常のALと同程度以下の装甲しか持たないアルグヴァルならマシンガンでだいたいの場所は抜ける。

「うわあ!!」

 機銃で応戦したかったが、ほとんどの機銃座は装甲と一緒にパージされていた。唯一残った胸部機銃で応戦するも、射撃開始直後にマシンガンの直撃を受け沈黙してしまった。万事休す、更にもう一度の射撃を受け、機関砲の砲身が破壊されてしまった。格闘兵装などない。そもそも多くのALが格闘戦を行わないため格闘兵装を持ったALの方が圧倒的に少ない。そして重装型は射撃が任務であるため、大量の火器管制のために格闘戦プログラムは導入されていなかった。それでも操縦桿と神経反応システムを応用すれば、おぼつかないながらも格闘戦の真似事くらいはできた。

 体を振りかぶり、勢いよく左の握り拳を突き出すがいともたやすく躱されてしまった。勢いにつられてアルグヴァルは前につまずく。そこに背中に再三の攻撃を受け、やかましいアラートが鳴り続けていた。これ以上のマシンガンの攻撃を受けるのは危険である。キリルムたちはというと、必死にリンドのもとへ駈けつけようとしているが、キリルムがスライを抱えているため速度を出せないうえに、敵ALからの攻撃を受け前進を阻まれていた。

〈伍長、下がれるか!〉

「む、無理です!」

 下がりたくとも、白いALの隙をつくことなどできそうになかった。そしてアルグヴァルは最早ボロボロの状態であった。もう一度白いALは攻撃を仕掛けてこようとしたが、ここでマシンガンのリロードに入った隙を彼は見逃さなかった。自分が生き残るにはこれしかないと、本能でペダルを踏みこんでいた。弾倉の交換を終えた敵は、止めを刺そうとアルグヴァルに接近する。しかしアルグヴァルが自分に向かって接近しているのを確認すると、左手を腰のあたりに伸ばし何かを取り出した。

「ああ!?嘘だろおい!」

 リンドは度肝を抜かれた。白いALが何かを取り出したかと思うと、ALの手のひらから飛び出るくらいの長さの棒の先から真っ白い光の刃が出現したのだ。格闘兵装、プラズマヒートブレードである。オースノーツくらいでしか開発ができなかった格闘用のプラズマ兵器である。そもそもプラズマ兵器自体が、安定した実用化が不可能とされていた。それくらいはリンドだって知っていた。しかし目の前にあるのはどう見たって実体剣ではない。格闘兵装を備えているうえにプラズマ兵器なんて、彼は体中から冷たい脂汗が噴出するのを感じていた。重装の装甲ですら対応できるかわからない、いや、格闘プログラムを積んでいないこいつで対応できるかすらわからない、いや……

 リンドの脳内は混乱していた。アドレナリンやらなんやらが体中でごちゃごちゃにまじりあってリンドの思考は酷く鈍くなっていた。

「や、やるしかないのか!」

 アルグヴァルは両腕を突き出した。マシンガンの弾がアルグヴァルの右肩の装甲を剥ぎ取る。鋼鉄の塊同士が今まさに激突せんとしている。接触の瞬間、彼は白いALに抱き着いていた。これなら迂闊には攻撃ができないはずである上に、足技などを繰り出される心配もない。だがこれからどうすればいいかも考えてはいなかった。ただ必死にそうしただけであった。白いALは必死にもがく。どうやら自爆してくると思っているようだ。金属同士が軋みあい、火花を散らし、塗料が擦れて落ちていく。敵のマニピュレータがアルグヴァルの頭部を握りつぶそうと力を込めてくる。破砕音を上げて頭部が損傷していき、モニターにノイズが走り始める。やがてアルグヴァルの保護バイザーが激しく砕け散った。そしてもう一方の手に握られたプラズマヒートブレードが、アルグヴァルめがけて真っすぐ振り下ろされた。

プラズマヒートブレード:試験的に一部のオースノーツ軍ALに装備されている格闘用兵装。普段は刃は現出しておらず、使用時に短い柄からプラズマの刃が放出される。刃渡りは出力を上下させることで変動させることができ、また出力によって使用可能時間が変化する。基本的な出力であれば普遍的なALであれば四秒ほどで両断できる。試験武器であるため安定しておらず、使用不可能に陥ることもある。バッテリーは機体からとるが、プラズマ発生器自体の寿命が短いため長時間の連続使用はできない。


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