第21AL空挺連隊、降下セヨ(2)
二人の若い兵士は、巨大ロボットArmed Loader(AL)と共に空中へと飛び出した。複雑な装置を詰め込まれたそれは、高度計が勢いよく数値を減らしていくのにいかんなくその性能を発揮していた。降下用重ALアルグヴァルに乗る彼、リンド・オーセス空軍伍長は右手を操縦桿から離し、すぐ近くにあるレバーを力いっぱい引いた。すると大きな白いパラシュートが、機体のバックパックよりさらに後ろに積まれたパラシュートパックから飛び出し機体の降下を極端に抑えた。急速に減速したため、僚機が一旦視界から消えるも、間髪入れずにあちらも展開したようで、2機のALはゆっくりと降下し始めた。
周囲を見やると、同様にいくつもの白い花が地上へと降り注いでいた。しかし中にはパラシュートを撃ち抜かれたり、開くことすらできずに空しく地表へ吸い込まれていくものもおり、彼は思わず目を背けた。一体何機が輸送機から脱出できたのだろうか。確かあのAL輸送用超大型ヘリには2個小隊分のAL計10機が搭載されていたはずだ。それぞれに1~2人のパイロットがいる。そのヘリに乗せられていたのはみな彼と同じようにこれが初陣という新兵ばかりであった。彼は一瞬にして多くの同期を失っていた。
地表が近づくと、自動的にパラシュートが切り離され、お次は各所に設置されたブースターが機体を制御しつつゆっくりと地面に彼を下した。が、パラシュートが切り離されると同時に一発の砲弾がアルグヴァルの正面装甲に直撃した。衝撃に揺さぶられ、バランスを崩した機体は背中から地面に墜落した。しかし不幸中の幸いといったところか、生い茂る大木の群れが彼を墜落のショックから守ってくれたために墜落死を免れたのであった。また降下用ALの優秀なサスペンションにも救われたようだ。それでも小さくはない衝撃を全身に浴び、肺の中の空気が放出され、空気を求めて彼の口がパクパクと開閉した。
〈大丈夫か!〉
安全に降り立つことのできた僚機のパイロットが通信で呼びかけてきた。あどけなさの残る声だった。
「ゴッホ、大丈夫だ」
〈立てるか〉
そう差し伸べてきた手を、彼はつかんだ。ALの手はまるで人間さながらの自然な動きを見せ、一本一本しっかりと相手のマニピュレータを掴んで見せている。
ALの優れた技術の一つにこの自由度の高いアームがある。ALの操縦桿は戦闘機のようにコックピットブロックにトリガーのようなものが直接生えているのではなく、後方から伸びたフレキシブルアームの先に両手の動きを子細に検知し、それをALのマニピュレーターとアームにできる限り完全にフィードバックするのだ。それ故まるで人間のような動きが可能となっている。またそれだけでなくコックピットに配された生体センサーからパイロットの神経の動きを感知し、より正確さを助け、またパイロットの姿勢や首の動きに合わせて頭部や機体の上半身を稼働させるのだ。そのためALは世界最高のバイオテクノロジーマシンとしても名高いのであった。パイロットが首を横に振れば、ALも頭部を横に振り、親指を立てれば同じように親指を立てる。
そんなこのシステムにも欠点があった。いや正確にはALの性質上、このようなより人間に近い動きをできるソフトウェアは、ハードウェアたるALの限界をパイロットがつい超えるような動きをさせてしまうのであった。
だがその話はまた別の機会に。