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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第七章 若き芽よ
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西を見て(2)

 リンド達捕虜を載せた車両が目的地に着くまでの間にわかったことがある、ここはイングレ王国の隣国で開戦当初より連合軍に与していたサブリ連邦で、クルーペ軍曹は五カ月ほど前に乗艦していた空母が撃沈され漂流後連合軍によって捕虜となり、三週間ほどしてからこの国に移送されてきたらしい。そして彼が拙いながらも覚えたオースノーツ語のお陰で得た情報によると、どうやらこれからこのトラックは航空基地に行くらしい。ということはつまり、彼らはここから飛行機で移動するような距離を運ばれるということになる。しかし、まさか彼らもここから非常に遠く離れたオースノーツまで連れていかれるなどとは思ってもみないようだ、自分達のようなせいぜい下っ端兵士風情が。せめてリンドがオースノーツ語をいくらか理解していたならば、病院のベッドから引きずり出される際に兵士に言われたことで自分たちがオースノーツへと連れていかれることがわかったのだが。

 しばらく荒っぽい運転に荷台の上で揺られながらリンドは痛みに耐えていると、途中で信号とはまた違った停止の感覚に、ようやく目的地に着いたことを察すると、荷台の外からなにやら他所の言語での会話が聞き取れたが、三、四言交わしたと思ったら再びトラックは動き出す。

「多分基地のゲートだろうさ」

 とクルーペ軍曹。なるほど確かに動き出してからは外から何かしらの警報や飛行機のエンジン音、ヘリが近くでホバリングしていると思しき音がするではないか。大型機のエンジンの回転が上がっていく音も聞こえたことから察すると、ここはそれなりに大きな規模の航空基地のようだ。大型機の離着陸には当然大規模な滑走路や倉庫などの設備が欠かせないのは、畑違いとはいえ空軍所属であるリンドは良く知っていた。

「降りろ!」

「っし、肩かしますよ少尉殿」

「助かります」

 酷く怪我をしているのは顔だけであったがリンドはクルーペ軍曹の手助けを受けながらゆっくりと荷台から出て基地に降り立った。彼らが送られたのはリンドの予想通りやはり大きな航空基地で、写真や動画などで見たことのある連合軍機が多数みられたが、オースノーツ製以外のもあるようで見たことのない型もいくつか見られたが、その多くはオースノーツなどの連合軍の主要国製の機を改修したものや基本設計を模倣して作られたと見られる類似機である。

 そういう方向性の機体は同盟軍側でもよく見られ、大国であるシェーゲンツァートやキサナデア、エルトゥールラ製の兵器を現地改修などしたものは幾度となく見てきたし、逆に開戦前にはある程度国交があったため連合軍製の兵器を今も運用し続けている国も少なくない。逆もまた然りである。そう言った国は交換部品がなくなるまで使い潰すか敵の兵器を鹵獲してパーツを何とか確保したり、他にも味方陣営の国が鹵獲した敵兵器を格安で購入するなどしてしのいでいた。

 シェーゲンツァートでも似たようなことはあり、以前は武器の輸出入をしていた連合軍のセンテ・ライデット・アイデルサークという共和国製の高射砲がまだまだ多数現役で基地防衛の任についている。勿論鹵獲や回収したものも使用されるがシェーゲンツァートほどの国の規模になるとコピー部品や合う規格の弾薬を製造することは容易いのでそうやって維持されていた。シェーゲンツァートは重工業と漁業が二つの国の柱となっている奇妙な国なのだ。

 銃を持った兵士達に見張られながらぞろぞろと捕虜たちは重たい足取りで前へと進んでいく。彼らはそのまま二百メートルほど歩いたところで角を曲がると、その先にあったのは奇妙な建造物であった。

「いや、ありゃ……飛行機か?」

 クルーペ軍曹の呆気にとられた声に、リンドはまさかと我が目を疑ったが確かにそれはビルなどではなく飛行機であった。今まで見たこともない超巨大輸送機らしきその機影は、シェーゲンツァートのALを十機も運べる世界最大のヘリを遥かに凌ぐ大きさで、開発者もそれにゴーサインを出した上層部もクスリでもキメていたのかとすら思ってしまうほどの意味の分からなくなる大きさであった。

 彼らは歩きながらもその機を観察し続けた。恐らくALなら立ったまま十機は胴体内に格納できるはずで、ペイロードは千五百から二千ガトンはあるだろう、いやそれ以上かもしれない。なんせこれまた見たことのないサイズの巨大なエンジンが前後のつり橋かと見まごうばかりの四枚の羽根にそれぞれ前に三基ずつ後ろに一基ずつ計八基もつながっているのだ。

「船だって運べそうじゃないですか?ええ?」

「……ええ……」

 そのまま捕虜たちは案の定その機体の傍まで進んだが、間近で見るとより一層その大きさが実感できた。まるで故郷の小学校のようだ、とこの時クルーペ軍曹は感じたという。

 側面のハッチからリンド達はぞろぞろと一列になって入っていくが、最後の方になったリンドは別口のハッチから乗り込むオースノーツ軍の軍服の人間たちの中にヴィエイナの姿を見た。

「あいつ」

 何か一言言ってやろうとしたが、すぐに後ろから兵士に押されて乗せられてしまいそのまま彼女の姿を見失ってしまう。とりあえずぶっ飛ばしてやりたいが、今の状態では満足に力を入れて殴れないと思われるので、悪態をつきつつ機内をすすんでいった。

「にしても航空機の広さじゃない……」

 クルーペ軍曹は最早驚愕というよりは引いているようで、轢かれた人間でも見るような憐みの感情すら篭っているような目に見える。この大きさともなれば航続距離も当然相当なものであろう、恐らくこの星を無補給で一周するくらいはあるのではないだろうかと根拠もないがそう思わざるを得なかっ

た。

 やがて彼らは格納庫の横を通りすぐ近くの隔離室へと連れ込まれる。だがリンドら複数の捕虜はこの時一瞬だが開いたままの扉の隙間に格納庫の内部を目にし、そこにはALが少なくとも二機は搭載されているのが確認できた。リンドは直感でもう一度飛行型ALに乗ることになる、そう感じた。

 それぞれが随分とシンプルな椅子に座らされベルトで体を固定する。それからしばらく後、今までアイドリング状態にあったエンジンが唸り声を上げ始めたので遂に動き出したことを確認、全員にひときわ大きな緊張が走った。

 まるで城が動いているかのような錯覚すら覚えつつも機体はゆっくりと滑走路を進み、その様子は外から見るとあまりにも異様な光景で町中が動きを止めて空を見上げてしまう。あんな山のようなものが飛んでいるという奇妙奇天烈な光景に、今にも墜落するんじゃないかとヒヤヒヤしながら空を見上げていたが、墜ちることがないどころか非常に安定した動きで上昇を始め、護衛機を伴いながら輸送機は空の向こうへと消えていった。

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