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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第七章 若き芽よ
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2.5次元の戦闘

 それから両軍の間には小競り合いが数時間の間続いたものの、戦局は再び動き出した。最初に動いたのはシルシッツェ軍の方であった、シルシッツェ軍はどうやら秘策を思いついたようで煙幕を前方に展開しそれをみたネメニーア軍は当然先ほどまでの観測データと照らし合わせて岸壁とそうでない部分を見分けたうえで迎撃を始めた。

〈クソ、サーモが使えない!〉

 アルピーは悪態をついて一旦切り替えたサーモセンサーを通常のカメラに戻し迎撃に戻る。どうやらシルシッツェ軍が展開した煙幕はただの煙幕ではなく光学妨害機能を持った特殊な煙幕触媒を噴出しているようで、その他観測機器が軒並み阻害されてしまっていた。おかげで直前までのデータと勘だけで迎え撃たなくてはならなくなってしまった。

〈そりゃ奴らもただ煙幕を撃つだけじゃあないでしょうよ〉

 ゼガシエスはけらけらと笑うと、灰皿に押し込んでいたタバコを一服する。吐き出した煙はすぐさま空気清浄機によってコックピット外へと排出され代わりに綺麗な空気が供給される。

〈はあー、落ち着く〉

〈ゼガシエス、手は操縦桿を握っとけ!〉

〈あいよっと!〉

 隊長の叱責もどこ吹く風といなして彼女はスコープを展開し倍率を上げる。例え高機能なセンサーが使えなくとも煙幕の向こうでALのような巨大な物体が動けば影が見えれば端っこが飛び出したりもする。彼女の読み通り、未だ濃厚というよりは途切れてしまわぬよう追加で投入しているらしい煙幕の向こうにちらほらとゆらいでいるALらしき巨大な影を見逃さなかった。

 両手に握った操縦桿のトリガーを目一杯引く、ア・レドーニィの両腕に握られた九十九㎜ヘビーマシンガンが次々と弾を発射しマズルフラッシュは煌き止まない。数十発の弾が煙の中に吸い込まれ小爆発が二発立て続けにその中で生じ、何かしらの効果があったことが予想されゼガシエスはにっこりと笑みを浮かべた。

〈油断するな!〉

 という隊長の怒声の直後、戦車砲と思しき砲弾がその煙の中を一発突き抜けて彼女の機体に正面から命中した。徹甲榴弾が炸裂し爆発を起こす。

〈ゼガシエス!!〉

 カミシェ少尉は前方に牽制射を行うことを怠らずに、すぐ斜め後方にいる部下の安否を確かめる。既に左手はサブアームへと伸びており折りたたまれていたサブアームはぐるりと回って延伸すると、ノズルの付いた先を二番機へと向けた。このサブアームの先には消火装置が付いており小規模な火災であれば十分に消化できる能力を持っていた、ただし容量の問題で十秒も経たずに燃料切れを起こしてしまうのだが。

 しかし、幸いにしてゼガシエス機は自身で自動消火装置を稼働させたことで被弾箇所の内部で発生した火災を消火させることに成功し、濃い灰色の煙の中が谷風によって払われ彼女の機体が姿を現した。

二番機は右脚の大型シールドに被弾をしたため本体に被害はなくシールドをほんの少し貫通して噴き出した炎が右の太ももを焼いたに過ぎなかったようだ。一番機と二番機の正面の脚部にはこのように高さ六mほどのシールドが装備されており、盾を構えずとも防御を行えるのである。代わりに脚の向きに左右されるのと重量が大きく嵩んでしまうのが欠点で、この非常にシビアかつ危険極まりない展開の仕方のためにシールドの軽量化が図られた結果、このように戦車の砲弾が貫通しかけてしまったようだ。

〈あっぶないあっぶない!!〉

〈無事か!〉

〈シールドを貫かれかけたけど……大丈夫だよ!〉

 両軍はそのままやがて煙幕が晴れてしまってもその場から結局動かずに戦線は依然として膠着したままで、シルシッツェ軍はどうやら攻めあぐねてはいるらしいがどうにも「思い切り」というものが感じられない。そのことに不自然さを抱いたカミシェ少尉は一旦攻撃を止めさせると、周囲を観察し始めた。

〈ネバスター隊どうしたあ!〉

 地上から何故攻撃を止めたのかを問う通信が入ったが、彼は通信を切ると目に意識を集中させる。何かが、何かがおかしい。しかしその何かがわからなかった。彼がもう少し発想を柔軟に持つことが出来ていればこれから起こる悲劇を防ぎようがあったかもしれない、しかしそれも酷というものと言うべき危険な作戦をシルシッツェ軍がとってきたのだから、仕方がないだろう。

 



 彼がことに気づいたのは、アルピー軍曹の機体が突如として爆発炎上し谷底へと落下していく音によるものであった。何も攻撃を受けていなかったはずのアルピー機は突然脇腹から爆発を起こし通信途絶、幾つもの小爆発を起こしてあちこちから炎を立て続けに噴き出したかと思うと今度は足の内一本の崖と接している部分で爆発、三本のアンカーで機体を支えきれずにアンカーを刺した近辺から崩壊し谷底へと吸い込まれていった。

〈なんだ!!軍曹!応答しろ軍曹!!〉

 呼びかけている間にアルピー機は硬い谷底に激突、大爆発を起こしその爆風は残ったカミシェ機とゼガシエス機を飛び越えて崖の下から三分の一ほどまで届いた。更に悪いことに、彼らの真下にはまだ多くの友軍が展開しており彼らは突然降ってきたアルピー機と岩、そしてその爆風に巻き込まれ砲兵一個小隊と歩兵二個中隊、工兵一個小隊が壊滅してしまった。

 間接的に味方によって引き起こされた大惨事、これはこんな無茶苦茶な部隊配置をしている以上覚悟の上ではあったが実際に起きてみるとその覚悟とはあくまで文字でしかないことに気づかされる。

〈アルピー、生きているなら返答しろ!アルピー!〉

 当然ながら、カミシェの呼びかけに返答などあるはずもなくぐちゃぐちゃにつぶれたアルピー機は岩塊と自機の残骸、そしてところどころに突きだした人間の手足と共に炎に包まれたまま、ノイズだけで応えていた。

〈クソ!なんだってんだい!〉

〈軍曹が、隊長、軍曹が!〉

 取り乱す部下二人を宥めたいところだが、彼自身も把握できていない謎の攻撃の出どころを探るのが先と考え彼は血眼になって辺りを注視する。それから二十秒ほどしてア・レドーニィのカメラが彼の機体より前方さらに八十mほどあがったところに何かが一瞬だが輝いたのを見た。それを瞬時にレンズの反射であると確信した彼はそのあたりを拡大するとなんとモニタに映ったのは人間であった。

〈嘘だろ……〉

 茫然とするのも無理もない。何せ生身の人間がワイヤーを使って高度五百m付近で活動していたのだから言葉を失うのも当然であった。しかもよく見るとそれは一人ではなく複数、少なくとも十人は散らばってはいたものの崖の途上をワイヤーとアンカーを巧みに駆使して移動していたのだ。彼らは皆ライフルを肩にかけており中には大きな筒や箱を背負っている者もいる、それを組み立て式の携行式ロケットランチャーだと判断した彼は、アルピー軍曹の機体が突然爆発を起こしたこと、煙幕をふんだんに使っておきながら攻め込んでこない敵とに合点がいき同時に憤る。

〈前方二百m高度五百m付近!敵歩兵だ!ワイヤーで吊ってる!〉

〈えっ!……ああっ!!〉

〈あいつらがアルピーの奴を?〉

〈そうとしか思えん!やるぞ!〉

 直ちに彼らは対人機銃を起動し入力した地点を中心に付近に狙いを定めさせ動くものすべてを攻撃させた。

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