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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第六章 広がり続ける悲しみと血と
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鋼鉄のマント

 リンドが引き続き部隊との合流を図り降下地点へと急行している頃、無事降下していた第四小隊と他の降下部隊は予想外の熾烈な守備に苦戦していた。彼らが降下したのは旧ベルヘルメ基地、現ライオアート・マルーツス基地で、ここの空港設備や要塞設備を奪えれば現在海軍が海岸で行っているジャドー・ラバ・エンガン・ザ海軍基地制圧も同時に完了することで、チャッカンマを横断する海から陸への補給線が構築されるのだ。海から補給物資を輸送できるようになれば、陸地の山を越えての空路を使わずに直接車両や鉄道を用いての効率的な物資輸送が可能となるため、確実に両基地を抑えなければならなかった。

 偵察部隊による事前調査によれば、この基地は規模こそ大きいものの戦力がかなり手薄となっているため防御は薄く比較的容易に突破が可能とのことであったのだが、果たして降りてみれば全くの虚構。想定の倍以上の火線を浴びる羽目となったのだ。

「クソッ!話が違うぞ!」

 ボルトラロールはビルの残骸に機を潜ませながら時折向こうの様子を窺うが、少し顔を出せばそこに集中して火力を叩き込まれるため、すぐにひっこめざるを得なかった。

〈あいつら、どうにもやりての指揮官がいるみたいですぜ〉

 ジュードルは嫌に統率された敵の防衛にそんな気配を感じていた。

〈おまけに完全に対AL戦闘を想定していますよ!〉

 そう悲鳴を上げたのはテルペヴィラで、彼の言う通りあちらこちらにあらかじめALが投入されることを想定しての設備やトラップが仕掛けられていた。対AL地雷を始め砲台には貫徹力の高いAPFSDS弾頭を用い、ALが隠れられるようなサイズの小さな遮蔽物をそこかしこに基地のゲートを中心に基地側に建設されているのだ。

〈こいつぁどうやら筒抜けってこっですかねえ。おっと〉

 ジュードルの言う通りかもしれない、ボルトラロールは眉間に皺を寄せる。まあかなりの大規模な部隊を動かす上に多国籍軍なのだからいくらでも作戦の抜け道くらいはあるのだろう。しかし、これはかなり最初の段階から読まれていたのではないだろうか。それにしても、それにしたとしてもだ。何故知っていたならばもっとより強固にあらかじめ部隊を配置しておかなかったのだろうかという疑問点が残る。

 いかにもなミステリーがそこに存在ているかのように思われたが現実はそんなに入り組んだものでもなかった。確かに、連合軍はこの作戦のことを察知していたが、そこまで前というわけでもなくつい最近のことである。そのためこれら防衛設備は夜通しの突貫工事で急ごしらえされたものだったのだ。兵力がそろっていないのも急な配置転換が不可能であったことや、同時期にアストリアス大陸で侵攻作戦に兵力を注いでいたために、こちらに回せる戦力がどうしても用意できなかったのである。事実は小説よりも単純なり、といったところだろうか。

 そんな裏事情、同盟軍は知る由も無いままただ想定以上の防衛戦力に苦戦しつつあったが、それでもどうにか前線を維持できていたのは敵に比べて兵士の練度の高さ、兵器の質、そして余分にALの戦力を用意していたおかげであった。特に今作戦には砲撃型ALを八機、実に用意したALの半数以上が砲撃型という動員をしていたのだ。ALは遮蔽物に身を隠しつつ曲射榴弾によって果敢に応戦し敵施設を破壊していった。

 戦闘も三日目に突入したころである、徐々に敵の防衛戦が後退を始めたことに気づいた同盟軍部隊は、一気に前線を推し進めた。AL隊が先に進んでいく。

〈今度はこっちが使わせてもらうぜ〉

 と意気揚々とジュードルはAL用と思しき遮蔽物まで突っ走るとそこに機体を滑り込ませて射撃をしていく。六十mmの弾丸が立て続けに発射される際に生じる音はすさまじく、絶えず連続で大砲を撃ち続けているようなものである。この突撃銃は一秒に四発の弾を発射するが、人間の銃で例えるならばかなり遅い発射速度となる。しかし、ただ人間のものを大きくしたのだと考えてはいけない。発射する弾が大きくなった分使用する金属は増え砲身にかかる負担も増す。あんまり高レートで発射してはすぐに弾切れになるし、ライフルが破損してしまうというもの。よくロボットものアニメなどに見られる、弾切れしたら銃を捨てサーベルを抜き突撃などということはしない。弾が切れればその武器は機体に懸架するなどしてしまい、後退する。そもそもまともなパイロットならその前に後退し補給を受ける。AL用の銃には大量の金属やレアメタルを使用しているのだ、一丁一丁が車よりも遥かに高価なのである。

〈ヴィル!あのトーチカに榴弾ぶちかませ!〉

 と、ジュードルはヴィレルラルへ指定座標を送ると彼は曲射を止め砲身をほぼ地面に水平に取る。目標は大口径の大砲が構えている対AL用とみられるトーチカ。先ほどからALや戦車が攻撃を仕掛けているが正面装甲とベトンがかなり厚いらしく有効打が見られない。このままでは弾がもったいないと一旦彼は砲ヴァルに支援を求めたのだ。

 ヴィレルラルは高貫徹の新型徹甲榴弾に砲弾を切り替えトーチカをまっすぐ狙う。性能は高いが生産され始めたばかりで僅かに二発しか搭載していないうちの一発、必ず当てねばなるまい。彼は機体を安定させるため片膝立ちの姿勢にすると、狙撃用モニタに切り替え倍率を上げる。狙うは大砲が砲身を水平に動かすための狭い隙間、ヴィレルラルは下唇を軽くかむと引き金を引いた。ひときわ大きな発射音、マズルフラッシュが瞬きバックパックからは蒸気が噴出する。撃ちだされた砲弾は一瞬でトーチカに刺さり大爆発を起こす。

〈やったぜヴィル!!ホーッ!!〉

 歓声を上げたジュードルはボルトラロールの援護射撃を受けつつさらに前進し、同時に右翼に展開している陸軍第六機械化混成師団とエンジウ陸軍歩兵師団も歩を進め始めた。トーチカを覆う煙は未だ晴れぬが、吹き出ている炎とどす黒い黒煙が噴き出していた。その上で数分後に激しい誘爆音と共に大爆発をトーチカがおこし辺り一面に瓦礫や破片を飛び散らせたことで完全にトーチカが破壊されたことを示していた。勢いづいた同盟軍は進撃速度を速め始め、その先頭にいたジュードルは両手に抱えた突撃銃を牽制の要領でまき散らしながら次の遮蔽物を目指していたが、突如として煙の中から飛び出した一発のロケット弾頭の直撃を受けてしまう。

〈ガガガッ……アーッ!!ズズズ……ガガ〉

 通信機からは一瞬ジュードルの悲鳴が聞こえたものの殆どノイズと爆発音に飲まれて聞き取ることが出来なかった。

「ジュードル軍曹!軍曹!応答しろ!クソッ!」

 ボルトラロールはすぐにでも支援に向かいたかったが、それを阻むかのように急に敵の反撃が増し始めたために飛び出すことが出来ずにいた。

「司令部!こちら第四小隊、敵基地の航空映像を求む!」

 彼が請うとほどなくして基地上空を飛行中のドローンから基地の俯瞰映像がリアルタイムで送られてきた。

「ズームだ、青い屋根の建物のあたり……そう、そのあたりをもう少し!」

 彼は映像に目を凝らしつつ無線でドローンの操縦手にある一点をカメラでズームしてもらう。彼が見たかったのはジュードルではない、部下を撃った主だった。

 彼の指示した周辺を見回していると一機のALに目がとまった。

「……あいつか?」

 画像は荒いが面で多くが構成されたグレーのALは、大きなAL用ロケットランチャーを右腕に携えていることが確認できた。その周りにはさらに数機の同型のALがおり、ランチャー持ちを中心に陣形を構えていることから恐らくそれが敵の指揮官機であり恐らくこの巧みな防衛線を指示してきた兵士だとボルトラロールは直感で感じていた。

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