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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第六章 広がり続ける悲しみと血と
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ひとりの要塞(2)

 敵はALと戦車でリンドを挟み撃ちにするつもりだったらしいが、残念ながら連携がうまくいっていなかったためにその目論見は失敗に終わってしまった。戦力の逐次投入という非常に愚かな結果になってしまったとはいえ、ここで引くわけにもいかない。死んだ同胞の仇を討つためだ。しかし、このALパイロットたちも不運であった、せめてリンドの乗っているのが中ヴァルであったなら……

 戦車とその周辺の随伴歩兵を蹴散らしたリンドは正面に向き直り、ALを待ち構える。確実に撃破するためにはこの距離であるがロケットを使うのが良いだろう。彼は右肩のロケットポッドを一基展開すると敵が見えた瞬間に撃てるよう頭上のスイッチに右手の指をかける。左手は操縦桿を握って突撃銃でも応射できるように待機中だ。

 レーダーの反応はすぐ近い、マイクも他のALの足音が作る振動を拾っている。心臓が激しいビートを刻み呼吸も自然と早く浅くなる。もうあと十秒もすれば敵のALが曲がり角から姿を現す、そんな時であった。突然爆発と振動がリンドを襲った。

「ああ!!?」

 完全に不意討ちである。まさか敵戦車がまだ生きていたのかと思い後方を映すがどの戦車も残骸となって黒煙を吹き上げており、炎もまだ何かを焼き続けている。ではALが?いや違う。彼が戸惑っている間にALは目の前に姿を現し攻撃を仕掛けてきたからだ。

 サブマッカ―帝国製陸戦用ALビラドA2型だ。装備する四十二㎜マシンガンは小口径で若干の威力不足は否めないが銃自体の整備性が高く泥の上に落としても難なく使えたといわれるほどの上部さを見せる。いくら小口径とはいえ至近距離での攻撃は重ヴァルでなければ確実にもうリンドの命はなかったはずだ。また重ヴァルの装甲に救われながら彼は離脱のため後方へと後ろ走りで逃げていく。曲がり角に到達するとそのままスライドするように跳びビルを遮蔽物として隠れ、急いで距離をとるために走り出した。

「一体何が!」

 未だに攻撃の正体がわからなかったリンドは怒り交じりに機体の状況をチェックすると攻撃は左の脇腹に咥えられていたことが分かった。脇腹は装甲が比較的薄く、尚且つ内部には重要な区画や腕の可動のための複雑な機構が組み込まれているため脚に並んでALの弱点の一つとされている箇所だ。そんなところをピンポイントで狙ってくるという敵の練度にも驚かされたが、何より彼の背筋を凍らせたのは左側にはビルが建っていたということである。あの時自分は機体の左側を大きなビルに接するように立たせていた。この箇所に攻撃するにはまずビルを貫通しなければならないが、ビルにはそのような大規模な破損はなくその予兆もなかった。だということは……だということは……

 彼の懸念はすぐに目の前で証明された。

「あ!」

 モニタの端に、トラックの荷台に二人の男が立っているのが見えた。一人は何かを担ぎ、そしてもう一人が後方で人間の腕位の大きさのものを抱えている。直後、担いでいる男からロケット弾頭が発射され、警告が鳴る間もなく左腕のガントレットに命中した。彼が驚いている隙にトラックは走り出し街中へと消えていった。

「ゲリラだって!?なんで、なんで俺を攻撃するんだ!」

 間違いなくあれは軍人ではなく民間人であった。直前に目撃した逃げていない民間人の、他の人間とも顔の特徴が似ている。

 戦争に非軍人である民間人の戦闘員はつきものだ。彼も戦地で見たことはある。だが攻撃される由縁はない、何故ならここは同じ同盟軍に所属するチャッカンマの街なのだから。共闘することはあったとしても、これはどう考えてもおかしい。まさか敵のALと勘違いしているのではないか、そうでもなければ狙われる筋合いはないというもの。

 リンドはつい自分が軍属であるがゆえに自分たちの常識が世間の常識と思い込んでしまっていたのだが、彼らは元はといえば一般人、敵味方のALの違いがつくわけがないのだ。ましてや国旗が記してあるわけでもないこの機体の。先ほどのゲリラも含めてこの町の者たちはここに駐屯している連合軍と解放に来た同盟軍がごっちゃになっており、いつ間違いに気づくのかすら不明であった。

 リンドはそのことを知らぬまま機体を進める。とにかくゲリラに出会わぬようにしたいが、ここは彼らに地の利がある分そうもいくまい。

 後方カメラに追いついた敵機が映り、背中に向けて銃撃を浴びせてきているのが確認できたため、リンドは左腕だけを真後ろに向けると反撃を開始する。全速力で走行しながらの後ろ撃ちでは当たるものも当たらなくて当然で、大した命中弾もなくリンドは逃げ続けるしかない。かといって鈍重な重ヴァルで逃げ切れるとも思えない、だから倒さなくてはならないのだろう。一番大切なのは自分の命、異国の町を傷つけないために自分が死んではばかばかしいのだ。

 覚悟を決めると彼は脇道に機体を滑り込ませると少し待って反転、敵機が二機とも八十mほどの超至近距離まで近づいたところで飛び出し火力を投射した。

「くたばれーー!!!」

 突撃銃がまず先頭のビラドを捉え沢山の弾丸をぶち込んでいく。この距離で徹甲榴弾の雨を食らえばどんなALだってひとたまりもないだろう。あっという間に正面装甲をミンチにされた先頭の機体は残骸をまき散らしながら後方に倒れる。次いで二機目にも照準を合わせると、同時に敵機もグレネードを投げて応戦してきた。自分たちの銃じゃあまり効果がないと考えたためであろう。その判断は良かった、しかし使う状況を誤っていた。

 目の前で銃を撃つのを止めグレネードを投げるという非常に隙の大きい動作は、混戦時や遮蔽物に身を隠していない状況では禁物で、ものの見事に目の前で隙を晒した残りのビラドは片手を上げたまま銃弾を浴び、止めは破壊された腕が取り落とした自らのグレネードの爆発に飲みこまれて終わった

 燃えさかる残骸を前にしてリンドはひとまず自らの無事に安堵して目を瞑り深呼吸をする。息をするとコックピットの独特のにおいが鼻の神経に当たって自分はALのパイロットをやっているのだということを自覚できる。

 気を取り直して進まなければと、リンドは改めて本来の降下地点を目指すべく北上を始めた。が、またしてもここでゲリラの攻撃に遭う。隣の通りを二台の車両が並走しているのをカメラが捉えたことでリンドは下唇を噛み考えを巡らせた。同盟国の国民だ、ここで殺してしまえばあとで両国の間に亀裂が入りかねない。だがだからといって一対一の人間同士での格闘戦ならともかくこちらはALに乗っているし向こうも殺す気でこちらに銃を向けている。どう手加減してもこっちの力では殺しかねないのだ。

 殺さないようにして生き残るという無茶苦茶な制約がかけられていると彼はひとりでに思いこみ、頭を抱える。とにかく、今は逃げるしかない。

(そうだ、ALに乗ってるんだ!ならALの本領発揮じゃないか!)

 彼はふとALの汎用的機動性を思い出す。車両ではいけないところにもALはその鋼鉄の足を使って縦横無尽に走り回れるのだ。急いで周辺のマップを呼び出すと山間部ないし森林を探した。一番近いところで四kmのところから小さな山が始まるらしいので、彼は底に向かうことに決め、進路を若干西側にずらし機体を走らせる。

「ん!?」

 アラームが鳴り、後方にいつの間にか回り込んでいたテクニカルの荷台から機関銃が背中に向けて発射されるが、所詮は車載レベルの機関銃、ALの装甲には痛くも痒くもない。この程度でこの先も済むことを祈りながら、重ヴァルを目一杯走らせた。

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