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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第六章 広がり続ける悲しみと血と
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老兵

 町の反対側から迫りくる敵の戦車やALは、交差点に陣取ったバザモがおしとどめてくれているが、たった一両では押し切られるのも時間の問題であろう。その前に打開策を見つけるか最悪逃げるしかないだろう。だが、いくら懲罰部隊の身に落ちたと言えど、軍人のプライドまで堕落したわけではなく、そのような悪手は可能な限り選択肢に入れたくはなかった。

「待て」

 走っていた三人は、ボルトラロールの指示で立ち止まり、裏路地の影に隠れた。そんな彼らの前を十名ほどの敵兵が走り去っていった。もし彼の指示がなければあっという間に全滅していた危険性もあり、冷や汗を流した彼らは敵が通り過ぎその後続がいないことを確認すると、砲声に足音を紛れさせつつ通りを横断しその先へと進んだ。通りはどんどん右へと湾曲しており、町の外側を大きく迂回する形になっているようだ。これならうまくいけば敵の横をつけるかもしれないが、敵だってそれくらいわかっているはずで、恐らくこの先には防御陣地が控えているに違いない。

「さて、どうするか」

 流石の彼も、この状況下を打開する術はもたず周囲に機転となる何かが無いかと探しているところであった。テルペヴィラが二人を呼ぶ声がしたのでボルトラロールとリンドは彼の元へと走り寄る。

「これ」

 彼の目の前にあるものを見た二人は思わぬものを見つけてしまったという困惑と期待の入り混じった複雑なな目をしていた。

「これ、AWか?」

 ボルトラロールは崩れた家に体を預けるようにして倒れている中型の兵器に上りながらそう呟く。ALにしては小さく、AAにしては大きく人型からは逸脱していた。

「そのようでありますが……」

 上側に回り込むと、露天式で中に丁度人が乗り込めそうな操縦席が見られるため確かにこれはAWと思われたが、彼らが気にしていたのはそれではなかった。気になっていたこと、それは目の前に擱座しているAWがかなり古い型であるらしいことであった。外装はかなり角ばっておりALが登場する五年は前のものだとみられるが、外装はあちこちが変更されており元の姿は想像できない。中の機器もいろんな兵器や他の型のAWから取ってきたと思われるメーターやレバーなどが混在しており、どれが純正品であったのかさっぱりである。

 つまり、こいつはこの国で長い間酷使され続けてきた超がつくロートルAWであった。

「使えそうか?」

 ボルトラロールの発言に、二人は耳を疑った。

「まさかこいつを?無茶苦茶ですよ、これに乗るくらいならまだ生身で戦った方が安全までありますよ!」

 リンドのいうことはもっともだろうが、今の彼らになりふり構っていられるほどの余裕はない。例えポンコツでも使えるものならば使っていかねば生きてはいけないのだ。

「うーんわかりませんね」

 テルペヴィラはあちこちスイッチをいじくりまわしてみたが、なにがなんだかわからない。まず彼は技術者でもないし、ゼーキの国の言葉などもっとわからない。一応この機体の製造元の国の言語も刻まれてはいたが、そちらもさっぱりちんぷんかんぷんであった。

「軍曹、君は」

 話を振られたリンドも首を横に振る。

「ふうん……仕方ないだろう、とにかくやってみよう」

 時間もないため、兎に角動かせないかを試してみることにしたボルトラロールは、ALの再起動手順を元に主電源だと思わしきスイッチをひねり、次にエンジン始動レバーらしき棒を入れた。一瞬、計器盤に光が灯り、エンジンが起動しかけたもののすぐに光は落ちてしまい、再び静かになってしまった。だが、手順はわかった。願わくば、これが放棄された理由が燃料切れでありませんように。そう一縷の望みに賭け彼らは一生懸命にこの古びたAWを起動させようと粘っていた。

「隊長、向こうから敵のALが……!」

 見張りをしていた悲鳴にも近いテルペヴィラの声が耳に入り、焦りが増す。リンドは機体に被さっている瓦礫をどけ関節まわりを落ちていた箒で掃き壊れている場所がないかしきりにチェックをし、ボルトラロールは何度も機動の手順を繰り返す。だが、やはりあと少しのところで起動しないのはどこかに異常があるせいだ。

 ALがもう二十m先にまで近づいた時であった、リンドは横にあるメンテナンスハッチが半開きになっていることに気づき閉めようとしたが何かが引っかかっているのか閉まらない。まさかと思い逆に開けてみると、刺さっているべきであろうプラグが半分抜けていたのだ。彼はプラグを押し込もうとしたが中々うまくはまらないため、思い切って銃床で殴りつけた。するとスポッと綺麗にプラグがはまり込むと同時にタイミングよく偶然ボルトラロールが再起動をかけたため、遂にAWは起動したのだ。

「レッジャーリア!!(※1)」

 思わず歓喜の叫びを上げると、さっそく機体を起こしにかかった。AWはALと異なり殆どの機体にアームがないため自力で人間のような動きで起き上がることが出来ない。その代わりにフレキシブルな脚部の動きによって生物には不可能な動作で倒れた状態から起き上がることが出来るのだ。このポンコツも古い設計ながらも例外ではなく、不安を覚える異音を上げながらも立ち上がると、およそ三m程の高さにボルトラロールの頭がきた。古い機体らしく、全高が高い。

「よし乗れ!」

 リンドとテルペヴィラが防弾板の後付けされた両サイドの歩兵用の簡易座席に腰かけると、ボルトラロールは簡単な移動の練習をしながら武装の確認をした。

 武装は歩兵用座席の直下に懸架されており右側には二十八mm機関砲、左側には無反動ロケットポッドが備えてありこいつが対装甲戦力用として運用されていたことを如実に表していた。残弾もしっかりと残っているようで、燃料もそれなりに残されている。何故こんな万全な機体が打ち捨てられていたのかは些か疑問に残るところはあるものの、そのおかげでこうして戦う力を得たのだから悪くない。

「来るぞ、二人は歩兵を狙え。ALは俺がやる」

「わかりました!」

「りょう、了解であります!」

 ボロいが、案外スムーズな動きで歩を進めるAW。サスペンションもしっかりと整備されていたようで彼らはあまり酷い揺れを覚えることは無く順調に進んでいた。

「いま!」

 通りに躍り出ると同時にロケットポッドから一発の弾頭が発射され、一瞬で目の前に姿を現したALの右足を吹き飛ばした。ゆっくりと倒れるAL、少し離れて展開していた兵士たちは爆発の威力に押し転がされ何が起きたのか理解できずにいた。また、片足を失ったためALが倒れるのだが、不運な数名の兵士が逃げ遅れてその下敷きとなってしまったようだ。

「ぐううう!!」

 一方でリンドたちの方も至近距離でALの足を吹き飛ばすほどの威力のロケットが爆発したため、三人はAWごと壁に打ち付けられたが敵からの反撃が来ぬうちに急いでその場を離脱する。遁走する彼らを、無事であった歩兵が狙うが、この古い型のAWは腰に回転機構がないため背後への攻撃が出来ない。そのため代わりに両側の騎乗した兵が座席を回して後方へ応戦するのだ。座席に軸があるためそのままZ軸で回転させると防弾板ごと後方へといすが回るため、二人は無防備に体を晒す危険性はなく牽制を行えた。

「よし!いいぞ、このまま敵を攪乱し続ける!警戒を怠るなよ!」

「ハイ!」

 このままバザモの所へ戻るわけでも、逃走するわけでもない。まだ同じ苦しい境遇の同胞たちが戦っているのだ。AWを持ってすれば、多くの可能性が生まれる、ここで大戦果をあげることだって……

※1 レッジャーリア:キラロル語で感情が昂った時によく使われる言葉。その時のシチュエーションで意味合いは変わってくる。元々は漁師たちが獲れると一年は漁に恵まれると言われていた珍しい魚のことをそう呼んでいたことから。

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