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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第五章 汚染されゆく星
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終わりなき牢獄(3)

 着弾後すぐにボルトラロールはコンピュータに着弾地点や発射音とそのあとに鳴った砲弾の空気を切り裂く音の聞こえ方などを元におおよその砲撃地点を割り出させると、ここから十km前後離れた北西の方面付近という予測が打ち出された。

〈ヴィレルラル軍曹!今送った地点に砲撃を順に行え!焼夷榴弾各一発ずーつ!〉

〈了解です〉

 ヴィレルラルは送られてきた複数の座標データを砲撃システムに入力しつつ射撃を安定させられる地盤のしっかりした場所に移動すると、命令通り焼夷榴弾を一発ずつ撃ち込んでいった。野砲よりもはるかに高い位置から放たれた砲弾は、空へと向かってぐんぐん上昇していくと、今度は放物線を描きながら大きい角度で地面に突っ込んでいく。音速を超えた砲弾は一瞬にして地面に突き刺さると同時に周囲を巻き込んで大爆発を起こした。爆薬によって砲弾内部に仕込まれた細かな鉄片が飛び散り、積もった雪は土と共に空高く舞い上げられ何もかもを焼き尽す特殊燃料を用いられた炎が数十mを飲みこんでいった。

 だが、残念ながら第一射が焼いたのは雪と僅かばかりの枯れ木のみであった。続けて第二射、第三射と放たれていく一方で、渡河中の部隊は一部の兵士によって落下した兵士の救出が行われていたが芳しくなかった。河は凍っているため流れが止まっているかのように錯覚するが、凍り切っていない内部は下流に向かって流れを持ち続けている。そのため、数名は氷の下を下流へと流されてしまい、氷の蓋に防がれ浮上することも敵わず、骨まで凍る冷たさに体力を奪われ、また重たい装備と冬季装備が体から浮力を奪っていき、皆川底へと沈んでいった。

 それでもどうにか川から救い出せたのはわずかに二人、一人は運よくライフルが氷に引っかかり縁にしがみけた者、もう一人が装備をしっかりと止めていなかったために金具が着弾時の衝撃で外れたおかげで沈むよりも泳ぐ力が勝った者であった。真面目にしっかりと金具を止めていた者達は皆、沈んだ。冬季装備という動きにくい恰好のため装備を外すのに手間取ったのではないだろうか。いずれにしても、彼らはもう二度と浮上してくることも、引き金を引くこともない。そして、故郷の土を踏むことも。

 助け出された者はすぐに装甲車の中に引き入れられ服を脱がされると毛布で体を覆われて暖房の前に連れていかれた。水中にいたのはほんのわずかな時間だが、その一瞬で彼らの体温はすっかり奪われてしまい、浅黒いミレース人の肌も蒼白となり目は見開かれ震え続けていた。

 四発目がヴィレルラル機から放たれ、台地の一角に着弾すると同時に、AL用焼夷榴弾にしてはやけに大きな爆発の柱が上がったのが確認されたばかりか、立て続けに同様に激しい火柱が上がったのを見て砲撃部隊に着弾したことが分かった。

〈よくやった軍曹!〉

 褒められたヴィレルラルは短くどうもと答えると、一人遅れ始めていたため全速力で部隊を追った。

〈軍曹が砲撃部隊をやったが全部潰したという確証はない、各自注意しろ。いいな、オーセス軍曹、テルペヴィラ上等兵〉

「はい」

〈ハイッ!〉

 先ほどの攻撃で無傷であった若い二人は返事をすると、目をぎらつかせて周囲を睨み始めていた。

 再び、ボルトラロールの元にメッセージが届く。内容はこうだ、


 こちらの損害は、工兵が二つ砲撃が死。装甲車一つエンジン不調。


 変な文章だが恐らく翻訳装置のよくあるいまいちな翻訳のためだろう。どうしてもニュアンスの違いや一つの単語で複数の意味を持つ単語、また熟語などの存在がスムーズな翻訳を妨げてしまうらしい。これはどうしても避けられない仕方のない問題だと、彼の友人である翻訳ソフトの開発を行っているエンジニアが言っていたのをふと思い出した。

 ボルトラロールは自分たちの損害も報告しておく。

 

 こちらの損害は兵士が七名水没し死亡。二名が河に転落も救助。その他被害なし。


 うまいこと翻訳されて伝わることを祈ると送信を押した。クソみたいな誤訳が起きて大問題になることだってあるので、それだけは避けたい。ここには誰一人として互いの言葉をわかる人間がいないのだ。いることにはいたのだが、出撃の前日の夜に感染症に罹ってしまい基地で療養している。代わりの通訳係を用意することも出来ず、意思疎通をうまく出来ない状態で彼らは出撃する羽目となったのだ。

 ビト少尉からの返信が届いたので翻訳をかける。


 了解。このまま直進がするためのか。


 思わず首を捻るボルトラロール、このまま進路は直進をするのかという問いであることはわかるが、直進という選択肢がないことは彼もわかっているはずだ。だとしたら、考えられる限りでは元のルートに徐々に戻していくということなのだろう、今は別のルートをとってはいるが、結局のところ向かうのは同じ場所である。彼は恐らく自分の考えた意訳であろうと合点し、そうであるということを変身すると少しずつ本来の侵攻ルートに沿っていくように部隊を曲げた。


 

 このまま攻撃なければいいのだが、やはりここは戦場、そんなに思い通りに行くわけがなかった。再び砲撃が浴びせられ、リンド機が左肩に直撃を受けよろめいた。

「わああ!!」

 突然の砲撃にリンドは叫び、よろけてしまう。左肩への被弾だが、モニタにはまだ冬季迷彩が施された突撃銃を握った重ヴァルの右腕が見えているのでもがれてはいないようで、流石は重ヴァルの装甲であった、だが関節自体は他と共通であるためそこまで耐えられなかった。コンソールに左の関節にダメージが入ったことを示す表示が出てきて彼は舌打ちをする。よりによって利き腕の方をやられるなどついてない。

〈砲撃はあの村か!〉

 ジュードル機の指が、十時の方向にある非常に小さな村と呼ぶにもおこがましいという規模の家々の集まりを指さしている。そちらの方にカメラを向け拡大すると、確かに小屋の壁から発砲炎が噴き出しているのが見える。恐らく納屋にでも戦車か野砲でも隠しているのだろう。六百mは離れているのに初弾命中を指せるのはなかなかの腕前だが死んでもらう。

 各機足を止め膝をつくなどして姿勢を低くして被弾面積を減らしつつ安定しての遠距離射撃を行い始めた。また戦車隊も雪に半ばハルダウンしつつ村へと向けて砲撃を開始した。すぐに屋外にいた野砲が一門エルトゥールラ軍の戦車ビルデートによって吹き飛ばされ、続いて納屋もAL隊の攻撃によって跡形もなく吹き飛んだが、直前に脱出していた敵戦車が黒煙の中から現れると後退を始めた。

 この遮蔽物のない広大な雪原を村から出れば逃れられるとは思えないのだが。計二両の戦車が砲撃をしつつ後退していくので、混成軍はその場で追撃を始めたのだが突如ベザン三式の内大型機関砲を抱えた機の背中が爆発を起こし、その機は前のめりになって雪の上に倒れた。

〈何事!〉

 後方レーダーを確認すると、熱源が五つ八百mほどの距離に確認された。

〈ALです隊長!〉

 敵をモニタに捉えたジュードルが報告する。

 彼の言う通り、部隊の右翼側に複数のALの姿が小さいながらも確認でき、データ照合によりオースノーツ軍の局地戦用ALフェルメノMk.2であることが判明した。小型で軽量のこの機体はかなりシンプルながらその分頑丈で過酷な状況下においても稼働し続けるという名機である。それらが冬季迷彩を施され長距離射撃砲を抱えて挟撃を仕掛けてきたのだ。素早い対応が求められるが、この危機においてボルトラロールはどのような指示を部隊に下すのだろうか……

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