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容赦






王族と神官と聖女の三人が並び、昼間に国民への顔見せがバルコニーで行われた、来訪を慶ぶ祝砲が上げられ、広間には豪華な食事が並ぶ、夜は宴だ。

国賓ではあるが、聖女は身分を持たずとされているため、平民と同じである、けれど民にとっては王族かそれ以上の敬意を払う相手でもある。聖女を一目見ようと挨拶の列は、上位の貴族だけでも長蛇になっていた。

宴が終わっても、アルフェンスは顔を隠すためのヴェール越しに挨拶しかしていなかった。アルフェンスに会っても、聖女は目について触れられなかったので、肩透かしをくらった気分になり、そんな自分に何を期待していたのだと問い詰めたくなった。



王宮にある応接間に一人の少女の声が響いた。


「あぁ、なんて言うことでしょう。神は貴方にこんな大きな試練を与えるなんて」


朗々とした声はまだ若くアルフェンスと同じ10代のようだ、けれど既に人を従わせる威厳もあり、自然と背筋がのびる。ガラス玉のように透き通ったブルーの瞳、甘さを含んだブラウンの髪が腰までゆるやかにウェーブを描く。

ヴェールを脱いだ聖女はこの世の者とは思えないほどの美しさだった、ただの白のドレスがきらめいて見え、護衛をしている騎士でさえ、視線が吸い込まれそうなほどに。

教会の理念である愛と救済を体現したような姿に、一瞬息が止まる。


「あぁ、でも大丈夫です。貴方を見捨てたりしません。こうして私がいるのは運命なのですから」


するりと、アルフェンスの傍に近寄り、聖女はその細く綺麗な手で、アルフェンスの其れを取った。

やはり対面に座れば良かったか、と後悔してももう遅い。儀式には近くにいる必要があると言われ、不本意ながら、席一人分をあけて座ったのだが。


「離さないでくださいね。これから解呪をしていきますから」


にっこりと笑った聖女は、輝かしく、誰もがとくめきものだろう。

生きた宝石、と呼ばれるのに相応しいほど。

だが、アルフェンスは何故か心の底がひやりと、存在が遠く感じた。

この場には王と神官と聖女しかいない。

護衛の者達は普段、表舞台に立たない、口の固い騎士たちに代わっていた。


「どうか、心を静めて。貴方の呪いの原因は…きっと、貴方を…いいえ、正確には“王の子”にいくようにしてあります」

「そんな馬鹿なっ…!」

「王よ。儀式の最中です。聖女の言葉を遮らぬようお願いします」

「深い、恨みがその糸を断ち切らせない。でもアルフェンス様、安心してください。私は、貴方の全てを受け入れますわ」


アルフェンスの魔力は膨大だ、其れに馴染むように光のような聖女の魔力が、そっと、絡めとるようにアルフェンスの魔力と交わっていく。

だが、周りの者は何をしているかはわからない。具現化する聖女の魔力だけは神々しく見えていることだろうが。

ほとんどが身体の内側から生まれる魔力、聖女は集中するためか、アルフェンスの目に手をかざした。


「アルフェンス様、私は貴方の“罪を許しましょう”」


慈愛に満ちた宣言。

その瞬間、目頭が熱くなり、アルフェンスの意識は台風のように持っていかれた。




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