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いつの間にか戻ってきたアイザックは、何処か様子がおかしいアルフェンスに気が付いた。


「あちらにはリッツはいませんでした。…私がいない間、何がありました?」

「あぁ、いや…どうやら動揺していたらしい」

「殿下が?一体何が?」


動揺していた、と言う割に、右手で覆われた口元は笑みを浮かべていた。


「ははっ、なんだか想定外の出来事って言うのは面白いな」

「…珍しく上機嫌ですね」

「そうだな。アイザック、喜べ。妃候補が見つかったぞ」

「なっ…?!本当ですか?」

「確か、マキア・バックナーと名乗ったな」

「バックナー?いやでもそんな家名聞いたことありませんが…」

「他国の者か。もしくは姓だけある名誉国民の出なのかもしれない。間違いなくマキアは、魔力保有量がウルトラクラスだろう。調べておいてくれ」

「入学検定では規定値を超えているかしか調査しませんからね。アルフェンス様がおっしゃるならそうなのでしょうが…わかりました。調べておきます」


声に困惑が滲み出ているが、アルフェンスの言うことには、基本的に従順なアイザックは素直に命を受けた。

二世代前に、軍役で戦果を挙げた一族に、姓と言う名の名誉を王が与えたことがある。数は多くないはずだが、その子孫なのかもしれない。


「あぁ、頼んだ。…そろそろ戻ろうか。リッツももう中にいるのかもしれない」

「そうですね。今度からあの馬鹿には首輪でもつけておきましょう」

「それは面白そうだが、簡単につけさせてくれないだろうな」

「殿下が頼めば、一発な気もしますがね」

「さぁ、それはどうだろう」


軽口を叩きながら、二人は歩き出す。

胸が高鳴る、こうした高揚した気分になるのは久しい。

この世界で、本当のアルフェンスを見える人がいるなんて。いつか出会えれば良いと思っていたが、同時に諦めていた存在。其れが学園と言う箱庭に、こんなに身近にいるなんて。

思わず瞼に触れ、そのまま頬と繋ぎ止める糸の感触を味わう。じわじわと熱を持つような感触は、魔力が増えた今でも呪いを解けないことを意味する。

アイザックからは目をこすっているだけに見える仕草。


彼女は全て見てくれるのだろうか。




この醜いアルフェンスの全てを。





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