第17節
「あのアホめ」
群衆にはテレビカメラもあった。
私たちではもうどうすることもできない。
途端、焦った様子のラービーが跳躍した。
浜辺に着地する。
「箱は!?」
その際、私たちに訊いてきた。
「ない!」
私は声を張り上げる。
網を持った警官たちがラービーを追いかける。
彼は逃げまどいながら、砂浜をかき分けて箱を探していた。
だが、数分もしないうちに、ラービーは海を背にして人間たちの包囲網にかかる寸前になってしまっていた。
箱の探索に神経を注ぎ過ぎたのだ。
「どうする、あのままでいいのか」
「彼は動物園から来た。帰るべき場所に帰れるのだからいいだろ」
「てっきり、野生に帰すべきとかいうと思ったぜ」
「何をいってる。今では動物園で飼われたいと言い出す奴らの方が多いくらいだぞ。安息に暮らせる地など、自然のないここらにはない。ラービーも動物園暮らしが嫌だって雰囲気でもなかったしな」
彼は純粋にお宝を手に入れたかったのだ。
冒険の旅に憧れたのだ。
私も普段味わえないスリルを経験できて楽しめた面もあったのだから、ラービーには何だかんだいって感謝しなければならないのかもしれない。
いよいよラービーが追いつめられ、網の餌食になるという刹那、一人の警官が転んだ。
それを皮切りに網の陣形が乱れる。
ラービーは降ってきた僥倖を見逃さなかった。
警官の間を掻い潜り、道路へと逃亡する。
「案外運はあるな」
ラービーはすでに見えなかった。




