第4節
「あなたダメよ!」
「私が君を助けないと思っているのか!? 断じてありえない! 大丈夫だ! もうすぐで君にたどり着く!」
今、生死の狭間にいる彼らには悪いのだが、私は比較的落ち着いていた。
彼らが流れてくる先に私がいたからだ。
あまりにも劇的な様子に、ギリギリまで見守っていたい気分に陥っていた。
だが結局、ギリギリを越えて最後になってしまった。
エドランさんは途中で力尽き、川の中に消えた。
それに続いて夫人も静かに沈んでいった。
彼らが目を覚ましたのは、私が溺れた二匹を救い出してずいぶん経ってからだった。
地図の回収もその間に行い、最初は半分しか確保できなかったが、少しいった下流で木に引っ掛かっているのを見つけ、全ての地図を揃えることができた。
最初に起きたエドランさんは、横の夫人を抱きかかえた。
「無事か?」
「えぇ。あなたもね。チョコレートは?」
「ある」
私が地図を入れ直した草の鞄と、二ピースになってしまったが、チョコレートを夫人の隣に置いておいたのだ。
「よかったわ」
「よくない!」
エドランさんは夫人の肩を支える手に一層力を込めた。
「死ぬところだったんだぞ!」
夫人はしおれて、下を向いた。
「……そうね。そうだった。ごめんなさい」
か細い声で夫人はいった。
それからエドランさんは私を振り返った。




