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猫のカフカ  作者: キャベツはどうした
二人の背中
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第3節

「なにこれ」

「短編だ。俺が書いた」

「いてー」

「人は誰しも痛い時期がある」



 そういえば、結城が高校生のときに失恋をして、それを元に小説を書いたという話を聞いたことがあった。

 どこにしまってあるのかわからなかったので、私もいつか見つけ出して読みたいと思っていたのだ。



「口でいってもわからないこともあるだろうし、いきなり行動を変えるのも難しいからな。たぶんお前が陥っている病を克服するきっかけにはなれると思うんだよ。だから読んどけ」

「何だよそれ」

「言っただろ。俺たちは似てるんだよ。同じような体験をしてる先輩のいうことくらい聞いとけ」

「あ、時間だ」



 陽太は時計を見ていった。

 結城は息を吐き出し、陽太の鞄の中にコピー用紙の束を詰め込んだ。

 短編ということもあり、分厚くはない。

 数分で読めてしまうだろう。私も陽太の次に読むかと決心した。



 陽太が玄関で靴を履いているとき、結城が「これも持ってけ」と一冊の本を渡した。



 ルイスサッカーの穴だった。

 児童文学で、陽太にも読めると思ったのだろう。

 読書家であるあきのとの話題をつくる契機にしろといっているのだ。

 陽太は渋い顔を作ったが、最終的にそれも鞄に押し込んで、玄関を出て行った。



 翌日、私は陽太の後をつけて、近所の小学校に来た。

 昨日の話を思い返していると、どうしてもあきのという人間に会ってみたかったのである。



 私はバレないように授業中を見計らって校内に忍び込んだ。



 そして微かな匂いと勘を頼りに陽太の教室を見つけたときには、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、ドアが開いた。

 数人の男子が飛び出してくる。

 私は慌てて、近くにあった階段を昇った。



 陽太が時々、結城の家に来て話すのを聞いていると、おのずと小学校というもののカリキュラムは把握できてくる。

 今は休み時間というものに突入したのだ。

 数多の生徒が校内を歩き回るので、私はとにかく人気のないところを探した。

 しばらく階段を進むと、立ち入り禁止の張り紙が見えた。



 屋上に繋がっているらしい。

 私は一先ず、息を吐いた。

 ここなら誰も登って来ないだろうと思った。



「猫?」



 突如降ってきたその声に私は驚いた。

 振り向くと、階段を上がってくる一人の少女がいた。


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