第2節
「ほんとにわたしが好きなの? って」
「なんて返したんだ?」
「うんって」
「それで?」
「信用できないって」
「さすが、小学生といっても中身は立派な女ということか」
「どういうこと?」
「よくわからないということだ」
「つかえねー」
「いってろ。お前もそのうちわかる」
「それが今だけど」
「お得だな」
陽太はその場に寝転んだ。
それから愚痴をこぼすようにさらに経緯を語っていた。
私が聞いた限りでは、陽太は周りの目が恥ずかしくて、あきのとかいう人間の彼女に対しては無視を決め込んだり、友達と一緒に嫌がらせをしていたりしたらしい。
当然あきのは、奴が自分のことを嫌いだと思ってそういった行動をとっているものだと解釈しているだろうから、そんな相手から突然告白されたとしても、何か裏があるのではないかと勘繰ってしまうのは当然のことだった。
「ありがちだな」
「それと僕のクラスで朝の読書の時間以外に本読んでるの、あいつしかいないんだけどさ。暗いっていうか、地味っていうか。何で僕、香住のことなんて――」
「そこに魅力があったんじゃないのか」
「……わかんない。でも本なんて読む必要もないね」
私は陽太を引っかいてやりたかった。
代わりに結城が陽太の頭を小突いた。
「それは違うな。本を読まない者は総じてバカだ」
「だってよくわからない本だもん」
「ちなみに何の本を読んでいたんだ?」
「えっと……若き、ウェ……ウェル……ウェルテ、なんとかの悩み」
「!」
私は思わずしっぽを突き立てた。
「ウェルテル……か、空乃ちゃ、空乃さん、いくつだ?」
「同い年」
お前のような若造が釣り合う相手ではないことは確かだ。
「まぁ、話を戻すけど、お前は二人きりのときだけは優しくできるんだな?」
「あんまり話せないけどね……好きな子の前だと、余計に。もうすぐ席替えもあるし、そのとき隣にならなければいいけれど」
「ま、俺と同じような病だな」
「へぇ、よかったよ。仲間がいて」
「安心するな。悲しめ。遺伝子は残酷だ」
結城はいった。
「というか、そんなことを碌に経験のない俺に相談するなといいたいところだが、それでも頼ってくれるならこれを読むといい」
結城が手渡したのは束になっているコピー用紙だった。




