第2節
他の家族は犬に興味がないようで、もともと飼うことを懇願した青年に世話を一任しているらしい。
そのとき、子犬の彼の腹が鳴った。
母親の彼女は鼻を突き出して、整理された草木の一角を示した。子犬の彼はその通りに草木の間へ顔をつっこみ、食パンらしきものを頬張っていた。
「あの子にもあまり食事をあげないんです。だから彼の隙を見て、私の分を隠しておいて、後であの子にあげているんです」
そのときだった。
「おい、食事だ。少し腐ってるかもしれないが我慢しろ」
青年が手羽先の入ったビニール袋を片手に、我々のところに近づいてきた。
私は青年と目があって睨みつけられたが、それよりも彼にはもっと気に入らないことがあったらしい。
「おい! その庭に近づくな!」
声をあらげた青年は食パンに夢中の子犬を持ち上げた。
母親の彼女が無理に起き上がってその子を離してと、青年にすがるように鳴き始めた。
「これは父さんが手入れしてるんだ。疑われるのは僕なんだから勝手に荒らすな――!? お前何食ってる!」
青年が子犬の口から落ちたパンの欠片を見つけた。
彼が母親の彼女を睨み据えた。
「お前か? 無駄に頭いいから余計なことしやがるな」
青年は母親の彼女の耳を引っ張り上げた。
彼女は抵抗する体力が残されていないのか、我が子の解放を望む鳴き声をあげるばかりだった。
私は飛び出した。