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猫のカフカ  作者: キャベツはどうした
ロマンは空に
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第3節

「聞いたかよ、ハクビシンのやつ空を飛ぶんだってさ」「知ってる知ってる。俺も招待券もらったよ。楽しみだなぁ」「はぁ? 空なんて飛べるわけないだろう。鳥じゃないんだから。あいつの失敗をどうやって笑ってやろうかって考えるのが楽しいんじゃないか」



 中々ゲスな野郎だと思いつつ私は気配を消してコオロギたちの背後に近づいた。

 彼らは私と目があった途端慌てて逃げていった。



 そして彼が空を飛ぶ日、公園にはたくさんの動物や虫が集まっていた。



 太陽はまだ半分も顔を出していない。

 そんな明け方の人気の少ない中、私は観衆の一番後ろに腰を下ろした。

 


 私は心配になった。

 歓声のあと、滑り台の上に登場したハクビシンの彼はおんぼろの道具を担いでいたのだ。



「大丈夫!僕は飛んで見せる!」



 高らかに宣言した。


 直後、彼を奮い立たせる歓声が響き、力強く腕をのばして飛ぶ合図を示すと、一気にその場が静まりかえった。



 静寂が支配する公園で、観客のドキドキと彼の緊張がピークに達したとき、羽を広げたおんぼろの翼の影が地面に落ちた。



 宙を飛んだのだ。



 皆の驚きの声が轟く。

 彼は余裕の笑みを浮かべていたが、それは数秒もしないうちに青ざめたものに変わっていった。

 


 実際彼は飛んだとはいえなかった。

 


 せいぜい勢いをつけてジャンプをしたという程度だ。

 羽があるおかげですぐに落下するのではなく、緩やかな傾斜を描くように地面に落ちていった。



 解散は早かった。



 中には彼をバカにするものや、わかっていて笑いにきただけのものなどさまざまにいたが、最後は彼と私だけを残して、早朝の公園はあっけからんとした風景に戻っていた。



 私は彼に声をかけようか迷ったが、彼が地面を強く叩いた姿を見て、静かに帰ることにした。

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