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猫のカフカ  作者: キャベツはどうした
ロマンは空に
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第2節

 すると、彼はこんなことを言いだした。



「今度飛ぶところをみんなに見せてあげるから公園にきてよ」



 私はさっそく彼から葉っぱを渡された。

 三日後、日が昇る前にお披露目と書かれている。

 招待状のつもりらしい。



「みんなというと他の連中も招待したのかい?」

「うん、もう少しで完成するんだ。そのときまでには絶対にできる」



 ハクビシンの彼は強気にいった。

 体のあちこちには怪我をしたあとがあった。

 失敗して辺りの枝やコンクリートに衝突したのだろう。



「確実に飛べるとわかってから、みんなの前で披露した方がいいんじゃないかい」

「一回飛べれば、それはそのあとも成功するっていう証明さ」



 私が再び口を開こうとしたとき、後ろから成熟している大人の声が彼を呼んだ。



「母さん!」



 彼がまずいといった表情を浮かべた。

 私が振り返ると、そこにも一匹のハクビシンがいた。

 彼の母親は我が子の体を見やって傷があるのを確かめるや否や、彼を叱ると同時に心配の言葉もかけていた。



 そして軽く私に頭を下げたあと、文句を並べる彼を無理やり引っ張りながら茂みの奥へ去っていった。



 翌朝、ぶつぶつと誰かの声が聞こえると思って周りを見渡すと、昨日出会ったハクビシンの彼がいた。



 川岸をゆっくり歩きながら小さな木の片などを拾っている。



「何してるの」



 私が問うと、彼は苛立ちながらいった。



「材料集めさ。母さんの奴、あれを捨てやがったんだ!」



 言われてみれば、彼が背負っていた翼は姿を消していた。



「それで、いつ飛ぶんだっけ」

「明後日さ。だから大急ぎで作らないと間に合わない」

「実演を延期したらどうだね。事情を話せばみんなもわかってくれるさ。第一あの翼では飛べないよ」

「いやだ! 約束したんだから! 飛ぶったら飛ぶんだよ! それが僕の夢なんだから!」



 彼は私の言葉を聞き入れるつもりはないらしい。

 私はこれ以上邪魔しないように、その場から立ち去った。

 すると、川岸を離れる最中、コオロギたちの会話が私の耳に飛び込んできた。

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