第4節
草むらの中の暗闇が陽光に照らされたことによって、不気味に通っていく黒い肌が見えた。
私はもっと早く忠告をくれてやるべきだったと後悔している。
ヘビだった。
艶やかなうろこを光らせて、草の海を音もなく突き進んでいる。
彼が今どこにいるのかはわからない。
そのとき私が驚いたのは一瞬だけで、あとは特に危機感を抱いてはいなかった。
彼は若いし、ヘビの気配などすぐに察知して逃げると思ったからだ。
だがいくら待てども、彼が飛び立つ様子がない。
運よく遭遇せずにいるのだろうか。
ヘビが草むらに入った理由が彼を狙ってのことではないとも考えられる。
瞬間、ある一か所の葉先が揺れた。
私は視線を絞ると、その箇所めがけて走りだした。
それから長い時間は要しなかった。
私を息をつく。
「ごめんよ。ついうっかりね。どんぐり探しに夢中になりすぎてた」
彼は申し訳なさそうにしながら、赤くにじんだお腹を羽でさすった。
私が駆けつけた時、彼はヘビに後ろを取られていたのだ。
私もよくあの位置から捉えられたと思う。
まだまだ若い証拠だろう。
爪を立て体躯を大きく見せたことで、ヘビはすぐさま退散していった。
だがその間際、ヘビの牙が彼のお腹をかすったのだ。
毒は持っていないだろうから数日もすれば完治するだろう。
どんぐり探しはさんざんだ。