7話
「はぁ、はぁ……、死んだな」
僕は、元の色が分からない程紅に染まったバットを片手に、自分の親兄弟の肉片を見てつぶやいた。
ぐちゃぐちゃになったそれは、とてもじゃないが直視できないものだった。皮膚はまるで、ゴム風船のようにしぼんでおり、肉や内臓はぐちゃぐちゃに混ざり合い、表面がてかてかと輝いていた。
「僕、これからどうしよう…」
親兄弟をなぐり殺していた時は、何も考えずにただ自分の気が済むまでバットを振りおろしていた。自分が今までためていたストレスを発散するために、ただひたすらに自分の親と兄弟を
―血が飛び散るようにバットを振るい
―生きてるか確認するため爪を剝ぎ
―眼球を生きたまま潰してみたり
―顔が分からなくなるまで潰し
―内臓が飛び出すぐらい叩き
―腸の長さを計ってみたり
―骨が砕けるまでなぐる
そんなことをまるで、小さな子供の様に無邪気に行っていた。
しかし、その行動を冷静になった今、振り返ってみると人としてやってはいけないことをしたと言う自覚が芽生えてきた。
―警察に自首するか
そうすれば、少しはこの罪悪感が消せるのかな?
両親や兄が今まで僕にやってきたことは許さないけど、僕が彼らにやったことを思うと、少し胸が痛む。
「……そうしよう」
僕は、血まみれた服のまま家を出って行った。
****
僕は今、家の近くにある川の横を歩いていた。
この川をたどれば、鋼板が見えてくる。
ここを通るのは久しぶりだった。
小さい頃、ここでよく水浴びをした。
学校帰りに、友人と一緒にここで水かけを行っていた。
ただひたすらに、相手に水をかける遊びだけどとても面白かった。
家に帰れば、兄と両親がいる。そのため、僕はどこかで時間をつぶしてから家に帰ることを決めていた。
夏になると、この川には魚があっちこっちに泳ぎに来るため、釣りをする人で賑わっていた。
今は、冬。魚なんて泳いでいないと思うけど、もしかしたらいるかもしれない。
子どもの頃の懐かしい記憶を確認するかのように、僕は川の中を覗き込んだ。
「因果応報って知っているか、春斗」
ざらつく様な、声が後ろから聴こえてきた。振り向くと兄が立っていた。
「っ、な、なんで…生きている」
「あのぐらいじゃ、死なないよ。ばぁーーーかぁーー!!!」
そう言って、兄は僕の方に向かってよたよたと歩いてきた。
僕は、兄が近づいてくるのを眺めていた。あんなに、殴ったのにまだ生きているなんて…。
「死ね、春斗」
そう言いながら、僕の腹に包丁を刺し、全体重を僕に乗っけてきた。
ぐらりと後ろに傾く。
ザァァ、ザァァと規則正しく流れている川の方へと僕らは倒れていった。
****
「12月24日未明、埼玉市で殺人事件が起こりました。犯人は逃走のち川に転落し、死亡しました。犯人の腹には、直径24㎝の包丁が刺さっており、何者かが刺したとみられます。次のニュースです……」