2話
遅くなりました。
待っていて下さった方々、誠にすみませんでした。
兄が、地元から約400キロ離れた高校に通うことになってから、約5年後。
僕は、高校三年生になった。今は、地元の国立大学に入学できるように受験勉強している。その国立大学は、家から片道3時間くらいかかってしまうため、もし入学が決定したら、大学近くのアパートか寮に入ろうかと考えている。そのための資金は、高校1年生の時からせっせとバイトをしてためていた。
兄が地元を離れてから、兄は一度も家には帰ってこなかった。その間は、僕にとってとても暮らしやすい日々が続いた。
このまま、ずっと帰ってこないと思っていた。
あの時までは―――。
****
12月24日
今日は、クリスマス・イブで町はイルミネーションで彩られていた。恋人たちは愛を語らい、子供のいる家族は家で大きなケーキを食べたりして、過ごしている。
受験生である僕は、今日がクリスマス・イブだから浮かれるわけもいかず、机にかじりつくように勉強していた。
ピンポーン
家のチャイムが鳴る。誰か来たのだろう。家には、今僕と両親がいる、きっと宅配か何かだろう。僕は気にも留めず、ただひたすらに目の前にある問題を解いていた。センターまで残り、一か月は切った。今更焦っても仕方がないが、覚えられることは覚えておこう。そう思って、無心に問題を解いていく。
がっちゃ
自室のドアが開く音が聞こえた。反射的に顔を上げる、そこに立っていたのは――――。
「ただいま、春斗。覚えているか?秋良兄ちゃんだぞ。」
僕にとって耳障りな声を発する男が視界に入る。そいつは、にやにや笑いながら僕の部屋に入ってきた。
部屋に入ってきたのは、5年ぶりに再会する、僕の兄だった。