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「部活はいらへんの?」
後数週間で夏休みというところ、うきうきとした気分で生活していたところ瑠奈ちゃんが話しかけてきた。瑠奈ちゃんというのはおっとり系京都美人さんのことである。こないだあった時にそう言えば自己紹介がまだやったねえ、かんにんな~とマイペースな口調で話しかけられ無事自己紹介をすませ名前を知ることができた。宮埜瑠奈という名前を刻みつけておいた。でなければただでさえ人が多いこの学院、すぐに忘れてしまいそうである。
部活に入らないのか、その問いに私は「うーん」と曖昧な返事をこぼした。
部活かあ、考えたことがなかった。
バスケは好きだし、元々前世でバスケをしていた気もするからやるならやっぱりバスケだろうか。
「前外でバスケやっておらんかった?」
「見てたんだ」
「赤羽様のボールいい音してたなあ」
そこも見られてたのか!!何だそれ恥ずかしいな!!
「そこも見てたんだね」
「見てなくてもほとんどの生徒が知ってるさかいに」
えっ。
「何で?」
瑠奈ちゃんは「そら赤羽様やきね」と笑っていたが私からしたら笑いごとではなかった。できる限り面倒事は避けたい私としては赤羽会長とのそんな事故が知れ渡ってるなんて恐ろしくてしょうがない。言いがかりをつけられそうだ。「アナタ赤羽様に近づきたいからってわざとボールにあたりにいったんでしょう!?優しい赤羽様はそれでもあなたを保健室に運んでくださったのよ!!」みたいなミーハーなファンが現れたらどうしよう……。ん……?運んでくださった?ん……?そういえば私はどうやってあそこから保健室に移動したんだ…?
悪い予感がする。
私はその予感があたらないでほしいと願いつつも瑠奈ちゃんに「わ、私ってどうやって保健室まで行ったの?」と聞いた。
いやきっと保健室の先生が運んでくれたに違いない、それかアヤノちゃんが引きずって連れてってくれたに違いない。いやむしろそうであってほしい!!
「そりゃ、赤羽様に決まってるやろ」
心底驚いたような表情でそう言った瑠奈ちゃん。嘘だろ……嘘だと言ってくれよ……。
「まさか知らんかったとか?」
ええ、そうです。何も知りませんでした。それよりも赤羽会長のボールがあたってハプニングが起きてこじつけの嫉妬とかあびたらどうしようちょうこわいとか悠長なことを考えておりました。いやはやびっくり。心臓がもたない。
運ぶって何?運ぶにもいろいろ種類があるだろう?あれだろうあれ、担架で運んでくれたんじゃないか?もしくは引きずって運んでくれたんじゃないか?そうだったら嫉妬どころか哀れみの目で見られるだろうがな!!
恐る恐るもう一度瑠奈ちゃんに「そ、それはどうやって運んだのかな……?」と聞いてみればそれも知らんのかあという表情をされた。知りません。
「お姫様抱っこっていうんかなあ?最初はおぶろうとしてたんだけど倒れてる状態から流石におぶるのは大変だし後おぶるまでがゆれたりカナタちゃんにもよくないって思ったらしくてお姫様抱っこに変えてたんよ~」
私はその言葉を聞いてこれからの学校生活に対する不安が高まった。
眩暈がする勢いだ。
ああ、赤羽会長なんてことをしてくれやがったんだ……!!
私は赤羽会長に対する怒りを抱えつつ瑠奈ちゃんの元を後にした。
その後どうしても府に落ちなかったしそれぐらいしてくれたのならばということで赤羽会長の元を訪ね「その節はどうもありがとうございました教えてくれれば良かったのに」ということを遠回しに伝えてみたら赤羽会長は自分が怪我をさせたのだから運ぶのは当たり前だと言っていた。なんだこいつ王子様か。
ただ真正面からお礼を言われるのが気恥ずかしかったらしく少しそっぽをむいて耳だけ赤く染めていたのは大変可愛らしいと思った。前世の甥っ子を思い出しつつも流石にこれ以上関わったら私の命が持たない気がするぜということで部屋に戻った。