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五時になると寮長さんと夏目先生が談話室にきた。そして全員がいるのを確認してから夏目先生が「聞いてくださーい!!皆静かにー!」と声をはりあげた。

夏目先生は声をはりあげるのが得意じゃないらしく、なんともひょろひょろとした頼りない感じになっていた。

なんだか守ってあげたくなるような感じだ。男の人だけど。


先生が言うにはこれから食堂に言ってごはんを食べますということだった。本来なら5時~7時までの間であれば好きな時に食堂に言って食べるのだが今回は入学初日なのでということだった。

中等科からは寮の部屋にキッチンらしきものがつくので材料さえ買えば自分で作るのも可能だ。自由度ありすぎて怖い。

ということできちんと出席番号順で並びながら食堂へと向かった。

そう出席番号順で並びながら。


つまり、赤羽会長と隣の状態で。


とても些細なことだし赤羽会長は気にしていないのだろうけど私としてはすごく嫌だし緊張するし気まずいのだ。

しかも一番前なのだ。アヤノちゃんが近くにいたのであればアヤノちゃんに話しかけ談話しながら歩いただろうけれど生憎後ろの子は隣の男の子と話すので夢中である。うう、まるで私はぼっちではないか!!


「芦屋さんっていっつもごはん何時頃に食べる?」


その時、赤羽会長が私に話をふってきた。フレンドリーである。


「そうだなあ、基本的に7時あたりだったんだけど学食って7時までらしいからこれからはもっと早めの時間に食べないとなあ。

 赤羽くんは何時頃に食べてたの?」


「俺は5時半頃に食べるんだけどやっぱり皆7時とかそれぐらいなのかな?」


そうだったら皆の時間と同じぐらいに行かないと一人でご飯食べることになるだろうからそれはきついなー、と赤羽会長は言った。

なんだ、普通に小学生じゃないか。

そりゃ一人でご飯を食べるのは嫌だし友達がいないと不安だろう。

同室の子と食べるのもよいが同室の子は子でもっと仲の良い友達もいるかもだし赤羽会長はさっき仲良さげだった青角くんあたりでも誘って食べたいんじゃないか?

けど時間が合わないということだろうか。


「誘ったらきっと皆も時間合わせてくれるんじゃないかな」


「それもそっか、それに俺が合わせればいいよね」


「確かにねー」


「いざとなった時は芦屋さん誘うからよろしく」


ふざけたようにケラケラと笑っている。


「じゃあその時は断るね」


「ひどくない?」


冗談交じりの会話を交わして思うのは、赤羽会長普通にいい人じゃね?だ。

聞いた情報によるとだ。

ゲームの赤羽八尋は外面がよく内面は悪い。

誰にでも愛想よく接し会長として生徒からの支持も集め、教師からの信頼も厚い。

内面が悪くなったのはいつ頃だったかは忘れたけれど最初は普通に良い子だったらしい。

が、ある事件が起こりそれが決定的なものとなり赤羽会長は変わってしまう。外面はいつまでたっても変わらなかったが中身が人を見下すようになり鬼としての面が育っていったとか。

まあ私はある事件とは何か知らないけれどもね。

いやだってゲーム末プレイ者だし過去を知りたいと思うほど赤羽会長に興味がないし好きでもない。これから好きになる可能性もあるけれどそれは低いし、第一そこまで関わるだろうか。


しかしこの様子だとまだ赤羽会長は優しい時期なのかね。

じゃあこれからある事件が起きるってことだろうか、それとも既に内心人を見下してどいつを食い殺そうか模索していたりとかそういうのだったりしてしまうのだろうか。

それだったら末恐ろしいな、赤羽会長。


そうこうしている内に食堂に着いた。

食堂は学校案内の際に寮まで来たとき見学したがやはり広い。寮自体が初等科、中等科、高等科で分かれているためこの食堂には初等科の生徒しかこない。

案内の時に軽い説明はしてもらったが詳しい説明や食堂のシステムを夏目先生が説明する。

私は説明を右から左に流していた。いや後でアヤノちゃんに聞けばいい話だし。アヤノちゃんならきっと呆れながら教えてくれるだろう。

説明が終わりそれぞれがショーケースを見ている。此処では壁にメニューが貼ってあり、そのほかにも机にそれぞれメニューが置いてある。

しかしほとんどがショーケース内のサンプルを見ている。まあすぐそこにスタッフというか受付の人らしき人がいるので注文が楽なのだろう。


それはいいとして、どのランチもおいしそうだな。

少しばかり上機嫌になりながらショーケースをじっくりとみる。


おお、定番のハンバーグなんかおいしそうじゃないか。

そう思い値段を見る。


……おい、なんだこの価格は。


思わず二度見してしまうほどの価格だった。いや多分使われている素材だとかを考えたら十分安い方に分類されるのだろうけどそれでも高い。


「カナタさん、動きが止まってましてよ」


これお願いしますわ、と値段を見ずにショーケースの中に入っているおいしそうなハンバーグのサンプルを指さすアヤノちゃんをみて「同じのお願いします」と言った後に、私は中等科からは自分でつくることを決意した。


いくら裕福な方に生まれたといっても無駄遣いは元来の貧乏性からかあまりしたくはないのだ。


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