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ドギツイ美少女、こと卯月ちゃんは荷物を整理しながらぺらぺらと話し始めた。

「私の家はすごいのよ、お父様とお母様はすばらしいひとなの!!」饒舌に語っている。

そして、その時思い出したのだけれども卯月と言えば日本で三本指に入る財閥ではなかっただろうか。しかし卯月財閥には既に跡取りのご子息がいると聞いたから、卯月ちゃんはその妹とかそこらへんだろうか。考えながら適当に相づちをうち荷物を整理していれば「聞いているの!?」と怒られた。はいはい。


一通りの整理が終わって時間を見ればまだ一時間程あまっていた。どうするかなと思ったのだが、寮長さんは「5時あたりまで」といっていたのではやいにこしたことはないだろう。そそくさと部屋をでようとしたら卯月ちゃんがまだ部屋の椅子に座っていたので疑問に思い「一緒に行くんじゃないの?」と聞いたらパアッと花が綻ぶような笑顔を見せた。


「知ってるわよ!!」


棘のある言い方だがその顔は嬉しそうだ。

あれか、卯月ちゃんは友達がいなかったのかもしれない。

このドギツイ性格、しかしそれが許されるほどの端麗な容姿に良いとこの娘さんだ、それに跡取りはきちんといるから無理な政略結婚をさせられることもない。嫉妬と畏怖の良い対象ではないか。

友達ができないのも肯ける。


「じゃあいこっか」


そう言って部屋を出て談話室に向かう。談話室までの間の廊下でも卯月ちゃんはずっと口を動かしていた。不意に卯月ちゃんの話す声が止んだ。


「卯月さん?」


心の中では卯月ちゃん呼びだが実際はさん付けである。


「あ、あなたその呼び方どうにかならないの!!名前で呼びなさいよ!!!」


開いた口が塞がらないとは、このことだろうか。私はポカーンと言う表現が正しいような表情をしていたんだはなかろうか。

驚きのあまり目を見開くも、卯月ちゃんの表情とは裏腹に言ってる言葉が可愛らしくて思わず吹き出せば「し、失礼よ!!」と怒鳴られてしまった。しかし顔が赤いので説得力が何もない。

笑いながら「よろしくね、アヤノちゃん」と言えばアヤノちゃんは満足そうに「ええ、よろしくね。カナタさん」と言って笑った。

ずっと吊り上げっぱなしだった眉は下がっていて、可愛らしかった。

しかし、すぐに私が名前で呼んであげるんだから感謝しなさいと言わんばかりの表情に変わった。

そんな会話をしている間にすぐに談話室についた。一時間も前だからだろうか、談話室には人が全然いなかった。


「人全然いないねー」


「一時間も前だもの」


当たり前でしょう、と言葉が続けられる。それもそうか。

暇をつぶすように二人で会話を続けていたら男子寮の入り口から、誰かがでてきた。私たち以外にもこんな早くに戻ってくる物好きがいたのかと感心した。

その誰かをみた瞬間思わず私は内心「げっ」と悪態をついた。

最悪だ。最悪以外でどう言葉に表せというのだ。

そこにいたのは赤羽会長と青角くんであった。

私は一瞬、ついつい表情を歪ませて嫌悪感を露わにしてしまったわけだが二人は看ていなかったようなので良かった。

いくら談話室といえど話す義務はない、ということで私はスルーを決め込んでアヤノちゃんと話そうそうしよう。

と、思ったのだがどうやらそう考えていたのは私だけらしかった。


「あ、芦屋さん」


愛想のよい笑顔で青角くんが近づいてくる。


「青角くん、早いね」


「芦屋さんこそ早いじゃないか」


表面上はとてもにこやかな会話である。だが私は内心にこやかどころではない。

しかも青角くんの隣には赤羽会長がいるのだから余計にだ。

寮案内をする際にクラス別ではなく学年行動に移ったのだからもう少し注意しとけばよかった。

青角くんだけならまだしも赤羽会長もいるとなったら私のライフは削られるどころではない。

そんな私たちの一見にこやかな会話をアヤノちゃんは警戒心むき出しの猫の様な表情で見つめていた。私がとられて悔しいとか?それだったらアヤノちゃんまじかわいい。


「ラピス、友達かい?」


不意に、赤羽会長が口を開いた。

ラピスというのはきっと青角くんであろう。青角くんの名前は生粋のキラキラネームなのである。そしてその友達かい?というのは間違いなく私のことだろう。


「そうだよ」


あろうことか、青角くんは、肯定した。

いや小学生だし隣の席で話したことがあるっていう時点で友達認定されるかもしれないけどその友達認定がこれから私にどういう影響を及ぼすかっていうのを考えた上で返事をしてほしいね。いや小学生にこんなこと求めるのは間違ってるんだろうけど。そこで「いや別に友達でもなんでもないよ」とかいわれても悲しいっちゃ悲しいけども!!

なんともいえない気持ちに私が襲われていたところ青角くんがまた口を開いた。やめろ青角くんよ、これ以上何も言ってくれるな。


「芦屋さんって言うんだ」


青角くんはご丁寧に私の紹介をしてくれた。いらんお世話である。


「へえ、芦屋さん。ああ、そういえば入学式の時隣じゃなかった?」


にこにこと私に話をふる赤羽会長。ああ、そうだとも。隣だったとも。


「出席番号が一番同士隣だったね、えっと赤羽くんだよね」


「そうだよ、覚えられてるとは思ってなかったな」


覚えているどころか会う前から知ってたさとは言えず。


「そりゃ覚えてるよ」


「そういうものかなあ」


とてもじゃないが小学生には思えない会話を交わしてからアヤノちゃんの方を向いて違和感がないように青角くんと赤羽会長との会話を中断する。


「知り合いですの?」


今まで話していなかったアヤノちゃんに話しかけられる。


「そんな感じだよ」


「……お友達?」


「んー、そんな感じ」


先ほど友達認定されたのにここで私が友達じゃないよと言ったらどうなってしまうのか、考えただけでも恐ろしい。

少し黙り込んでからアヤノちゃんが再び口を開いた。


「私って貴方の何番目のお友達なの?」


不意打ちの質問に思わず呆気にとられる。


「一番だよ、アヤノちゃん」


そう言うとアヤノちゃんは嬉しそうに「知ってますわよ」と笑った。

アヤノちゃん可愛い。


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