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階段から落ちて赤羽会長の下敷きになるという一騒動が終了してからしばらくたった頃にきた私の誕生日だが、私は生憎寝込んでいた。
怪我はとっくの前に完治した。
しかし風邪で高熱がでて自室のベッドにずっともぐりこんでいた。その間ずっと体はだるかったし授業は受けれないしで最悪だった。アヤノちゃんは心底心配したような様子だった。
後日アヤノちゃんから「全然お祝いができなかったのでせめてプレゼントは!」ということでかなり気合の入ったプレゼントをいただいた。それがお揃いのものだったので、多分アヤノちゃんは相当お揃いが好きらしい。
まあいいとして、私は晴れて小学六年生になったわけだ。
六年生になってから少したったある日、私は名前も憶えていない先生に手招きをされた。私を呼んでいたみたいだったのでついていったら「中等科では風紀に入らないか」というお誘いだった。
私はハッキリとNOと断った。断るのって大事。
しかし先生は「まだ時間はあるので考えておいてくれ」といって爽快に去って行った。
いやいやいや、先生話聞いてた?私断ったからね?NOってハッキリ言ったからね?え?聞こえてたよね?
その場で内心先生に突っ込んだ。
風紀は成績上位の女子生徒の中から選ばれる。
なので特待生は目がつけられやすいが、初等科の頃は特待生がいないので必然的に風紀に入る女子生徒は限られることになる。
そして学年一位の私はまんまと目をつけられたと。
嫌だ嫌だ、絶対ごめんだね。
だって風紀に入るってことは、つまり生徒会のどす黒い部分を直接公認で見なければいけないということだ。何それストレスで死んでしまう。やつれきってボロ雑巾のようになって終わりだ。それは避けたい。
だから必死になって断ったというのに先生は話すら聞きやしない。これだから大人は!と憤慨したくなるぐらいの気分だ。
中等科になるまでに考えておいてとは言われたものの入る気はないし考えるもクソもない。
私はとりあえず、どうしようもない風紀の勧誘についての話は頭の片隅に追いやり楽しくアヤノちゃんと談笑することにした。
その時不意に赤羽会長が通り過ぎていったのだが、なんだか目に見えて目つきが悪くなっていた。なんだかギラギラしていた。それと少し、疲れていたかな。
そんな赤羽会長をちらりと見た後、私は視線をアヤノちゃんに戻した。まだ主人公はこないし、特にイベントが起こるわけでもあるまいし。
しかし、と私は考える。
赤羽会長はある日を境に豹変してゲスに目覚めるだとかなんだとか、前にも言った気がするが確かそうではなかっただろうか。
私は詳しいある日の詳細を知らないし赤羽会長の過去、つまり私にとっての今に何があったのかは知らないけれど赤羽会長がやけにぴりぴりしているこれってもしかしたらある日の前兆だったりして。
ま、ないか。
私はくだらない考えは置いておき、アヤノちゃんとの会話に集中することにした。




