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お母さんの容体はどんどん悪化したらしくとうとう入院することになったらしい。
今までも何度か入院したことがあったけれど今回は特にひどく、心配でしょうがなかった。なので授業のない休日にお見舞いにいった。
案外元気そうで少しホッとしたがお母さんのことだから、きっとやせ我慢だ。明るくて気丈、けれど儚く脆い、それがお母さんだ。と、お父さんが言っていた。ベタぼれだ。ただ娘にそれを伝えるというのはどうかと思うぞ父よ。恥ずかしい。
それと青角くんと久しぶりに談笑した。
クラスが変わってからというもの話す機会はめっきり減った。
なので関わる機会がなかったのだが学年別の合同授業の時のグループ分けで同じグループになり「久しぶりな気がするね」「そうだね」と生産性のない不必要な会話をしたわけだ。まあコミュニケーションは大事だしということで適当に会話をつなげたけれどね。それにグループのメンバーが知らない子ばかりで青角くんしか話す人がいなかったというのもある。これは他のクラスとも仲良くなろうぜ!といったような概要の企画なので他クラスの子と同じグループになる確率が高いのだ。
私のグループは青角くんに知らない男子4名に私含め女子四名。合コンか、と内心突っ込んでしまった私は悪くない。
ちなみに久しぶりに赤羽会長も見かけた。ちらっと見た感じ無表情で目が冷めていたが、他の生徒に話しかけられた瞬間王子様スマイルをだしていた。あれはやっぱり猫かぶりかなあ。
まあ見かけただけで話してはいないけれどね。
アヤノちゃんともグループ分けは別々だ。おかしい、クラスが別なのだからこの合コンまがいな企画のグループぐらい一緒にしてよ~!
そんなこんなで、謎の交遊企画は進んでいった。
私は基本的には青角くんと話していた。青角くんはいつもの笑顔でひたすらニコニコしていた。
この笑顔も実は裏があるのかな、それともまだないのかな。
さっぱりわからない。
私を除く女子三名のきゃぴきゃぴ女の子トークは正直言って怖かった。
もう隠すつもりすらないらしい赤羽会長トークはとくに怖かった。しかし青角くんの前での猫を被るのも忘れずに自身らの愛らしさを前面におしだしておりとにかく自己主張が激しかった。いや可愛いけれどもね。
グループ分けも好ましくなかったことで早速この授業さぼりたいモードに入った私だったが、その時聞き捨てならない単語が聞こえた。
「一学年したの黒爪くんかわいいと思わない?」
「ええ黒爪くんはどちらかというとかっこいいわよ」
「私黒爪くんより、緑目くん派!!」
「緑目くんもかっこいいよねー!!眼鏡男子ー!!」
「黒爪……?に緑目……?」
黒爪くんに、緑目くん。
赤羽会長や、黄牙くんに青角くん、桃鱗くん。考えてみれば3年以外にも攻略対象キャラはいるはずだ。高等科の二年生の時に主人公は編入してくるはずで、その同学年に攻略対象キャラがいないはずがない。
そして苗字に、色と体の一部。実際に過ごしていて気づいた攻略対象キャラの名前の特徴だった。
正に黒爪くんと緑目くんはそれにあてはまる。
そして主人公の学年に二人しか攻略対象キャラがいないというのもおかしいし、それなら後輩キャラもいてもおかしくない。外部生からもくる可能性だってたくさんある。
予めリサーチしておくべきだったのかもしれない、少しの後悔が私を襲った。
黒爪くんや緑目くんがどんな人かは知らない。けれど彼等は攻略対象キャラ、と見て間違いないんだろうな。
「もしかして知らない?すっごくかわいくてかっこいいんだよ」
「うん、よければ詳しく教えてくれないかなあ」
さり気なくそう聞くと快くオーケーしてくれた。
「緑目くんは生粋の真面目っていう雰囲気が漂ってるよ」
「メガネで緑髪緑目、後あまり話さないかなあ。そこまで身長は大きくなかったよ」
低身長にコンプレックス抱いてる系男子かなあ。でも今のうちって皆身長低いと思うんだけど。
「黒爪くんはマイペースで、ほわほわしてるの。黒い髪の毛が綺麗だし肌もぷるぷる!さほど髪は長くないのだけれど一本に結っているわ」
「ええ?黒爪くんはマイペースじゃなくてツンツンじゃない?」
「あれをマイペースと言わないでなんていうのよ」
意見が綺麗にわかれた。
黒爪くんはマイペースなのか、ツンツンなのか。正直言って私は話したことがないのでわからない。そのため少しおろおろとしていると話せばわかるといわれた。素直にそうしたいと思う。けど無駄なリスクを背負うのはごめんなんだよな~。かといって情報がほしいなら自分から動くべきだよねえ。
そうこうして私が情報収集に勤しんでいる間に、授業は終了した。
案外有意義な時間だったかもしれない。




