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ついにこの日がきた。私は高鳴る胸を抑えながら深呼吸をした。
今日は、なんと、アヤノちゃん宅でのパーティーの日なのだ!私はお呼ばれされているため勿論行く。ドレスコードのアヤノちゃんを見るのは二度目になるから楽しみだ。今回はどんな服装なのかな?ドキドキとしながらも自分の服装に違和感がないか入念にチェックをする。
今回は学院主催のパーティーとは違い卯月家が主催する本格的なパーティーなので、恥や失礼のないように慎重に行動しなければいけない。そのためにはまずは服装だ。みっともない格好でいけるわけがない。
そんな今日の私の服装だが、夏というわけでもないのでできるだけ暖かく落ち着いたファッションを目指した。色彩は鮮やかではないできるだけ彩度の低い目に優しい柔らかい色を選んだ。白のブラウスの上にコルセットもどき。そして茶色にレースの使われたワンピース型のドレス。
白のブラウスは袖の部分が緩くふわっとしていてかわいらしい。
ワンピース型のドレスは万能なので大好きだ。胸元にはルビーのブローチ。
スカート丈はほんのちょっぴり膝より高い。足元はヒールの高いパンプス。履きなれていないと躓いて大変だろうが、そこは元OLのプライド。また、髪の毛はドレスと同じ色の大きめのリボンで一本にくくっている。編み込んだりもした。
そして寒いので上着を羽織って車に乗る。あー楽しみだ!
しばらくしてアヤノちゃんの家につく。なんだこの豪邸はと思ったが、落ち着け私。あのアヤノちゃんだぞ。これぐらいで驚いていたら身がもたない。屋敷に足を踏み入れ招待状を見せる。すると入口から誰かがでてきているように見えた。誰だろうと考えていたらそれはアヤノちゃんだった。アヤノちゃんは私の方に小走りで走ってきた。おーいお嬢様ー走ったらだめだぞー。
「カナタさん、いらっしゃい」
アヤノちゃんが微笑む。勧められるがままに豪邸に入った。
入った瞬間私はカルチャーショックを受けた。
華やかなそれは学院のパーティーとはくらべものにならなかった。それでいて主張しすぎない落ち着いた飾りはわたし好みでもあった。アヤノちゃん家すげえ……。
今日のアヤノちゃんは可愛らしかった。いやいつでもかわいいけどね。
安定してカチカチに巻いてある品のある金髪をサイドでまとめている。ツインテールとおろしているところしかみたことがないので新鮮だ。そして一年生の頃は真っ赤なドレスが印象的だったが、今日は深紅に黒のレースがあしらわれているドレス。なんだか色っぽいぞ……恐ろしい小学三年生だな。
じっくりとアヤノちゃんを見ていろいろと補充されたところでアヤノちゃんのお父さんらしき人物に話しかけられた。渋い!!かっこいい!顎鬚がなんともいえない!!内心興奮しながらも「アヤノさんとはいつも仲良くさせていただいています」なんてことを言った。アヤノちゃんは始終そわそわしていて照れていた。お父さんは娘が呼んだ初めての友達なんだと喜んでいた。やっぱりアヤノちゃん今まで友達の一人もいなかったのね。そしてアヤノちゃんは恥ずかしいと言ったように適当な理由をつけて私の手を引いて自分のお父さんから離れさせた。アヤノちゃんのお父さんは私に対して「アヤノをこれからもよろしく頼むよ」なんていろいろなことを言ってくれたわけだがアヤノちゃんは必死になって忘れろという。忘れないがな。
そんな風にアヤノちゃんと談話していると、ざわっと会場がどよめいた。私はこの感覚を知っている。デジャヴだ。悪い予感しかしない中会場の入り口を見る。アヤノちゃんは冷めた目でそちらをみていた。「わたくしも嫌でしたのよ……」諦めたような声だった。アヤノちゃん好きじゃないものね。ああ、なんてことだ。
まさか、赤羽会長がくるなんて。
妙な既視感を感じながらも心の中で納得している自分もみた。そりゃそうだ、卯月家だぞ?トップスリーに入る財閥だぞ?そんな有名な財閥がナンバーワンの財閥、赤羽家と交遊関係にあるのはわかっていたじゃないか。なのになんでこんな無謀な冒険をしてしまったんだ私は。来てから後悔した。
これから私の長いパーティーがはじまる。ああ、赤羽会長のせいで一気に憂鬱だ。




