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海だ!!水着だ!!夏休みだああああああ!!!
とまあ夏休みに入ったあまりの喜びに私のテンションはおかしな方向へと曲がっていっているわけだが。
久しぶりに会ったお父さんとお母さんは前会った時とあまり変わっていないように思えた。ただお母さんは虚弱体質なのにも関わらず活発に動き回ろうとするのでいつも咳き込んでいる。その度にお父さんがおろおろしながら背中をさすっている。夫婦仲が悪いということはないのでそこは安心だったり。その度お母さんがおろおろするお父さんを励ましているのでなんだかおもしろい。
「カナタちゃん学校はどう?」
まだ若干咳き込みながらお母さんに聞かれたのでこういうことがあったなどと入学式からの出来事を振り返って話す。アヤノちゃんの話をすればお母さんは嬉しそうに笑っていた。卯月という有名な家系の子と私が仲が良いから嬉しいのか、それとも純粋に私に友達ができたのがうれしいのかわからない。多分両者なんだろうなあと思う。アヤノちゃんの話をしただけでここまで喜ぶ両親である、赤羽会長の話をしたら大変だぜということで黙っておこうと思ったのにうっかり口をすべらせてしまった私だ。
「赤羽ってあの赤羽財閥の!?」
興奮気味にお母さんが言う。
興奮しすぎたせいか咽ていた。お母さん虚弱なんだから少し落ち着こうよ。ほら、お父さんがまた心配しておろおろしてるよ。そろそろ落ち着かなきゃお父さんの髪が私心配だよ。ストレスでなくなってしまうんじゃないかな。
お母さんは水を一杯ごくりとのみ、落ち着いた後に「玉の輿よカナタちゃん」といってニヤリと笑った。
お父さんとお母さんは完全なる恋愛結婚で、お母さんは一般の出なのだ。なのでそういうところには目聡く、お父さんも苦笑いしている。
しかしそう言ってもね、赤羽会長も私も嫌だからね。それに赤羽会長にはいつかいい出会いがあるだろう。例えば高等科から編入してくるゲームの主人公とか。
しばらくしてもお母さんが赤羽会長のことをずっと話し続けているので私は話題を変えるべく「今度ある学院主催のパーティーどうしよう」と言った。お母さんはパーティーの類が大好きなのだ!
「パーティー!?可愛くドレスアップしなきゃね」
もしかしたらいらんこと言ったかもしれない。
一応それなりにパーティーの出席経験はあるし、まずお父さんがパーティーを主催することがあったので私もそれに娘として顔ぐらいは出さなきゃいけなかったという事情もあったのでパーティーには慣れているしドレスコードもまあ慣れている。
が、私はあのきらびやかでフリフリとした衣装が大の苦手である。
だって前世であんなの着たことなかったし!!基本休日はジャージ。仕事の時はがっちりスーツ。出かけるときの私服は適当なものを選んでた。
ドレスアップされたくないなー。
でもお母さんこういうことには妙に力入れてるからどうしようもないんだよなー。
お父さんに視線で助けを求めたら「お父さんも可愛いカナタが見たい!!」と言い始めたので爆発しないかなと切実に思った。ごめんよお父さん。
そしてお母さんは存外ロマンチストなので素敵な殿方に見初められるといいわねなんてことをぶつぶつつぶやいている。怖い。そしてきっとお母さんの言う素敵な殿方は赤羽会長だ。怖い。
私は夏休み初っ端から少しだけブルーな気分になりながらも家族と楽しく談笑した。
やっぱり家は落ち着くなあ。




