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教室内は面白いほどに賑わっていた。皆、夏休みの予定について話している。

夏休みは寮生活から抜けて、それぞれが家にもどる。そして家族旅行や友達同士でおでかけ、なんて楽しみが待っている。私も久々に家族に会えるので楽しみだ。たまにくる手紙でのやりとりでしか交流がない。


私の家はあそこにいくわ、だとかの会話が繰り広げられている。私の家もどこかに行くのかねえ。他人事のように考えつつ話を聞いていたら女の子の一人が不意に「赤羽様……」と口をこぼしていた。赤羽様ねえ……皆ミーハーだこと。



「赤羽さまはどこにいくのかしら?」

「海外って聞きましたわよ?」

「うそお!私は北海道だと聞きましたわ!!」


デマなのか本当なのかわからない情報が飛び交っている。赤羽会長がどこに行こうが別に気にすることでもないだろうよ……。ああ、ファンや好きな子たちからしたら死活問題なのかな。知ったところで同じところにいけるとは限らないしそんなわけないだろうと一瞬考えたが、ここは金持ちの集まりだった……行けるんだった……。常識は一切通用しないんだった……。



「芦屋さんはどこか行きますの?」


聞き役に徹底していたら突然話をふられた。

私がどこかへ行く前提かいな!と内心つっこみつつも私は口を開いた。


「学院主催のパーティーには来ようと思ってますよ」


アヤノちゃん以外のですわ口調の女の子にはついつい敬語になってしまう。偏見なのだが、なんだかとっつきにくいのだ。

そして私が「学院主催のパーティー」という単語をだした瞬間、女の子たちがざわめきたった。



「忘れていましたわ……!なんたる不覚……!!」



その言葉をはじめに、一斉に女の子たちが騒ぎ始めた。ああ私は余計なスイッチをおしてしまったのかもしれない。



「赤羽様がくるかもしれないのに!」

「赤羽様のドレスコード!!」

「ハッ……青角様も来るのでは?」

「「「キャアアアアアアアア」」」



お、おう。

黄色い悲鳴が響く。

彼女たちのテンションに私はついていけないよ。ちらりと教室で女の子に話しかけられ相手をしていた青角くんの方を見ればどうやら会話を聞いていたらしく(こんな大声で話していればそりゃ聞こえるが)苦笑いしていた。そこで予鈴がなったが、その後の休み時間に青角くんは質問攻めにあっていた。モテるって大変ですね。



その後みかけた赤羽会長は心なしかやつれていたのできっと彼も質問攻めをくらったのだろう。しかし思うが、赤羽会長が青角くん意外と話しているのを見たことがないぞ。悶々と考えているとあっと言う間に放課後となった。時がたつのって早い。



「別に嫌いじゃないけどさあ」


男子生徒の声が聞こえた。思わず私は気になって、何も気にしてません聞こえてませんよ~アピールをしながらアヤノちゃんと言葉を交わしつつ、聞き耳を立つ。



「赤羽が入ったチームはぜってえ勝っちゃうからさあ」


「アイツと遊んでも」





「つまんねーよ」



男子生徒の言葉。確かに一理あるのかもしれない。

ああ、なんでもできるというのも、いいことばかりではないんだろうな。

私は赤羽会長のことをよく知らないし、これから知ろうとも思えないけれど少しだけ可哀想に思えた。なんでもできるなんて努力しなければできない所業だろう。生まれ持っての才能差はあれど、それを生かすか殺すかは当人次第なのだ。


まあ私は赤羽会長と遊んだことがないしどうでもいいんだけれどね。


ただ心配だというならば、彼らの死角になっている壁に赤羽会長がよりかかっていたってことかな。絶対聞いてただろ。


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