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金持ちのボンボンや、箱入り娘の可愛がられ甘やかされ育ったお嬢様方。そして極稀に庶民の特待生が入学すると言われ、地元に住んでいるのであれば勿論、他県に住んでいても噂を耳にするほどの超お金持ち学校。
それが鬼城生学院だ。
エスカレーター式で、初等科、中等科、高等科と別れている。初等科から入っていれば馴染みやすいのだが外部性として中等科や高等科から入った場合、夢の楽しい学園ライフというものを送れない子も少なくはない。
その上、寮制である。特待生の庶民が性悪なお嬢様と同室になった場合、特待生はお嬢様の機嫌をそこねてアウェイになる確率がとても高い。
なので年々一人部屋にしてほしいという声が相次いでいるらしいが残念ながらそこは一応「生徒同士の交遊の一環であり、親睦を深めるのに必要」という名目があるので今の今まで相部屋となっている。いずれその名目も崩れ一人部屋になるだろうなというのが私の予想である。
と、ここまでうだうだ説明したわけだがそんな私は鬼城生学院のれっきとした生徒だ。
いや、生徒になる予定と言った方が正しいか。私は明日の入学式で鬼城生学院生の仲間入りっていうことだ。
とんでもない金持ちというわけではないが、裕福な方だとは自負しているのだ。
なのでこの学院にも受験はあったが、金銭面での心配なくして入れたと言えよう。
ちなみに言うと私は初等科から入ることになるのでまあお嬢様方とある程度の友好関係を築けそうだ。
なんでこんなに説明口調で、それでいて何でこんなに大人びているのかって?よくぞ聞いてくれた。
実を言うと、私には前世の記憶がある。
電波とか言われてしまっては恥ずかしながら否定はできない。もしかしたら前世云々は全部私の妄想かもしれないし何より確証がないのだから。
それでも私が前世の記憶といいきっているのにはわけがある。
この超お金持ち学校として有名な鬼城生学院。
私は、この学院が舞台となっている乙女ゲームを、知っている。
プレイしたことはないが、いろいろな意味で有名になった乙女ゲームだったためきっとある程度ゲームが好きな人間ならば知らない人はいないだろう。
何故なら、VRシステムが投与された初めてのゲームなのだから。私も最初は驚いたさ、VRシステムと言えばVRMMORPGだろう?オンラインゲームだろう?
まさか、乙女ゲームに実装されるなんて誰が思っただろうか。
しかもその次はエロゲーときた。
私は日本の将来を心配に思ったね。ちなみに私はその時点で23歳ぐらいだったはずだ。
まあそれ以降の記憶がまったくないのを見るとお陀仏してしまったのかもしれないな。
それはいいとしてだ、そんなVRシステムを利用した乙女ゲームが有名にならないわけがなかったのだ。乙女ゲーマーの騒ぎっぷりは狂気を感じさせた。そんなにお触りできるのが嬉しいかと叫びたくなった。
VRシステムをいれたことにより、自由性がいっそう高まった乙女ゲーム。それがまあどんどん売れる売れる。
乙女ゲーム業界は騒ぎたった。
そんなゲームの舞台となったのが鬼城生学院なのだ。
ストーリーは曖昧にしか覚えてはいないが、確かあまり裕福ではない家庭で育った主人公、華乃美咲が特待生としてなんとか学力だけで鬼城生学院に高等科から入学する。特待生なのに加えて高等科、当たり前のように孤立。楽しいとは言えないであろう学院生活、そして馬鹿高い学費。どうしようかと模索しているある日生徒会顧問の教師に声をかけられる。それは風紀委員にならないかというものだった。しかも風紀委員になれば学費や学院生活に必要とされるお金は学院側が全額負担してくれるという。二つ返事で了承した美咲だったが、美咲は風紀と生徒会の実態を知らないからこそそう返事ができた。なんと風紀の仕事は風紀を正すわけではなく、生徒会を正すことらしい。それでいてその生徒会だが、上っ面は完璧で注意するようなところが一欠けらも見当たらないように見えるが実際のところ中身はクズで底辺とゲスの集いだという。
今までに幾度となくその生徒会を正すためにだされた特待生や優等生の女子生徒が犠牲となっている。最早風紀は使い捨て扱いなのだ。
それでいて今年の生徒会は今までで一番最悪と呼ばれるほどの世代ーどうなる美咲!?そして学院に隠された大きな秘密ー……!みたいな感じだった気がする。
ちなみに学院に隠された大きな秘密、とあるがそれは生徒会役員及び学院の全男子生徒が鬼だということである。秘密どころの話ではない。
生徒会役員は特に格の高い鬼が集まってできる。なので顧問は基本的に生徒会役員に口出しができないし理事長は放任主義のラスボス臭が漂う隠しキャラの鬼だった気がする。
そして、彼等はただの鬼ではなく人食い鬼なのだ。
学院では今までに何人もの女子生徒が餌食となり行方不明になっている。
全て権力で揉み消されるしなにより鬼がいるのはこの学院だけではない。このゲーム派生の他の乙女ゲームもあるのだから。
つまり、これはダークファンタジーな世界観なのだ。
BADENDも勿論ある。生徒会役員とのBADENDはまあ当たり前だが、一般の男子生徒に好意をもたれ食い殺されることも少なくはないゲームで有名なのだ。しかもその食い殺される感覚のリアルなこそ。流石VR。
だからこそ、いろんな意味で有名なゲーム。
初めてこの学院を見たときの衝撃といったら説明のしようがなかった。パンと脳がはじけ飛ぶようにして記憶が流れ込んできたのだ。鬼城生学院という文字に見覚えがあると思っていたのはこれかと納得もした。
しかし、そんな思いよりも知らなかったほうが幸せだったろうなあとも思うのだ。
何はともあれ、初等科からそんな物騒な学院に入学する私。
先の人生が不安である。