クレーン車の恩返し
つい前日、工事現場の現場監督は、いつも使っているクレーン車を廃車にするという噂を耳にしました。現場監督は慣れ親しんだクレーン車を廃車にするのはかわいそうだといって助けてあげようとしました。クレーン車はなんとか廃車にされずに済みました。
その数日後の夜、現場監督が自宅のアパートでテレビを見ていると突然チャイムが鳴りました。ドアを開けると筋肉隆々とした男が立っていました。男は道に迷ってしまったので家に泊めてほしいといいました。その夜はとても寒い夜でした。しかも男はタンクトップ一枚だったのでブルブルと震えていました。あまりに激しく震えているのでかわいそうに思った現場監督は男を泊めてあげました。
次の日、タンクトップの男は改まった様子で現場監督に話しました。男が言うには、自分には住む家がなく、お金もないので仕事をさせて下さいということでした。現場監督はその筋肉隆々さを見込んで雇ってあげました。タンクトップ男は低賃金にもかかわらず人の数倍働きました。
ある日、タンクトップ男は仕事終わりにシャワーを浴びるとき、「絶対のぞかんといて下さいよ。絶対っすよ。」と念を押して言いました。現場監督は「のぞくわけねぇだろ馬鹿野郎コラっ」とキレ気味に言いました。しかし、実はそっちの気があった現場監督は思わずのぞいてしまいました。そして現場監督は自分の見た光景に驚いて「あっ」と思わず叫びました。なんとタンクトップ男がトランスフォーマーさながらクレーン車にトランスフォームしていました。トランスフォームし終えたクレーン車にシャワーの水が静かに降り注いでいました。
クレーン車はそのままずっとクレーン車のままでした。そしてその日以来、タンクトップの男は姿を現さなくなりました。
現場監督は「あいつはあのときのクレーン車だったんや。俺に恩返しするために一生懸命働いてくれたんやなあ。」と独り言をいいました。
めでたしめでたし。
※一説によると現場監督にのぞかれたとき、クレーン車のクレーン部分はそそり勃っていたという。