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指示がシンプルなほど、思い切って動ける  作者: Cross
第1章 討伐
5/5

1-5 【射撃練習】

 銃の準備が間に合わない時はいかがいたしましょう。


 石でも投げておけ。同時に何かを発射する事が重要なんだ。

「撃て!」


ほぼ同時に何発かの銃声が響く。


「よーし、タイミングは合ってきたぞ!」


だが、それだけだ。

いちおう的は狙っているが、一発も当たっていない。

手前に土埃を発生させたり、的の少し後ろの木にぶつかった後が聞こえる。

距離は歩いて100歩。

左右はさすがにあまりぶれていないが、

この程度でそもそも角度をうまくつけられないとは。。


もちろん、1人だけでゆっくりと狙い撃った場合はそれなりに的に近いところにいく。

横一線に並んでちょっと前に歩いて構え、「撃て!」という合図で撃つ。

これだけの動作で何かが狂ってくるらしい。


まあ、わかるよ。

合図までに準備を終える事に気がいき過ぎるんだろう。


ただ、横のガトーは

『おいおい、この状態から装填と射撃の繰り返しや複数列の一斉射撃など

 をやったら、どうなるんだ、』

という顔をしているが。

そうだよな~、しかも敵も攻撃してきて、より混乱してくるしな。


そこへラグランの腹心の一人であるヘルミナという女性将校が来た。

「訓練中、失礼します。クロス様。

 命令を伝達してもよろしいでしょうか?」


少し赤みがかかった茶色の髪で少々きつい目はしているが、

美人と言って申し分ない顔つきをしていた。

20歳前後だろうか。若いな。

比較的ぴちっとした軍服を着こなしているので、

出るところは出ているのがわかった。

まじまじと見ているとたぶん怒られるな。


「はい。ご命令を承ります。

 ガトー、後はまかせた」

そう言って、クロスはヘルミナに近づき、

片膝を地面につけて命令を聞く体制を取った。

直接の上位命令者ではなかったので、あえて頭は下へ下げずに

ヘルミナの顔をぼんやりと見ていた。


「クロス様にラグラン様からのご命令でございます。

 当地での食料及び馬の飼い葉の調達。

 これがクロス様の当面の任務です」


「了解致しました」

クロスはややそっけなく答えた。


「不満ですか?」

ヘルミナは冷たい視線でクロスに聞いた。


「いえ、むしろ、私向きな望みどおりの任務です」

とはさすがに言えないな。かと言って不満とも言えないしな。


「不満などとてもとても。

 与えていただいた任務を忠実に実行します。

 それだけです」


そうですか、とヘルミナは言うと、

後は興味がなさそうにくるっと反対を向いて去っていこうとした。


なんかいい尻しているなー。


クロスの邪な視線に気がついたのか、

「輜重隊以外にも各拠点や宿場が同時に襲撃された、との事。

 正面からぶつからないところを見ると、

 我々に対して恐れを抱いているのでしょう。

 ここ最近の中でも腰抜け揃いなのか、という声もあがっています。

 現地調達の部隊には同じような襲撃があるかもしれませんので、

 お気をつけて」

と上半身だけクロスのほうを振り向いて言った。


「ご、ご心配痛み入ります」

とクロスが言い終わるのも聞かずに去っていった。

思わず下を向いて言ってしまった。自分も若いな。


どうも主力部隊での攻勢はまずまずうまくいっているみたいだな。

だが、今まで話に聞いていた動きと異なり、一抹の不安を覚える。


「ハンス、どうだ慣れてきたか」

先の戦闘で輜重隊から抜擢した若者に声をかけた。

ガトーの進言でガトーと一緒に突撃した血気盛んな者を

隊に組み入れたのだ。


「はい。皆さん、良くしてくれていますだで」

方言っぽいところはおいおい直っていくだろう。

いやそれも人の特色でいいか。

まあ、死なない程度に死ぬ気で頑張ってほしいところではある。


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