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08:変貌を遂げた侍女

第三者視点に変えました。

とりあえずシーツを落としてみたものの、着る物が見当たらず、フレイアはベッドに寝ているヴィクトリアの方へとすたすた歩いていく。勿論、男の視線なんて気にしてない。というか、タロヒュージ以外は全員後ろを向いているのだが。



「ヴィクトリアー、起きて~。あたしの着る物どこにあるか知らない?」


もぞもぞとベッドの中のふくらみから、ヴィクトリアの黒髪が覗く。その瞬間、ヴィクトリアはガバッと起き上がったのだが、案の定身体には何も身に着けてはいなかった。それを見て、再びタロヒュージは頭痛が襲ってきたのか、頭に手をやり、眉間に皺を刻んだまま目を瞑ってしまった。



「おはようございます、フレイア様!すみません、私ったら寝坊してしまって!」


「ん~?いいのよ、服の場所さえ教えてくれれば寝ててもいいのよ。昨日の今日で身体が辛いでしょ?それにね、ヴィクトリアの素敵なか・ら・だ、朝からそこのむっさい男共にサービスしちゃ駄目よ?」



そう言って、自分の事は棚に上げ、フレイアは彼女の身体をシーツで隠してあげたのである。その仕草にうっとりとしているヴィクトリアだが、ふと部屋のドア付近で(たむろ)している輩を見つけた。その瞬間、絹を裂くような悲鳴が…フレイアが計らずも口を塞いでいたので上がらなかった。

しかし、嫁入り前の裸、しかもこのヴァルハラの勇猛果敢な麗しの若き国王(逆玉№1候補)タロヒュージと、冷徹だけどその視線に刺されたいグッドルッキング!と評判な宰相ジローリアス、国王を守る筋肉ムキムキ白い歯が眩しい近衛隊長のマキシマス…とその部下。を見られたのである。悲鳴を上げられなくとも、うるうると涙目である。最早、自分が国王に毒を盛った事など都合よく忘れてしまっている。



「ほら、泣かないで。いい子ね~、もし泣きたいなら、あたしのこの胸でお泣きなさい!!」


「フレイアさま~!!」



そう言って、ヴィクトリアはフレイアに抱き付いて泣き出してしまったのである。

もちろん、フレイアはこの時も全裸。



「いい加減にしないか!!!!フレイア!お前はさっさと服を着ろ!!それに、ヴィクトリア!お前も起きて着替えろ!!」



抱き合っていた彼女達は怒声がした方を振り返った。赤い顔でわなわなと震えているタロヒュージを見て、フレイアはちっ!と短く舌打ち、ヴィクトリアに再度服の在り処を聞き、着替えるからと彼らを追い出した。ようやく男達が服を来たフレイアとヴィクトリアに会えたのは、それから一刻後の事である。



「さっきは挨拶してなかったわね。おはよう、皆さん、ご機嫌麗しゅう。」


「…全く麗しくないがな…」



にっこりと女神のように微笑んだフレイアに対して、タロヒュージは朝っぱらからとても疲れた顔を披露していた。それに気付いていたが、めんどくさいからほって置こうと即断したフレイアは早速夕べの事に付いて話しだす。



「さて、今集まってるのは他でもないわ、ヴィクトリアの事よね。誰が太郎ちゃんに毒を入れろと命令ししたのか。犯人の名前をヴィクトリアの口から言ってもらいましょうか。ヴィクトリア~、おいで~!」


「はい、フレイア様!私に陛下へ毒を盛れと命令したのは、()長官のフェンネル侯爵でございます!」


「あら~、よく言えたわね~。ご褒美よ、いらっしゃい。」


「ほ、本当ですか、フレイア様…。私すごく嬉しい…」



そう言って、艶めかしい顔に朱を走らせたヴィクトリアは、ソファーに座っていたフレイアの隣に座っておもむろに抱き付いた。フレイアもヴィクトリアの肩に手を回して、抱き締めている。その場はまるで、見る人が見たら恋人同士がいちゃついてるとしか思えないほど、むんむんフェロモンが漂っている。

一方、ヴィクトリアの口から語られた内容に驚愕している面々はその光景に突っ込む事が出来ないでいた。



「まさか夏長官とは…」


「フェンネル侯爵は先王の時代からの重鎮ですよね。それが一体なぜ?理由がわからないのですが。」


「おい、ヴィクトリア!その話、本当なのであろうな!?」



甘い雰囲気を破られたヴィクトリアは、あからさまに嫌そうな顔を自国の国王に向けた。その顔を見て顔を引きつらせなかったのは、フレイアだけである。

フレイアに引っ付いたまま、ヴィクトリアはさも面倒くさいと言う風にそっけなく質問に答えた。



「あぁ、そうですよ。あのくそじじいが私に『陛下を亡き者にすれば、ワシがこの国を牛耳れるのじゃー』とかって言って、フェンネル家秘蔵の毒を私に差し出してきたんですもの。私の家は子爵家で、フェンネル侯爵家、それも『夏』の長官をしているあの人には頭が上がりませんもん。だから、陛下に毒を盛ったんです。逆らえば、私の家がどうなってもいいのかー!ってね。成功した暁には、ワシの息子の嫁にしてやるって言われたんですよ。言いなりになるしかないじゃないですか。」


「大変だったわね、ヴィクトリア。」


「あぁ、フレイア様!ヴィクトリア、超怖かったんですー!!だってね、あのじじいったら、私の事をいっつもいやらしい目線で見てるんですよ?視姦されてたんですー!もうすっごく気持ち悪いぃぃ!!あ…でも、フレイア様にだったらされても…いいです…。きゃっ!私ったら恥ずかしい!!」


「んもー!可愛い事言ってくれるじゃない、ヴィクトリア☆」



豹変とはまさにこの事である。昨日見たあの慎ましやかなヴィクトリアと別人なのかと疑いたくなるほどの別人っぷりに、誰もが言葉を失った。

今やその彼女は、泣いてもいないのにすんすんと鼻をならして、フレイアの胸に抱き付いてそれを宥めるように、頭を撫でてくれる彼女にご満悦の様子だ。傍目から見たら、単なるバカップルである。

ちょっと…いや、かなり普通と違うのは、それが同性である事、それに彼女達が会ったのがまだ一日も経っていない事。それを除けば。


…完璧ヴィクトリアはツンデレだ。それもフレイアに対してだけ。



ぶりっ子…


ヴィクトリアの余りの豹変ぶりに、唖然とその光景を見ていた男共の頭の中で、その言葉がもれなく浮かんだのは偶然ではないだろう。



後に。

ヴァルハラでは、『子爵令嬢が教えるぶりっ子妙技!~これで貴女もヴィクトリア~』が発売され、一大ブームを巻き起こすことになる。

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