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11:敵情視察

朝食を美味しくペロリと平らげたフレイアは、食後の紅茶を飲みながら物思いに捕らわれていた。


緩やかな朝日を浴びながらお茶を飲むフレイアは、まるで絵画から抜け出たように美しい。朝食の皿を片づけているヴィクトリアは、思わず手を止めてうっとりと見入ってしまった。



なんてお美しいんでしょう、フレイア様…。

あの細くて長い指が…唇が…舌が…あぁ、フレイア様…!。



ほぅ…と頬を染めながら、感嘆と色欲混じりの溜め息をついたヴィクトリアだが、フレイアは全く色気の無いことを考えていた。



あぁ、コーヒーが飲みたいなぁ…



と。

元来フレイアはコーヒー派である。ちなみに一番好きな豆はブルーマウンテンなのだが、キリマンジャロの深煎りも好きだ。

アメリカンなんて薄すぎて飲んだ気がしない。


ダージリンやアッサム等の紅茶も嫌いではないのだが、やはり好みは好みだ。




コーヒーが飲みたいと思っていると、ヴィクトリアが声をかけてきた。



「フレイア様?如何なさいました?」


「え?いや、別に大した事じゃないわ。気にしないで?」


「そうでございますか?…何かご入り用でしたら何なりと申しつけ下さい。私、フレイア様のためだったら…」



もじもじと恥じらうヴィクトリアを見て、うふ。と笑ったフレイアはヴィクトリアの手を取り、同じソファに座らせて腰を抱く。

手のひらで軽く頬を撫でて、耳元で囁いた。



「ありがとう、ヴィクトリア。あたしは幸せ者ね。」



そしてそのまま耳元にちゅっと軽くキスをしてヴィクトリアを見ると、顔を真っ赤にしている。目なんかうるうるだ。

あぁもう可愛いわぁ…と思って顔をずらして、ヴィクトリアの唇に自らを重ようとし……




「お待ちなさい!!!!」



部屋になんだか甲高い声が響いたが、それに構わずヴィクトリアの唇に食らいつこうとしたのだが、何やら誰かに阻まれた。

むっとして阻んだ人物を見ると、赤も赤。湯気でも上がりそうな位顔を真っ赤にした女の子がいた。


ブルネットのクルクル巻き毛で、ぱっちり焦茶のお目めが愛らしい。綺麗と言うよりは可愛い類の女の子だ。

フレイアの胸ほどまでしかない身長だが、身なりはいい。着ているドレスも高そうだ。

どうにもいいとこの貴族辺りの子供っぽい感じがする。


そんな子がどうしてこんな所に?と疑問はいろいろあるのだが、ひとまずこの子は、誰なんだろうと内心首を傾げながらも、しっかりとヴィクトリアの腰を抱いたまま、突然の乱入者に誰なのか聞いた。



「どちら様?」


「それよりも、その侍女をお放しなさい!!なんて破廉恥なっ!!」


「ハレンチだってー、心外ねぇヴィクトリア。ところで、ヴィクトリア、この子誰なの?」



プルプル震えてる女の子が自己紹介してくれないので、面倒くさくなってヴィクトリアに訪ねた。ヴィクトリアは、突然の乱入者をチラッと見た後、フレイアに抱きついて、上目遣いで答えた。


「陛下の花嫁候補のお一人であります、イザベル様ですわ。」


「えっ!!太郎ちゃんって幼女趣味なの!?」


「なっ…!!幼女とは何ですか、失礼なっ!!わたくし、これでも17ですわっ!!」


「…随分幼く見えるけど。あ、あたしフレイアって言うの。よろしくね?」



一応挨拶はしたのだが、キーッと声が聞こえそうな位イザベルは憤っている。

幼女ではないと言ったイザベルを上から下までマジマジと見たが、年齢詐称ではないかと思ってしまう。

それ位、イザベルは幼い印象が拭えないのだ。



「フレイア、貴女、本っ当に失礼ですわっっ!!じゃあ貴女幾つなの!?」


「ふふっ…いくつに見える?」



不意にフレイアから艶めかしい流し目で見られたイザベルは、違う意味で真っ赤になった。



な…何なのでしょう、この感じ…。まだ朝だと言うのにお色気が凄いですわ!!

あの左右の違う瞳、繊細な鼻筋、艶やかに赤い唇…気だるそうな雰囲気…


どうしてかしら、あの左右色の違う瞳に見つめられると、変な気持ちになってしまうような…

あぁ、半開きの唇に人差し指を…



「どうかした?」



くすくすと笑っているフレイアを見て、はっと我に戻り、そして次の瞬間真っ赤になったイザベルは、そのまま部屋を走って出て行ってしまった。

再びヴィクトリアと二人になってしまったフレイアは、ヴィクトリアの髪を撫でながら「一体何しに来たのかしらねぇ」と面白そうに呟いた。



ヴィクトリアは、きっと花嫁候補の敵情視察に来たのねと思いながら、フレイアが自分の髪を撫でる指に、うっとりと感じ入ったのである。






その頃イザベルはと言うと…





「いやぁぁあっっ!!!!!わたくし、女性に興味はないわぁぁぁあー!!!!!!!!」



悶絶しながら、大絶叫していた。




それを見たイザベル付きの侍女達が慌てふためいたのは言うまでもない。


「イザベル様!?如何なさいました!?」


「イザベル様がご乱心でございますわ!!!」







「イザベル様がご乱心と報告がありましたが…」


「何?一体何があった。」


「どうやらフレイア様の色気に当てられた様で…。『わたくしは女性には興味ないわ』と叫んでいらっしゃったようです。」


「フレイアか…。」



がっくりうなだれたタロヒュージとジローリアスであった。

フェロモン製造機フレイア様。

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