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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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真実と信頼

第31話です。宜しくお願いいたします。

朝、目が覚めた時、妙に胸のあたりがすっきりしていた。


 昨日までずっと慌ただしかったせいか、こうして穏やかな空気の中で朝を迎えると、逆に少し落ち着かない。


顔を洗ってリビングに向かう途中、ふと思い出した。


 ――あの外国人の男。


 腹を刺されて倒れていた、ルドルフとかいう男だ。


 浮田が「もう命に別状はない」と言っていたから大丈夫だとは思うが、やっぱり少し気になる。


 階段を下りる前に、俺はそのまま客室のある廊下へ足を向けた。


 すると、ちょうど扉の前に一葉が立っていた。


「おはようございます、ご主人様」


「おはよう。どうだ、あいつ」


「先ほどお目覚めになられました。意識もはっきりしており、会話は問題なくできそうです」


「そうか」


 思ったより回復が早い。


 ……いや、浮田のスキルが異常なんだよな、たぶん。


 扉越しに中の気配を探る。


 静かだが、確かに人の動く気配がある。


「食事は?」


「まだでございます。お身体の様子を見てからと考えておりました」


「分かった。じゃあ先に様子だけ見よう」


「かしこまりました」


 一葉が静かに扉を開ける。


 中では、ルドルフがベッドの端に腰掛けていた。


 上半身は起こしているが、まだ少し動きがぎこちない。


腹の傷のあたりを無意識に庇っているのが分かる。


 だが、顔色は昨日よりずっといい。


 窓から差し込む朝の光の中で、その顔立ちは昨日よりはっきり見えた。


 整った目鼻立ち。高い鼻。短く整えられた髪。


何より、肩や腕の厚みがすごい。


明らかに鍛えてる体だ。


 ……こんな男が腹を刺されて路上に転がってたんだから、そりゃ目立つ。


 ルドルフは俺に気づくと、すぐに立ち上がろうとした。


「いや、無理すんな」


「……すみません」


 日本語だ。


 しかもかなり自然。


 昨日は混乱してて気にならなかったが、改めて聞くとちょっと驚く。


「体はどうだ?」


「少し重いですが……痛みは、ほとんどありません」


 そう言って、自分の腹部に手を当てる。


「正直、まだ信じられません」


「それはこっちも同じだよ。浮田のスキル、見てて意味分からないし」


 俺がそう言うと、ルドルフは少しだけ笑った。


 昨日より表情が柔らかい。


 少なくとも、今すぐ暴れたり逃げたりしそうな感じじゃない。


「とりあえず、飯にしよう。話はその後でいい」


「……ありがとうございます」


 その声には、昨日よりずっと落ち着きがあった。


 ルドルフを連れてリビングへ行くと、みんな揃っていた。


 チャン爺が朝食の仕上げをしていて、テーブルにはすでに皿が並び始めている。


 未来はソファに腰掛けて本を閉じ、陸斗は姿勢よく席についていた。


浮田はコーヒー片手に気だるそうに座っている。


 美咲は――案の定、ルドルフを見るなり目を輝かせた。


「わー!おっきい!」


「美咲」


「だってほんとに大きいんだもん!」


 まあ、それはそうだ。


 ルドルフは一瞬きょとんとした後、少し困ったように笑った。


「……ええと、こんにちは」


「こんにちはー!」


 美咲は元気よく返事をして、それから未来の服の裾を引っ張った。


「未来お姉ちゃん、この人ほんとに外国の人なんだね!」


「見れば分かるでしょ」


 未来はそう言いながらも、少し興味深そうにルドルフを見ていた。


 ルドルフは視線をぐるりと巡らせ、少し驚いた顔をする。


「……改めて見ると、本当に……不思議な場所ですね」


「だろ?」


 俺は椅子を引きながら言う。


「俺もたまにそう思う」


 ルドルフが席につく。


 その動作一つにも、まだ少し慎重さが残っていた。


 無理もない。つい昨日まで死にかけてたんだ。


「まずは食え。話はその後だ」


「……はい」


 チャン爺がスープを置き、一礼する。


「ご安心ください。消化のよろしいものをご用意しております」


「ありがとうございます」


 ルドルフは、やっぱり礼儀正しい。


 見た目はゴリゴリの戦闘系なのに、中身はかなり理性的だな。


 全員が席につき、いつものように朝食が始まる。


 だが、今日の空気は少しいつもと違った。


 新しい人間がいる。


 しかも、ただの避難民じゃない。


 俺もみんなも、それを何となく感じていた。


 食事の最中、ルドルフは驚くほど自然に箸を使っていた。


「……お前、日本語だけじゃなくて箸も使えるのか」


 俺が聞くと、ルドルフは少しだけ得意そうな顔をした。


「来日して六年目ですから」


「六年?」


 未来が反応する。


「そんなに日本にいたの?」


「はい。元々、日本の文化が好きで」


 一瞬、言い淀んでから続ける。


「……特にアニメが」


 その瞬間、俺は顔を上げた。


「アニメ?」


 ルドルフもこっちを見る。


「はい」


「……どんな?」


「えっ」


 未来が小さくため息をついた。


「そこ食いつくんだ」


 いや、食いつくだろ。


 食いつくしかないだろそんなの。


 ルドルフは少し照れたように咳払いをした。


「ええと……ロボットものや、バトルものをよく見ます」


「分かる」


 思わず即答した。


「いいよな」


「はい……とても」


 なんだろう。


 急に親近感が湧いてきた。


 食事が終わり、少し落ち着いたところで、ルドルフが姿勢を正した。


「黒瀬さん」


「悠真でいい」


「……では、悠真さん」


ちゃんと呼び直してくるあたり、真面目だなほんと。


「一つ、説明しておきたいことがあります」


 その声音で、空気が少し変わった。


 さっきまでの和んだ空気が、静かに引き締まる。


 浮田もコーヒーカップを置き、未来は本を脇に退かした。


陸斗も自然と背筋を伸ばす。


 俺は頷いた。


「聞く」


 ルドルフは一度、自分の手を見た。


 あの手が、死にかけた直後に“覚醒”したのか。


「昨日……俺は、自分が超人族になったと言いました」


「あぁ」


「その時に発現したスキルについて、先に話しておくべきだと思いました」


 そう言って、ゆっくりとこちらを見る。


 その目は真剣だった。


 仲間になるかどうか以前に、自分が何を持っているかを明かす。


 それは、ある意味で“誠意”なんだろう。


「俺のスキルは――『真実の口』です」


 その名前だけで、何となく嫌な予感がした。


 ……いや、嫌な予感というより、“厄介そう”というのが近いか。


「対象が真実を言っているかどうか、確かめることができます」


 未来が眉を上げる。


「……それだけでも十分厄介ね」


「いや、それだけじゃありません」


 ルドルフは静かに続けた。


「スキルを発動すると、“真実の口”が召喚されます」


「対象者は、その場から逃げられません」


「自分の意思で体を動かすこともできません」


「そして、発動者――つまり俺の質問には、必ず答えなければならない」


 リビングが静まり返る。


 説明だけで分かる。


 これはかなり、重いスキルだ。


「……まるで尋問だな」


 浮田が呟く。


「はい。そう言っていいと思います」


 ルドルフは肯定した。


「対象者は真実の口に手を入れた状態で、俺の質問全てに答える必要があります」


「全てが真実なら、そのまま解放されます」


「ですが」


 一瞬だけ、その声が重くなった。 


「もし嘘をついた場合――」


「幻覚を見せられます」


「真実の口に、手を噛みちぎられるという幻覚を」


 ……うわ。


 思わず顔をしかめる。


 美咲は内容を完全に理解していないのか、きょとんとしていたが、未来は明らかに引いていた。


「怖っ……」


 素直な感想だった。


「実際に怪我はしません」


 ルドルフは補足する。


「ですが、恐怖は本物です」


「強いショックを受けると思います」


「……十分だな」


 俺は正直、そう思った。


 肉体的な傷がなくても、精神的にはかなりきつい。


 だが――


 同時に、ものすごく使い道のある能力でもある。


 それを、俺はすぐに理解した。


「……それ、すごいな」


 俺がそう言うと、ルドルフは少し意外そうな顔をした。


「怖い、ではなく?」 


「怖いのもある」


 素直にそう返す。


「でも、それ以上に“使える”と思った」


 未来がちらっとこっちを見る。


 浮田は呆れたように息を吐いた。


 だが、俺は本気だった。


「ルドルフ」


「はい」


「俺たちと一緒に来てくれないか」


 真正面から言う。


 変に濁す意味はない。


「避難民を助けたい」


「そのために、お前の力を貸してほしい」


 ルドルフはすぐには答えなかった。


 ただ、俺の顔をじっと見ている。


 少し警戒しているようにも見えるし、言葉の意味を慎重に測っているようにも見える。


「……避難民を助ける?」


「あぁ」


「どういうことですか?」


 そこからは、順番に説明した。


 マンションのこと。


 住民を受け入れていること。


 働いてもらう代わりに、食料や住む場所を保証すること。


 これからもっと多くの避難民を受け入れたいと思っていること。


 途中で商品生成も見せた。


 食料、飲料、生活用品。


 目の前に次々と出してみせると、ルドルフはさすがに目を見開いた。


「……これは」


「俺のスキルだ」


「相当おかしいだろ?」


「……はい」


 そこは否定しないらしい。


「で、今後避難民が増えれば、当然問題も増える」


「ルールを守らないやつも出るかもしれない」


「暴れるやつ、盗むやつ、嘘をつくやつ――色々な」


 俺は一度言葉を切り、ルドルフを見る。


「その時、お前の力が必要になる」


「本当に守る気があるのか」


「本当にルールを守るのか」


「それを見極めることができる」


 リビングに静かな空気が流れる。


 ルドルフはまだ黙っていた。


 考えている。


 いや、違うな。


 踏み切るための何かが足りていない顔だ。


 しばらくして、ルドルフがゆっくりと口を開いた。


「……まだ」


 一言だけで、十分だった。


 彼が何を引きずっているのかは。


「俺はまだ……人に裏切られたという衝撃を、拭いきれていません」


 その言葉に、誰も軽々しく返事はしなかった。


 当然だ。 


 昨日、あんな話を聞いたばかりなんだから。


「だから……」


 ルドルフは俺を真っ直ぐ見た。


「本当に、悠真さんがそう思っているのか」


「この話が本当なのか」


「俺自身のスキルで……確認させてください」


 空気が、一気に緊張する。


 未来が不安そうな顔をした。


 陸斗も、少しだけ表情を強張らせる。


 浮田は何も言わないが、眉間に皺を寄せていた。


 チャン爺だけは静かに立っている。


 その沈黙の中で、俺はルドルフを見る。


 ……なるほどな。


 そうきたか。


 でも、分からなくはない。


 こいつにとって今、人を信じるっていうのは“怖いこと”なんだろう。


 なら。


「分かった」


 俺は即答した。


 未来がこっちを見る。


 陸斗も少し驚いた顔をした。


 だが、俺はそのまま続ける。


「ルドルフが納得するまで、やってくれていい」


 ルドルフの目が、わずかに揺れた。


 信じられない、という顔だ。


 けど、俺は別に揺らがない。


 嘘はついてないんだから。


ルドルフは、ゆっくりと一歩前に出た。


 その表情は、先ほどまでとは明らかに違う。


 迷いはある。


だが、それでも踏み込むと決めた顔だ。


「……分かりました」


 短く息を吐く。 


 そして、静かに告げた。


「――真実の口」


 その瞬間だった。


 空気が、変わる。


 ピリ、と肌に刺さるような圧。


 次の瞬間、床――いや、空間そのものが歪んだ。


 黒い影のようなものが広がり、そこからゆっくりと“それ”が現れる。


 巨大な口。


 石で出来ているような、無機質な質感。


 だが、確かに“生きている”と感じさせる、不気味な存在感。


「……これが」


 未来が小さく呟く。


 誰も動けない。


 視線は全て、その口に吸い寄せられていた。


 その時だ。


 俺の右手が、勝手に動いた。


「――っ」


 抗おうとしても無理だ。


 引き寄せられる。


 強制的に。


 そして――


そのまま、“真実の口”の中へと、手を突っ込まれた。


 冷たい。


 いや、冷たいというより、“何も感じない”感覚。


 存在しているのに、触れている実感がない。


 妙に気持ちが悪い。


 だが、それ以上に。


 ――逃げられない。 


 それだけは、はっきりと分かった。


 ルドルフが口を開く。


 その声は、さっきよりも低く、重かった。


「まず……」 


「今までの説明に、相違点はありますか?」 


 シンプルな質問だ。


 俺は迷わない。


「いいえ」


 即答だった。


 次の瞬間。


 ――何も起きない。


 痛みも、違和感も、変化もない。


 ただ、静寂だけが残る。


 未来が小さく息を吐いたのが分かった。


 ルドルフの目が、少しだけ鋭くなる。


「次の質問です」


「俺を助けたのは――協力を仰ぐためですか?」


 核心に近い質問。


 だが、これも答えは変わらない。


「いいえ」


 また、即答。


 ――何も起きない。


 その事実が、逆に重みを持って空間に残る。


 浮田が腕を組み直した。


 陸斗は、じっと俺を見ている。


 疑ってるわけじゃない。


 ただ、見届けようとしている。


 ルドルフが、一瞬だけ目を閉じた。


 そして、ゆっくり開く。


 その瞳は、震えていた。


「……最後の質問です」


 声が、ほんの少しだけ揺れる。


「俺のスキルが……仮に無くなったとしても」


「俺のことを、裏切るつもりはありませんか?」


 重い質問だ。


 でも――


 だからこそ、答えは一つしかない。


「もちろん、はいだ」


 迷いはない。


 言い切った。


 その瞬間。


 ――沈黙。


 誰も動かない。


 時間が止まったみたいな感覚。


 だが――


 何も起きない。


 噛みちぎられる感覚も、幻覚も。


 何一つ。


 ただ。


 “真実”だけが、そこにあった。


 ゆっくりと。


 本当にゆっくりと、“真実の口”が沈んでいく。


 まるで、役目を終えたかのように。


 空間の歪みも、圧も、すべてが静かに消えていく。


 そして――


 俺の手が、解放された。


 自由に動く。


 問題ない。


 つまり。 


 全部、通ったってことだ。


「……」


 ルドルフが、何も言わない。


 ただ、立ち尽くしている。


 そして。


 ぽたり、と。


 床に雫が落ちた。


 涙だ。


「……本当に」


 声が震えている。


「……信じて、いいんだよな……?」


 その一言で、全部伝わる。


 どれだけ怖かったのか。


 どれだけ疑ってしまっていたのか。


 どれだけ――信じたかったのか。


「あぁ」


 俺は、即答した。


「もちろんだ」


 少しだけ、息を吐く。


「昔の俺はさ」


 自然と、言葉が出た。


「人を信じるなんて、馬鹿なことだと思ってた」 


「裏切られるだけだって」


「合理的に動く方が、正しいってな」


 一度、視線をずらす。 


 そして――みんなを見る。 


 陸斗。


 未来。


 浮田。


 チャン爺。 


 そして、奥にいる美咲。


「でも」


「こいつらと出会って、変わった」


 ルドルフを見る。


「人って、案外悪くない」


「ちゃんと、信じていいやつもいる」


 少しだけ笑う。


「まぁ、全員じゃないけどな」


「俺たちは、ルドルフを裏切らない」


 はっきり言う。


「もしルドルフがピンチになったら」


「絶対助ける」


 言い切る。


「それだけは、約束する」


 ルドルフは、しばらく何も言わなかった。


 ただ、涙を拭って。


 そして――


 笑った。


「……ありがとう」


 深く、息を吸う。 


「グラッツィエ」


 その言葉には、ちゃんと感情が乗っていた。


「俺は――協力します」


 はっきりと。


 迷いなく。


 そう言った。


 空気が、ふっと緩む。


 未来が小さく微笑んだ。


 浮田は「やれやれ」と肩をすくめる。


 陸斗は、どこか安心したように頷いていた。


 美咲はよく分かってないまま、


「やったー!仲間増えたー!」


 と元気に言っている。


 ……まあ、それでいいか。


 俺はルドルフを見た。


 さっきまでとは違う顔。


 迷いはあるだろう。


 でも、それでも前を向いてる顔だ。 


(これで、また一歩だな)


 避難民を助ける。


 そのための仲間が、また一人増えた。


 しかも―― 


 嘘を見抜く力を持つ、強力な仲間が。




結構、中2感溢れるルドルフのスキル。

個人的には好きなんですよね。

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