愛のちから
せっかく家族に会えたのに、ぼくのママはなにも食べてくれないんだ。
たった一日しか経っていないのに、どうしてママはこんなにやせ細ってしまったのだろう?
それとも、最初からこんなにやせていたの?
見かねたおじさんが、香ばしく焼き上げた食パンを持ってきてくれた。
「おれだと食べてくれないんだよ。きみ、母犬に食べさせてくれないかな? もし、この子たちがきみになついてくれたら、連れて帰ってもいいからさ」
「え? いいんですか?」
「だって、この子だって命だよ? 母犬だって、自分の命をけずって子どもたちを生んだんだから。簡単に処分なんてできないよ」
処分……。
その言葉にぞっとした。
保健所に連れ去られた仲間たちは、きっと処分されてしまうんだよね。
だからママは、決意を込めて、なにも食べないのだろう。
ママ、ぼくだよ。
ギューイにワンタンっていう、かわいい名前をつけてもらったんだ。
だから、ギューイのことを信じて欲しいんだ。
だってぼくたち、やっと会えたんだよ。
ね?
ママ。
坊やなの?
というか細い声が、ぼくの耳に聞こえてきた。
そうだよ、ぼくだよ。だからお願い。ギューイはとてもいい子なんだ。だから、食パンを食べて欲しい。
きっと、おいしいよ?
ぼくの説得がきいたのか、ママは食パンではなく、ギューイのニオイを嗅いで、それから食パンを食べ始めた。
よかった。これで、みんなといっしょに帰れるぞっ。
つづく




