ギューイのお母さん
「ぼくのお母さんはね、お父さんの浮気にずっと気がついて、我慢していたんだ。それなのに、離婚が決まるやあっさりと妹を連れて出て行った。なぜ残されたのかわからないぼくは、ずっとお父さんに反抗してるんだよ。だけどね」
そういうのって、もう疲れちゃったんだ。どうしてぼくだけこの家に残されたの?
知らない女の人をお母さんと呼ばなければならないなんて、ひどいよって、ずっと思っていたんだ、とギューイは苦しそうに言葉を吐き出す。
「もし、お母さんがぼくを連れて行ってくれたなら、こんなウソつきにならずにすんだかもしれないのに」
それとも、ぼくのせいなのかな?
ウソをつくから、バチが当たったのかな?
いくつもの後悔の言葉がギューイから出てきて、涙もあふれた。
「ぼく、このことをお母さんに聞いてみるね」
手の甲で涙をぬぐうと、ギューイは携帯電話のボタンを押した。
「もしもし、お母さん? ぼくだよ、ギューイ」
ギューイの声が、緊張で張りつめている。
ねぇ、どうなっても、ぼくだけは味方だよ?
「あのね、お母さん。どうしてボクだけをあの家に残して出て行ったの? 知らない人をお母さんだなんて呼ぶのはすごくイヤなんだ。それにぼく、かわいい犬を飼いたいんだ。それにはお母さんのところじゃないと、反対される――?」
『わたしのせいじゃないのよ。お父さんが、ギューイだけは残していけと言うからそうしただけ。それに、わたしの実家で犬は飼えないわ。あなたの妹は、ひどいアトピー性皮膚炎なのよ。だから、ごめんなさい』
アトピー性皮膚炎。とてもひどいアレルギー状態?
だったらぼくがいたらダメってことだよね?
ギューイはくっと唇を噛んでいる。今にも皮膚が裂けて血が出てきそうだ。
「なら、どうすればいいの? お願い、お母さん。ぼくたちをたすけてよっ」
ついにギューイは泣き出してしまうのだった。
つづく




