表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
最終章 道の果てにあるもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/58

五十七話 世界を守って。

「喰らえ!」

『竜神術、氷冠!』

 デモス、大いなる闇の攻撃が始まった、それは先程アリナの手にダメージを与えたのと同じ、炎の攻撃。

 それをディンの氷冠、防御用の氷属性の魔法で防ぐ、それは闇に対して効果的な防御として働く、大いなる闇の攻撃に対する特別な防御として成り立つ、そんな防御魔法だ。

 炎が城を焼き尽す勢いで噴かれる、ただ、ディンは動じずに氷冠を張り続ける。

「アリナ!」

「わかった!」

 炎が揺らいだ、一瞬だが、攻撃が遅れた。

 その隙を見逃すディンではなかった、アリナに一瞬で指示を出し、攻撃に転ずる。

 アリナは、炎を割って攻撃に転じる、刃の風圧をもって攻撃をいなし、そして攻撃を繰り出す、ソーラに、これよりは小さい威力でだが、同じことをやってもらった事があった、炎を斬るという選択肢、それを得ていた。

「何!?」

「ディン!」

「おうさ!」

 アリナが炎を止め、両刃剣の片方に刃をぶつける、ディンに声を出し、ディンが氷冠を割ってもう片方の刃に刃をぶつける。

「小癪な!」

「アリナ!右だ!」

「わかった!」

 両刃剣に大いなる闇が力を籠め、ディンとアリナの攻撃を弾く。

 その隙、弾いた事によって空いた脇を、アリナに攻撃させると同時に、ディンは左から攻撃を繰り出す。

「なめるなぁ!」

「っ!」

「アリナ!」

 両刃剣、それは二つに分かれる剣、中央の手元を捻ると、二つに分かれてアリナとディンの攻撃を防ぐ。

 アリナを吹き飛ばし、ディンに両方の剣をぶつける、アリナが戻って来ることを確信していたディンは、それを剣で受けて、攻撃を誘う。

「貴様さえ死んでおれば!死んでおれば!」

「俺は死なない、負けない、わかっている事だろう?俺の諦めが悪いことくらい、お前だってわかってるはずだ。」

「っちぃ!」

 吹き飛ぼされたアリナが戻ってくる、アリナとディン、守護者二人の攻撃を受けながら、多いなる闇は、どうすればこの二人の心を折る事が出来るのだろうか、と少しだけ考え、そしてその思考を投げた。

 アリナはともかくとして、ディンが折れる訳が無い、デインの中に封印されていた頃、デインを通して戦った時、ディンは死にかけていた。

 それでもなお、一人の力ではなかったとしても、大いなる闇に捕らわれていたデインを救い出し、そして打倒された、その記憶があるからこそ、大いなる闇は、ディンの心をくじくという事が、困難にも程がある事を理解していた。

 その出来事を通して、ただでさえ頑強だったディンの心が、更に頑強になっている、それにも気づいていた、大いなる闇は、自分の敵たる竜神王の事を分析していた、それが意味を成す事かどうかは些末な問題だ、大いなる闇として、自分が成立する為にも、ディンを打倒する為にも、大いなる闇はディンの事を研究していた。

 その研究の結果、思考の結果に、ディンの心をくじく事は不可能だ、という結論が出た、という話なのだが、ディン自身はそれに気付いていないだろう、それほどまでに頑強な精神性を持っている、とはディン自身の事を考えていないだろう。

 それが気に食わない、何をしても折れない心、それは大いなる闇こそが持っているべきものであって、生きている者である竜神王が持つのは、おかしい話だ、と。

「小僧!貴様ぁ!」

「アリナ!今だ!」

「うん!」

 大いなる闇が、ディンに気をとられて、攻撃を仕掛けている、その時。

 後ろからアリナが袈裟に切りかかる、大振りな大剣によるその攻撃は、多いなる闇にとって、致命傷とも言える攻撃だった。

「まだ……!まだだ……!貴様らには……!負けぬ……!」

「いいや、終わりだ、大いなる闇よ。これでお前はお終い、また目覚めるまで、お前はお終いだ。」

 アリナの攻撃を受けて、よろけていた所に、ディンが渾身の一撃を繰り出す。

 それによって真っ二つに切り裂かれた大いなる闇は、無念だと呪いを吐きながら、消えていった。

「……。終わった、の?」

「アリナ……、アリナ……。」

「お母さん?」

「アリナ……。良く、やりましたね……。よくぞ、世界を守ってくれました……。母は、感謝していますよ……。」

「お母さん……。うん、私、やったよ。ディンと一緒にだけれど、一人ではなかったけれど、戦ったよ、勝ったよ。お母さん、だから、安心して眠ってね。」

 アリサの声が聞こえる、それは別れの言葉だったのだろう。

 世界を守った事を誇る、という、精霊らしからぬ感謝をしたアリサ、その声は、ディンの方へと向いていた。

「竜神王様……。娘を……、アリナを……。アリナを、育ててくれて、ありがとう……。貴方がいなかったら……、アリナは、死んでしまっていた、でしょう……。守護者の仲間達、彼らにも……、感謝の言葉を……。」

「アリサ、お前は間違っていなかった。世界を守る為に、アリナを守る為に、魂を変質させた事、それに関しては、褒められた話でもない。ただ……。ありがとう、お陰で、アリナは世界を守れた。そこに関しては感謝してるよ、お前がいなかったら、今頃アリナは死んでただろうから。」

「……。モート……。アリナを、任せましたよ……。」

「アリサ……。うん、わかっているよ。アリナの事、見守り続けておくれ。」

 アリサの声が聞こえなくなる、とほぼ同時に、二階と一階から駆けあがってくる二人の姿があった。

「アリナ!モート!倒したんか!?」

「そうみたいよー?配合体もいなくなったしー、それにー、圧迫する様な闇の気配が無いものー!」

「ジン!ソーラ!無事だったんだね……!良かった……、良かったぁ……!」

「泣かないのー、アリナー。」

「だって……、だってぇ……!」

 ジンとソーラが玉座の間に入ると、アリナは大声を出して泣き出す。

 心配だったのだろう、信じていたとはいっても、心配で仕方が無かったのだろう。

 それを理解していた二人は、笑いながらアリナにハグをする。

「……。これで良いんだな、アストレス。」

「……。良いのです、竜神王様。あの子らは、役目を果たした。私も、もう逝かねば。友が、友が首を長くして待っていますから。」

「そうか。さようなら、アストレス。」

 それを少し離れた場所から見ていたディンと、魂が解放され、無垢なる魂と戻ったアストレス、二人は、少しだけ話をしていた。

 魔王デモス、として君臨していた身として、そして、大いなる闇に侵されていた身として、何か知っている事は無いか、とディンは考えていたが、それをいう前に、アストレスは昇天していった。

「まったく……。安心しろ、アストレス。世界は、きっと守って見せるから。」

 昇天していくアストレスの魂を眺めながら、そろそろディンも退去の時間が近い、と感じていた、この世界に居られる時間が少ない、アリナ達を送って、そして別れを告げてお終いだろう、と感じていた。

「さ、帰ろうか。守護者の凱旋、それ位は許されても良いだろうさ。って言っても、俺はいられないけどな、もうこの世界に居られる時間が少ない、アリナ達を送って、そして俺も元居た世界に戻らなきゃだ。」

「ディン……、帰ってしまうの?」

「そうだな、そうなるか。……。きっと、またいつか。きっとまたいつか、道が重なる日が来るかもしれない、それは来ない日なのかもしれない、ただ、俺は信じてる、アリナ達は、きっと。きっと、また道が重なる日がやってくる、その日の為に、生きるんだ。」

 信じている、それだけしか伝えられないディンは、歯がゆいと感じていた。

 この後のアリナ達の運命、それを一度経験している身として、それを回避する為の知恵を授けたかった、しかし、それはしてはいけない事、ディンが世界軸を渡ったという事は、基本的には禁句なのだ、だから、言えない。

 アリナ達の命運の終わり、それを見て帰るのか、それとも、違う未来が待っているのか。

 アリナ達が喜んでいる所に水を差したくは無かった、ただ、それ以上の事を言えなかった。

「じゃあよ、行こうぜ!世界守って見せたってよ、皆に伝えねぇと!」

「そうだね、そうしよう。凱旋位、許されても良いはずだ。」

「そうねー!行きましょー!」

「……。ディン、ありがとう。貴方がいてくれたから、私達はここまで来れた、ここまで走ってこれた、だから、ありがとう。」

「……。行きなさい、守護者達よ。」

 止める事は出来ない、未来を知っていたとしても、それに向かって行ってしまっているのだとしても、未来を観測できる存在ではないディンには、止める権利が無い。

 どうか、別の未来があってくれる様に、どうか、アリナが生きれる未来がある様に、とディンは祈った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ