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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
最終章 道の果てにあるもの

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五十五話 魔王デモス

「……。たどり着いた。」

「そうだね、アリナ。覚悟は出来ているかい?」

「……。きっと、きっと出来てる、きっとやって見せるって、皆は信じてくれたんだもん。」

 魔王の居城三階、玉座の間の入口、そこにアリナとモートはたどり着いた。

 門は固く閉ざされている、ただ、アリナの力さえあれば、問題なく壊せるだろう、とは推測が出来た。

「行くよ、モート。」

「わかった。」

 アリナが剣を出し、扉に向けて一閃した。

 闇に覆われた扉、勇者では開けなかったであろう扉、それを易々と壊し、アリナとモートは玉座の間へと入った。


「……。守護者、か。」

「貴方が、魔王デモスなんだね……。アストレス、魔王を倒した勇者の末路、歴代の勇者が、それぞれ転生した姿。」

「そうか……。うぬがアリナか……。待っていたぞ、守護者よ……。」

「話が早い?どういう事だい?君は、世界を滅ぼそうとしているんだろう?なら、どうしてアリナを待っていた様な事を……。」

 魔王デモス、その体躯は三メートル程の巨人が、両刃剣を持った姿、マントを羽織り、闇を纏った勇者の末路、その前世の名を、勇者アストレス。

 勇者アストレスは、数十年前に魔王を打倒し、そしてその死の間際、アリナと話をした、それを覚えていた、それは、アリナの幻だと思っていた、アリナは、それが現実だとは考えつか無かった様子だ。

 ただ、アストレスは覚えていた、記憶の片隅、勇者としての人生を終える寸前、守護者を名乗る少女に出会った、ベッドに眠っていて、死を待っている間、アリナという少女と話をした、と。

 魔王となって、なり果てて、それからずっと覚えていた、いつか、自分達を解放する役割を持った、そんな少女が現れるだろう、と。

「うぬは、その定めを知っておろう……?ならば、余の定めも、知っておるのだろう……。」

「定め……。うん、私はそれを知ってる、理解してる、貴方達の魂を解放して、そして次代の魔王が生まれない様に、もう悲しみが連鎖しない様に、その為に私は戦う、その為に私は生きていた。……。わかってる、わかってるよ。ただ、貴方はそれで良いの?デモス、ううん、アストレス、貴方はそれで良いの?」

「アリナは何か知っているのかい?……。これは、僕は黙っていた方が良さそうだね。」

 デモスとアリナは、何かが通じている様子を見せる、モートはそれに困惑するが、しかし何かがあるのだろう、と黙る事を選択した。

 暫しの会話、アリナとデモス、守護者と魔王という、世界を守る者と滅ぼす者の会話、それは、意味のあるものだろう、と。

「その名は、懐かしいな……。皆、余をデモスと呼ぶ……。かつての友、彼奴等でさえ……、余の名を忘れ、デモスと呼んでいた……。」

「アストレス、その名前を忘れちゃったって事?でもそれって、どうし手?仲間だったんでしょう?仲間として、一緒にその時のデモスを倒したんでしょう?なのに、どうして忘れちゃったの?」

「さあ、な……。気が付けば、余はデモス、そう呼ばれる様に……、なっておったな……。」

 今にでも襲い掛かってきそうな気配、というよりは、デモス自身は戦うつもりがないのだろうが、何かがそうしようとしているのを必死に抑えている、というのが正解だろうか、デモスは、語り続けながら、何かを抑えている様子を見せる。

 腹の底から何かが飛び出そうとしているのを堪えている様にも見えなくはない、両刃剣を持っていない左手で腹部を抑え、つっかえつっかえになりながら、アリナと話を続けている。

「……。もう、持たないんだね?」

「そう、だな……。余が、抑え込めるのは、ここまで、という事か……。余の命運は尽きた、うぬが、真に守護者足り得るのであれば……。余を、解放してくれ……。」

 呑み込まれる、デモス、アストレスは、何かに飲み込まれていく。

 アリナとモートは、それが何かはわからなかった、ただ、何かに飲み込まれた事に関しては、理解していた。

 アストレスが堪えていた事、水で満ちたダムが決壊をするのと同じ様に、その身にため込んでしまった闇に、呑み込まれていく。

「ククク……、クハハハハ!この肉体も中々にしぶとかったな!流石は光に属する者の肉体と言えるだろうなぁ!だが!我にそんな付け焼刃の手段は効かぬのだよ!」

「……。貴方はアストレスじゃない、貴方はきっと、世界を想う者じゃない。なら、貴方の正体もおおよそ掴めるね。……。大いなる闇、ディンの敵、ディンがその為に来た、倒すべき相手。」

「アストレスの魂を、乗っ取ったという事かい?魂と肉体を乗っ取って、世界を滅ぼそうと……。」

「だからどうした!あの忌々しい守護者は今ここにいない!ならば!今この刻に貴様らを葬り!世界を闇の底へと誘おうではないか!」

 大いなる闇、それはアリナが気付いていた、アリナだけが気付いていた、その正体。

 ディンは知っていただろう、そして、ディンはこの相手と戦う為にこの世界にやってきた、それが真実なのだろう、とアリナは感じていた。

 ディンが到着するまでに、倒せれば万々歳、倒せなくても倒れる訳にはいかない、と。


「現れたか。」

 魔物の相手を済ませていたディンは、大いなる闇の出現を感じていた。

 それがディンがここにいる意味、この世界に来た意味、この世界でやるべき事。

 それを知っていた、以前の世界軸の時も、デモスを乗っ取って戦おうとしていたその存在が、今回もそれをやってくるだろう、という予測は立てていた。

 ただ、それに対してアリナ達がどこまで戦えるか、それは未知数だった、現在はソーラとジンは一階と二階で配合体と戦っている、そしてアリナとモートは、大いなる闇に乗っ取られたデモスと対峙している。

 すぐに行きたい、助太刀ではなく、それがディンの元来の役割なのだから、戦いに行くのが筋だろう。

 ただ、まだ魔物が残っている、まだ世界各地に魔物が点在している、それを何とかしない限りは、大いなる闇を倒した所で、世界が闇に堕ちてしまうだろう。

 どちらかをどうにかしても、もうどちらかをどうにかしない限り、この世界においては世界は守れない、魔物が当たり前にいる世界では、魔物を倒しきる事については言及されていない、そう言った世界に関しては、魔物がいて当たり前なのだから、それは世界の営みの範疇になるだろう、という認識がされる、そうではない世界、この世界や、ディンがいたセスティアにおいては、魔物を倒しきる事、そして大いなる闇を打倒する事、それらは両方ともしなければならない事だ。

 結果、どちらかを守護者達に任せる必要がある、ディンも分身が出来る訳ではない、そして、大いなる闇がいつどのタイミングで現れるか、についてはわかっていない、だから、どちらかを守護者に任せる、それがディンのやり方だった。

 今回に関しては、大いなる闇の相手をアリナ達に任せる、魔物を倒し終わり次第、ディンもそちらの戦いに参戦する予定だったが、少なくとも、最初の方はアリナ達に任せるほかなかった。

「……。」

 大いなる闇、その正体に関しては、ディンも知らない事だ。

 ただ、多くの存在を操っている、デインを始めとして、デモスや他の世界における「闇」に分類される存在を操り、そして世界を滅ぼそうとしている、それがディンや他の竜神達の認識だった。

 大いなる闇、竜神王が一千万年間戦ってきたとされる、その正体。

 それを知らずに戦っている、それは危うい事だ、とアリステスには言われていた。

 ただ、それを知るきっかけが無ければ、糸口もない、どうしようもないというのが今のディンの現在で、それを知るきっかけを与えられていない、というのが現実だ。

「またアリステスに怒られるかな。」

 やれやれ、とディンはため息をつく。

 千年を超える時間を生きている、と言っても、竜神の中ではまだまだ最年少なディンは、よく周りの竜神に怒られていた、と認識していた。

 現実として、怒っている訳ではないのだが、という事が多かったが、怒られているという感覚は正しいのだろう、最年少であるディンの事を思うあまり、叱る様に話をしてくるのも事実だ。

 千歳を超えて誰かに怒られる事があるとは思わなかった、とディンはため息とをつく事があるが、しかしそれに関しては、存外に心地良さも感じなくはない、とは思っていた。

 それがあるからこそ、竜神達との絆を感じられる、以前の時間軸では、竜神達は全く干渉してこなかった、戦う事はなかったが、ディンが竜神の住まう世界に赴いた事が無かった為、会った事すら無かった。

 他に竜神がいる事、それらが役割を放棄してしまっている事、については、母であるレイラから記憶の引継ぎがあった為知っていたが、それ以外に竜神の痕跡も、竜神達が存在する気配も、殆どが無かったのだ。

 契約召喚、という特別な契約をしていた竜神達には会った事があるが、しかし会話をした事はなかった、だから、その絆は無いに等しかったのだろう。

「さて、次。」

 今はその事よりも、この世界を守る事に集中しなければ。

 ディンはそう思考を纏めて、残り少ない魔物の出現場所へと向かった。

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