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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
最終章 道の果てにあるもの

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五十三話 魔王の居城、一階

「ここが魔王の居城……?」

「そうねー、一番魔力の強い相手、って言うのは、ここにいるわねー。」

「なんか、おっかねぇって言うか、なんてーのか……。」

「と言っても、魔物で溢れている、と言うわけでもないんだね。」

 四つの結界の起点を破壊し、そして魔王の居城の入り口へやってきた四人、魔王の居城は、まさに城というのが正しい風貌の建物が、闇に覆われていて、入口付近にも骸骨が転がっていた、それは勇者のものか、それともモンスターの骨か。

 悍ましい気配を漂わせるその建築物、ここに魔王デモスはいる、という事がよくわかる、それは、闇という意味で一番深い場所、この世界の中で、一番闇が深い場所、それがここだからだ。

 暗黒の世界、というのがふさわしいであろうこの大陸、暗雲が立ち込める大陸の中で、一番強い闇、深い闇を抱えている場所、持っている場所、それがここで、この建築物の最上階、そこが一番闇が深い場所だった。

「行こう、ディンだって、何時までも戦っていられる訳じゃないと思う、だから、私達が終わらせないと。」

「……。そうだね、怖がっている場合じゃない、怯えている場合でもない、ディンの体力が持つ間に、何とかしないとだね。」

「そだな、ディンが戦ってんだもんな。」

「そうねー。じゃあ、入りましょっかー?」

 ソーラの魔力で門を開ける、城壁を兼ねている門は、はね橋になっていて、上の方に金属の鎖が止めてあり、重厚感のある音を立ててそれがガラガラと降りてくる。

 周囲は水の堀があり、それによって城外からの侵入を阻む、という形式を取っていたことが伺える。

「行こう。私達は、私達に出来る事を。」

 門を開けるとわかる、中には魔物とモンスターを配合した存在、が沢山いる、それを相手しながら、デモスの元に行かなければならないのだろう、と。

 それは覚悟していた、むしろ、ここまでは魔物との戦いが無かった事に拍子抜けしていた位だ、とアリナ達は考える、その程度の覚悟ではない、それ位の覚悟はしている、と。

 ただ、どれだけの魔物がいて、どれだけの戦いが待っているのか、についてはわからない、が正解だった、しかし、それをするだけの実力をつけてきた、それを実行するだけの修行をしてきたのだ、と。


「アリナ達は……、居城に侵入したな。」

 魔物の相手をしながら、ディンは確認をする。

 アリナ達は魔王の居城に侵入した、まだその入り口だが、魔王としてはそちらに意識を向ける事になるだろう、という事は、無自覚に仕向けている魔物達に関しても、そろそろ減ってくるだろう、と。

 その代わり、アリナ達の元にいる魔物とモンスターの配合体の強さが上がってくるだろう、ただ、それに対抗できるだけの戦力には育ててきた、それがディンの自負であり、自覚だった。

 アリナ達が勝つだけの、勝算を得られるだけの戦力には整えてきた、限界まで鍛えて、そして勝てるだけの力に昇華してきた。

 だから、ではないが、アリナ達は勝つだろう、と考えていた、そうでなければ、アリナ達が死んで、そしてその魂を使って、ディンが世界を正常な形に戻すだけなのだが、それをしたくない、とディンは常々考えていた。

 守護者の魂を糧とした、守護の術式、守護者が大いなる闇に敗北し、そしてその結果として世界が混沌に堕ちてしまいそうになった場合、竜神が行使出来る様になる術式、世界の守護を目的とした、魂を転換する術式、それをディンは知っていた、保険とてだが、知ってはいた。

 アリステスに教えられた、その術式、それをディンは使いたくないと感じていた、それだけは使いたくない、世界の為だと言って、守護者の魂を良い様に使いたくない、魂となってまで、守護者を利用したくない、と。

 ただ、そんな綺麗ごとを言っていられるのも今の内だ、とアリステスは言っていた、過去にも、その術式は使われた事はあったらしい、守護者の魂を世界の糧とする術式の使用者、に関しては、竜神の中でも記録をされていた、世界を守れなかった末路として、嘲笑われる存在として、という意味合いではなく、散っていった守護者へのせめてもの弔いとして、竜神達の中で記録をする、というのが興りだった。

「……。」

 ディンが世界軸を渡った後も、何度かそれをしている竜神を見た事はあった、己の魂に守護者の存在を焼きつけて、生涯忘れないようにする、という儀式めいた事をしている竜神が、タカ派の中にもいた、彼らは、結果として人間を殲滅するという「答え」を導き出しただけであって、世界の守護を放棄した訳ではなかった、それによって生じる、守護者の犠牲、に関しては、弔いをしている、それが事実だった。

 世界の守護者と、世界群の守護者として、違いは多少あれど、世界を守るという同じ役割を持った者として、それをやめる事はしなかった、とアリステスは言っていた。

 タカ派は、守護者という高潔な魂を遺して、そして闇を生み出す穢れた存在である人間を滅ぼそうとしたのだ、と。

 ただ、そう都合のいい話はなかった、闇を持たない、と自負していた竜神達でさえ、闇を持って魔物を生み出す事はあった、それが人間と比べれば少ない、というだけで、無い話ではなかった、それをディンは知っていた、デインの中には、竜神の闇も残されていたのだから。

 だから、ディンは「人間を滅ぼした所で魔物はいなくならない、そして、人間が消滅した事で生じる魔物の量に、竜神では抗えない」と定めた、それが事実だと、竜神達を説得しようとしていた。

 結果として、竜神の殆どは滅びの道を辿った、その結果として生まれてしまった闇、魔物に関しては、竜神王の一族であったディンの母レイラと、叔母であるアイラ、従弟であるケシニア、賢竜アリステス、そしてタカ派のリーダーだった先代の弟、レヴィノルの孫であり、ディンのはとこに当たるレヴィストロが対処していた。

 ディンはその間眠りについていた、竜神達との決戦で使い切った体力を元に戻すためには、それだけの時間を要した、というのがディンの認識だった。

「さて、そろそろ行きますか。」

 次の魔物の場所に行かなければ、アリナ達が集中できる様に、アリナ達が魔王デモスを救える様に、こちらもテンポを上げて戦わなければ、とディンは剣を握り直す。

 そろそろ疲弊してきた、と言っても、泣き言を言う程疲れているわけでもない、だから、ではないが、ディン自身も戦い続けなければ、と。


「そこだぁ!」

「くらいやがれ!」

 魔王の居城に入ってすぐ、アリナ達はディンの言葉の意味を知る事になった。

 魔物でもない、モンスターでもない、純粋な生物としても、純粋な闇としても成立していない存在、が一斉に襲ってきて、それに対処していた、その悍ましい見た目、悪鬼とでも言えば良いのだろうか、伝承に語られている魔物、とは少し趣の違う敵と、アリナ達は戦っていた。

 まだ入口から少し入った所、ここで消耗していては、魔王デモスまでたどり着けないだろう、とは予想は出来た、ただ、突破口が見当たらなかった。

 いたずらに戦った所で、魔王の所にはたどり着けない、ただ、戦わなければ、突破できない。

 どうすれば良いのか、全力を出している訳ではないが、モートの身体強化を受けて戦っている三人は、ソーラとモートが魔力を切らす前に何とか魔王の元にたどり着かなければ、と考えていた。

「……。アリナー、ジンー、モートー、相談があるんだけど、良いー?」

「んだ!?ここ突破する手掛かりでも見つかったか!?」

「そうねー。探知してみた感じー、三階建てなのよねー、このお城ー。それにー、モートの身体強化と魔力強化の魔法ってー、ある程度離れてても発動自体は出来るんでしょー?」

「そうだね、ある程度なら離れていても発動できるけれど……。ソーラ、もしかして……?」

 ソーラは思いついた様子だ、突破口を、その方法を。

 ただ、それをして全員が生き残れるか、全員が生還できるのか、それに関しては未知数だ、ディンに鍛えられてきたとはいえ、それが出来るのかどうか、と問われると、配合体の強さによりけりだ、今のところの強さであれば可能だが、これ以上強くなられた場合はわからない、それが正解だろう。

 ただ、ここでいたずらに体力を消耗して、消耗した状態で魔王デモスと戦うよりは、そちらを選択した方が勝率は高いだろう、とソーラは感じていた、そう信じていた。

「私がここを受け持ってー、ジンが二階を受け持ってー、それで、アリナとモートがデモスを倒す!って言うプランはどうー?そっちの方が、勝率は高いと思うんだけどー?」

「一人ずつで受け持つって事か……。良いんじゃねぇか!?俺は賛成だわ!」

「でも……。もしも攻撃を受けた時、モートが傍にいてくれないと、回復が出来ないよ……?ソーラの話だと、モートは私についてくるんだよね?だったら、二人が……。」

 攻撃の手を緩めず、ただ躊躇うアリナと、賛同するジン。

 モートは、非戦闘員の自分が何かを言うのは間違っている、と黙っていて、三人の決断に従う様子を見せる。

「……。アリナ、よく聞いて?私達が一緒に戦う意味、それを考えた時に、この決断が出てきたのよ。私達が選ばれた理由、それはきっと、アリナ独りじゃ成し遂げられない事だから、でもそれでも、アリナ独りで遂げなければならない事だから。私達は捨て駒になるんじゃない、私達は、私とジンはね、アリナに託すの。未来を、世界を、魔王の運命を。モートは、その立ち合いをして欲しいって言うだけ、私達がここを抑えてる間に、決着つけてきて!じゃないと、ここで疲弊して共倒れよ?」

「ソーラ……。」

 ソーラは、普段の間延びした声はどこへやら、背中合わせになっているアリナに、そう伝えた。

 普段とは違うソーラの言葉に、アリナは躊躇う、しかし、躊躇っている時間も、戸惑っている時間も、自分達には残されていない。

 ディンが独りで魔物と戦っている以上、ディンの消耗というタイムリミットがある、そして、ここまで来た以上、自分達の体力というタイムリミットもある。

「アリナ!ソーラと俺ならダイジョブだ!俺達だって、ディンに鍛えられてきたんだぜ?それに、アリナよりずっと長く鍛錬してきたんだ、ダイジョブだ!」

「ジン……。……。わかった、信じるよ。二人の事、信じる。死んじゃったら、承知しないんだからね?私達、生きてかえって、一緒に暮らして、一緒に生きていくんだからね?」

「わかってるわよ、約束。だからアリナ、ケリをつけて来なさいな。もう、魔王と勇者なんていうシステムがいらなくなる位、けちょんけちょんに闇を倒してきて!」

 まずはソーラが、一階を担当する、と言ってアリナ達に背中を向ける、そして、配合体の注意を引き付けるべく、魔力を解放する。

 その隙を見て、アリナ達は間を縫って二階に向かう、目指すは三階、魔王の居場所だ。

 その為に走る、最低限の配合体を倒して、出来るだけ体力を温存して、長い螺旋階段を駆けあがる。

「こっちよー?」

 ソーラは、その姿を見守って、そして階段の前に立つと、配合達達を相手どるべく、魔力を練る。

 配合体達は、より強い魔力の持ち主であるソーラに意識を向け、一斉に襲い掛かってきた。

「そーれ!」

 ソーラは、それらをなぎ倒しながら、未来を夢見る。

 いつか、魔王と勇者というシステムを無くした後、その後は、旅にでも出てみるのも良いのかもしれない、アリナ達を連れて、大陸を回ってみるのも良いのかもしれない、と。

 ずっと研究に没頭していたソーラ、そんなソーラが、自由を夢見るのは、ある種間違いではないだろう、必然と言えるだろう。

 未来を夢みる、そんな事をした事は無かった、自分はウィッチくずれとして生きて、そして死んでいくだけだ、とソーラは腐っていた。

 ただ、今は違う、アリナ達という仲間たちと共に、旅に出てみたい、それがソーラの夢だった。

 夢は叶えなければ意味がない、それはソーラの信条だ。

 だから、必ず叶えたい、必ず、生きて帰るのだ、とソーラは誓った。

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