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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
最終章 道の果てにあるもの

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四十九話 敬虔なるソニル

「ここが三か所目の結界の起点だね。」

「綺麗にされてんだな、誰かいるんか?」

 転移で飛んだ先、島の南側に来ていたアリナ達は、ここは街が整備されている、と感じた。

 それを誰が行っているのか、誰が管理しているのか、については予測もつかなかったが、確実に、誰かに管理されている、と感じるその景色、街並みという程何かがあるわけではないが、北の港街と違って、整備されている痕跡があった。

 かつての栄華、という程でもないが、この街は発展していたのだろう、という事が伺える、それが魔王がこの大陸に現れる前なのか、それとも魔王が君臨していた街なのか、それもわからない、ただ、ここには街があった、という認識だ。

「……。誰かしらー?」

「カカカ!儂の気配に気づくとはな!お嬢さん、おまんはウィッチじゃな?」

「そうよー?貴方はー?」

「カカカ!そう急くな、お嬢さん。時間はたんと残されておろうてな。言っても、儂の名か、そうさな、呼ばれている名で言うのであれば、そうさな。敬虔なるソニル、とでも名乗るかのぅ。」

 ソーラが声を発すると、どこからともなく声が聞こえてくる、その声の持ち主は、小さな老人だった。

 建物の間をひょこひょこと搔い潜り、ソーラ達の前に姿を現した老人、黒いローブを身にまとった、そんな老人は、ソニルと名乗っただろうか。

 ソニル、それは先代守護者ドーガンの仲間の名、そして、人間に広く魔法を広め、グラン達からは魔法を穢した存在、として語り継がれている名だ。

「ソニル?って事はなにー?先代守護者の仲間が、魔王の配下をやってるって事ー?」

「カカカ、それはあっている様で間違っているのぅ、お嬢さん。儂はソニル、その名を受け継ぎし者じゃよ。ソニルの名は、代々受け継ぐ様に、と伝えられておったからのぅ。それも儂の代で途絶えてしまった歴史な様じゃがな、悲しい定めとして、受け止めておくとしようかのぅ。」

 ソニルの名が襲名制である事、については、ソーラすら知らなかった事だ。

 ソニル、その名は、グランの長を継ぐ者として、その名を継承する、それが、今ここにいるソニルがグランの長だった頃の決まり事だった。

 それが、ソニルという名になると、勇者の仲間となって消えてしまう、という迷信が有り、現在のソニル以降は引き継がれていない、というのが正解の様子だ。

「カカカ、お嬢さん、さて儂と戦うかね?」

「お嬢さんじゃないわよー、私にはソーラって言う名前があるんだからー。」

「ソーラ、良い名じゃな。さてソーラよ、改めて問おうか、魔王の連れ立ちたる儂と、決闘をする気はないかのぅ?」

「決闘ねー、魔王の配下ってー、一対一で戦いたい人達の集まりなのかしらねー?まあ私としても、実力を試すっていう意味では、有難いけどねー。」

 そう言うと、ソーラは前に出る、アリナとジンがそうしていた様に、独りでも戦える事を証明したい、と考えていた。

 ソニルはそれにカカカと笑うと、ソーラと自分を起点に結界を張る、それが、ソニルの張った結界である事、それをソーラは理解した。

「カカカ、儂の結界を壊せるのは、守護者か勇者だけだと思っとったがのぅ、守護者の仲間たるお嬢さんなら、壊せるのも自明の理かのぅ。」

「だからー、お嬢さんじゃなくて、ソーラだってばー。」

「カカカ、すまんのぅ、おまんくらいの歳の娘子は、お嬢さんなんじゃよ。」

 ソニルが杖を取り出したのを確認して、ソーラは攻撃の為に魔力を練る。

 魔王の配下である、というよりは、元々がグランウィザードの長だった人間、それが魔王の配下となった事で、更に魔力を高めた存在、ならば、今の自分の全力をぶつけたところで、問題はないどころか、丁度良い相手になるだろう、とソーラは感じていた。

 モートの魔力強化の魔法を受けなかった場合での全力、それを出した場合、どちらが勝つのか、それはソーラにとっても未知数だ。

 感じている魔力、であれば、ソーラとソニルは殆ど魔力量に差はない、強いて言えばソーラの方が少し多い程度だろう、ならば、後は練度の問題になってくる。

「行くわよー?」

「カカカ!掛かっておいでなさい。」

 ウィザードとウィッチの戦い、グランウィザードの元長としてソニルが勝つか、それとも精霊の試練を超えて強くなったソーラが勝つか。

 アリナ達も、今までの敵よりもソニルは強い、と感じていた、ダモトスとレビルは、元勇者の仲間、というだけであって、実力に差があったのかと問われると違うと答えるだろうが、ソニルは明確に、グランウィザードという立ち位置にいた、実力を持っているという証明がされている存在だ。

 ソーラがグランの座に到達するだけの実力を持っている、とディンは言っていたが、それでも勝てる相手なのか、と問われるとわからない、と答えるかもしれない、そんな相手だ。


「そうれ!」

「やるわねー!」

 互角の戦い、というよりは少しソニルが手を抜いているだろか、互いにまだまだ余力がある、という勝負をしていた二人だったが、ソニルはさらなる力がソーラにはあるはずだ、と感じていた、それを引き出そうとしているのか、苛烈な魔法攻撃を繰り出す。

「溶岩よ!」

「ほほう、それを扱えるとは、中々のものじゃのぅ!」

 ソーラが大地の底から溶岩を操り、それをソニルにぶつける。

 ソニルは嬉しそうに笑いながら、それを杖を振って真っ二つに割る。

 溶岩の流れ、それを消して、魔力を以てかき消す。

「強いわねー、流石はグランウィッチの長って感じかしらー?」

「カカカ、そう言うおまんも中々のもんじゃがなぁ?グランウィッチにならんかった理由、何てのがあるのかのぅ?」

「そうねー、私は研究所を出た身だからー、グランとかそう言うのに興味が無いのよー。この服だって、着慣れてるし、ある程度身分を証明出来るから、って言う理由で着てるだけだしー。」

「カカカ!そいつはご機嫌な話だのぅ!研究所を捨てて、何を成したいと願ったか、それにのぅ、今ここにおるという事はおまんは守護者の連れ立ちという道を選んだのじゃろう?ソーラ嬢、おまんの意思は固いと見たがのぅ?」

 激しい攻防、お互いに魔力をぶつけ合い、炎や氷といった魔法から、レーザーの様な攻撃魔法から、それに対する防御魔法から、出来る事を全て発揮して戦っていた。

 ソニルはまだ余裕がありそうだったが、アリナ達から見たら、ソーラが若干押されているだろうか、と感じる、事実、グランウィザードの長まで昇りつめたソニルと、グランウィッチとしては新米になるだろうソーラでは、実力に差があるのだろう。

 ただ、精霊の試練を受けているソーラは、負ける気はしていなかった、ソーラがここで負けてしまったら、アリナが魔王を討つか救うか、どちらかになるのだろうが、それが出来なくなってしまう、それはソーラにとっても、嫌な事だった。

『雷鳴よ!』

「ぬ!」

 ソーラが放った一撃、それはソーラが考案した、ソーラのオリジナルの魔法。

 雷鳴を杖の先から放つ大魔法、それなりどころではなく魔力の消費が激しく、修行中のソーラでは二発発動するのが限界だった、大魔法。

 それを、ソニルは警戒していた、ウィザードやウィッチになるにあたって、試験が存在する、それは、自分だけの大魔法という、ある種一代限りの魔法を考案する事、という試験があったからだ。

 それをどの様な形でソーラが発動するか、何を以てしてソーラだけの魔法とするか、それを警戒はしていた、ただソーラは、基本的には炎と氷の属性を使っていた、だから、大魔法もそれに類する魔法だ、とソニルは予想していた。

 それこそがソーラが人生を掛けて張ったブラフ、雷の属性が一番得意だったソーラは、それを隠して炎と氷の属性を連発していた。

 それは、ディンにすら発動をした事が無い、ディンはその魔法自体は知っているかもしれないが、その威力を知らないだろう、それは、ソーラだけに許された魔法だからだ。

「……。決着、のようじゃな。」

「そうねー。奥の手まで使う事になるなんて、思いもしなかったわよー?」

「カカカ、食えないお嬢さんだ、しかし、彼奴を解き放つ為には、それだけのずるがしこさも必要じゃろうて。……。儂の役割はここで仕舞いじゃて……、のぅ、ソーラ……。」

「……。ソニルは、勇者の仲間として務めをはたしただけでしょう?なら、私は守護者の仲間として、その役割を果たすだけ。ソニルと私の違い、それは勇者の仲間として世界を守るか、守護者の仲間として世界を守るか。……。きっと、魔王を解放して見せるわよー。だから、見守ってて頂戴なー。」

 右半身を雷鳴によって消し飛ばされ、絶命しようとしていたソニルと、ソーラは少しだけ言葉を交わす。

 それは、守護者の仲間として、勇者の仲間を解放する為に必要な事だろう、それをしなければ、この存在達は輪廻に還る事が出来ないのだろう、とソーラは理解していた。

「まったく、この街を維持しながら、私と戦ってー、それで本気を出させるんだから、グランウィザードは怖いのよねー。」

 ソニルがこと切れ、消えると、街の風景が変わっていく。

 それは、かつての栄華を忘れ去り、朽ちた街、ソニルの心象風景を基に生み出されていた、偽りの街。

 しかし、ソニルにとっては、大切な街だったのだろう、それは、デモスとなった勇者の生まれ故郷だったのだから。

 それを忘れたくなかった、忘れ去られてしまった街を、ソニルは記憶として維持していた、魔王の配下となってから数十年、ずっとこの街を維持するだけの魔力を発現し続けていた。

 それをして尚、ソーラと互角ないしソーラよりも強かった、それは相当な実力の持ち主であった証だろう。

「街が……、ソーラ、この街って……。」

「この街はねー、ソニルが魔力で生み出してた、幻の街だったのよー。基盤になる残骸はあったんだろうけどー、でも、ソニルはそれだけ凄い魔法使いだった、って事よねー。」

「良かったのかい?彼にとっては、自分が負けるかもしれないとしても、守りたかった光景だったんだろう?」

「……。良いのよー。ソニルは世界の循環に還った、きっと、またいつか生まれてきて、あの風景を見る事になるんだと思うわー。だから、今はこれで良いのよ。」

「……?分かんねぇけど、結界の起点ってどこだ?」

「こっちねー。」

 残骸となった街の中を歩いて、結界の起点を見つける。

 アリナが魔力を籠めると、結界の起点が破壊される、残りの起点は一つ、この調子であれば、今日中に片が付きそうだ。

 ただ、ディンが何時まで魔物相手に戦っていられるかはわからない、急いで終わらせなければ、ディンと言えど体力が持たないだろう。

 だから、ではないが、次の場所に転移で向かう、太陽が出ている訳ではない為、現在の時間が詳しくわかる訳ではなかったが、体感的には、現在は昼頃だろう。

 決着の時は近い、それはわかっていた、それがどんな結末であれ、終わりは近いのだ、と。

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