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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
四章 向かうべき場所

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二十八話 今のレベル

「良し、ソーラの転送魔法で都市に向かうか。」

「私ので良いのー?」

「良いんだ、この世界の基盤に則ったやり方をするのが、俺の流儀でもあるから。」

 ウェイルを出て都市に行くと言った次の日の朝、朝食を食べ終わった五人は、宿を出て街を散策していた。

 が、それをしている時間もあまりない、ソーラの転送魔法を使って、都市バイドに向かう、それが今日の目的だった。

『転送!』

 転送魔法、それは魔力消費を抑えた、転移魔法の廉価版、この世界の住人の半分程度は使える、そんな魔法だ。

 ただ、移動するのに魔力を消費するのと、魔力の量によって、転送にかかる時間が変わってくる、それは、魔力の強い人間であればあるほど、転送にかかる時間が短くなる、という仕組みだ。

 今のソーラの魔力、それはグランの座を冠する者達に引けを取らない、転送魔法も、一瞬で済む。

 一瞬視界が暗転する、アリナは二度目、ジンは初めての転送魔法に、驚きと期待を持っていた。


「……。わぁ……!」

「すげぇな……。」

 視界が開ける、ちかちかとした光が眩しいと感じた、それに慣れて、都市の入り口から中の様子を見る。

 アリナとジンは感動していた、大きな城壁の様な門があって、その上に見える高層の建物、中から聞こえてくる活気の音、何もかもが経験をした事が無いものばかりだ。

「む、何者。」

「守護者の一行だ。ギルドから話が行ってないか?」

「……。確かに、守護者の一行と言われている者達と容姿は似ているな。だが、偽物だという可能性もある、証拠を見せてもらおうか。」

「そうだな、それは御尤もだ。アリナ、剣を。」

「え、私?」

 都市の入り口の姿にわくわくしていたアリナが、きょとんとした顔を見せる。

 それもそうだ、今までは守護者である証はディンの剣で証明してきた、それをアリナの剣で、と言われたのだから、驚いても無理は無いだろう。

 門番は槍をもって鎧に身を包んだ男性、渋い声からも老齢である事が伺えるが、甲冑によって詳しい容姿は見えない。

 ただ、目元だけはしっかりと出ていて、草原色の瞳が、アリナ達を怪しんでいるのがわかる。

「えっと、これで良いの?」

「これは精霊がその魂を変質させて生み出す武器、ライトリュミエール。代々、守護者に与えられてきた、精霊の武器だ。これで、守護者だって言う証明になるだろう?」

「ふむ……。確かに、伝承にある武器と見た目は同じだな……。守護者はその光から武器を出現させる、それも間違いではない。うむ、通るが良い。お前達を守護者の一行として認めよう。」

 ライトリュミエールを見た門番が、持っている槍をガチャンとならし、門を開ける様に合図を送る。

 ガラガラと鎖が引っ張られる音がして、上に向かって門が開く、その中には、沢山の人間がいる気配があった。

 鋼鉄で作られたであろう固い門、まるで城門の様な様式のそれが開かれて、中に入れと促される。

「さ、行こうか。」

「うん!」

「早く見てぇな!」

「久々だわー?」

「そうだね。」

 五人は門をくぐり、都市の中へと入って行く。

 門が後ろで閉じられる音がする、本来であれば常時解放されているはずだった門だったが、魔物の出現に合わせて閉じられているのだろう、とソーラとモートは考えた。

 この門自体、緊急時に使用されるもので、自分達が都市に居た頃は、解放されていたから、門が閉まっている、という事はそう言う事なのだろう、と。


「素敵ー!」

「なんだかちょっと緊張すんな。俺達って、田舎もんなんだな……。」

 都市には様々な様式の建物が立っていて、木造建築であったり、石畳での建築だったり、煉瓦での建築だったり、様々だ。

 歩いている人間達の服装も、今までジンとアリナは見た事が無い様な洋服を着ている、どちらかというと、ディンの着ているパーカーに近いものだったり、スーツだったり、そういった洋服を着ている人間が多い。

 アリナはまだぎりぎり浮かない程度の格好だが、シャツに半丈のズボンなジンと、ひざ丈のローブを着ているモートは、この街にいたら浮いてしまうだろう。

「懐かしいわねー。こんな所、戻ってくるつもりもなかったんだけどねー。」

「ソーラはこの都市が出身なの?」

「あれ見えるー?一番高い建物、あそこで研究してたんだー。十五歳までだったけど、懐かしいって言えば懐かしいのかしらねー?今更何をしに戻って来たのか、なんていわれそうだわー?」

 ちらほらとソーラの様にくるぶし丈のローブを着ている人間がいて、その人間達は魔法使いだったり、魔導士である事が伺える。

 魔導士の正装、それがソーラの着ているローブであり、研究者である証でもある。

「ローブの色って結構違うんだな?」

「そうねー。ウィザードは緑、ウィッチは黄色、魔導士は青、魔法使いは赤って言うのが決まり事だからー。グランになると、黒になるのよー?」

 ローブの色の違い、それは階級の違いによるものだ、とソーラは解説をする。

 現在アリナ達の目に入っているのは、青と赤色のローブの魔法使いだけ、つまり、下級である魔法使い、そして中級に当たる魔導士が、主にこのあたりで生活をしている、というのがわかる。

 そもそもウィッチやウィザードレベルになると、研究棟を出ること自体が稀で、だからこそ、ソーラは視線を感じていた。

 魔導士や魔法使い達は、都市の中でも下町に当たるこの場所で、ウィッチを見る事になるとは思っていなかったのだろう、視線が痛い、とでも言えば良いのだろうか、そう言った類の視線を感じる。

 それはモートも同じで、ひざ丈の白いローブというのは、精霊にとっての正装だ、だから、こんな所にウィッチと精霊がいる、そして見慣れない魔力を持っているアリナとディンに、対外的にはまだ魔力を発露していないジンが組み合わさっている、それは異常事態以外の何事でもないのだろう。

 ひそひそと遠巻きに話をしている声が聞こえる、ただ、アリナとジンは都市の様子に感動していて、それを聞いていない様子だった。

「さ、取り合えずギルドに行こう。情報もそうだけど、勇者が集まってる可能性が一番高いのはそこだからな。」

「でも、ウェイルには勇者はいなかったよ?」

「あそこはまだ田舎な方だからな。駆け出しの勇者がいるかいないか、って言う感じなんだろう。」

 視線を感じながら、それを気にしない様に努めて、ギルドの方に向かう五人。

 アリナとジンは、これはなんでどれは何で、と興味が尽きない様子で、きらきらとした目をしながら街並みを見ていた。


 カランカラン

「いらっしゃい、今は勇者は待機命令が出ているよ?」

「俺達は守護者だ、待機命令の範疇に入ってないよ、マスター。」

「……。いやはや、情報には聞いていたが、まさか本当に守護者が……。」

 街はずれのギルドには、熟達していると伺える勇者の一行や、それに連なる者達が待機していた。

 視線を感じる、それは、ギルドの長の言葉を聞いて、自分達が活動を禁じられている野にも関わらず、その者達だけは活動する事を許されている、その守護者というのが、どんな人間達なのかを確認したかったのだろう。

「あんた達が守護者だってのか?随分とまあ、貧相な連中だな。」

「んだと!?」

 その中の一人、ソーラは覚えていた、出会った頃に比べれば少し老けて、パッと見の印象は変わっているが、魔力の回路をよく覚えていた、ソーラが勇者の仲間になりたいと志願して、このギルドに初めて足を運んだ時に、ウィッチなんて扱いに困る奴を誰が仲間にするか、と言い放った勇者だ。

 鎧は軽装で、大振りの剣を背中に背負った勇者、その名をコルド。

「あらー、あの時のー!随分と老けたわねー?相変わらず、リーダー気取りなのかしらー?」

「あん?……、その面覚えてるぞ?確か、ウィッチの腐った女だったな。」

「腐ってるのはどっちかしらねー?私は今守護者の仲間として戦ってるけど、貴方は何も出来ないんでしょー?」

 珍しくソーラが喧嘩腰、と言うか、言葉が強いと感じる三人、ディンは、その言葉の強さの原因を覚えていた、だから驚かなかったが、特に付き合いの長いモートは驚いている。

「ソーラ、そんな事を言っちゃ……。」

「良いのよー。この人、私の事散々馬鹿にしてくれたからねー?昔の事を根に持ってるつもりはないけどー。でも、仲間の事まで言われたら、怒るでしょー?」

「はん、魔力も持たねぇガキが仲間だってのか?こんな雑魚が守護者だって?信じらんねぇな!」

 ギルドには十組程度の勇者のパーティがいて、大体はコルドに同調していた、特にジンに関しては、対外的に魔力を発露していない、という事実もあって、そんな人間が守護者として活動していて、自分達が活動を禁止されている事に、鬱憤が溜まっているのだろう。

 中には喧嘩をするべきではない、という顔をしている者もいたが、コルドの発言力が高いのか、黙って見守っていた。

「なら、戦ってみたらどうだ?俺達としては、勇者の実力とアリナ達の実力が何処まで離れてるのか、それを確認するのは有難い話だ。それでアリナ達が勝ったら、君も文句は無いだろう?」

「ちっ!生意気なガキだ!良いだろう!野郎ども!」

「おう!」

 コルドのパーティ、勇者と魔法使い、そして戦士という三人組のパーティが、街はずれの修錬場に向かう。

 それを追って、ディン達も修錬場に向かう、その道中で、アリナは不安を感じていた。

「ねぇディン、私達の力って、人間相手に使って良い物なの?」

「ある程度、ならいいんだよ。本人達を納得させる為にも、必要な事だからな。」

 静かに確認を取るアリナ、ディンが良いと言うのであれば、良いのだろうが、しかし、人間を守る為に身に着けてきた力を、人間相手に使う、という事に抵抗がある様子だ。

 しかし、自分達の実力を知らなければならないのも確かだ、と考えを纏め、コルド達の後をついて行く。


「さ、どう料理してやろうか!」

「モート、身体強化は無しだ。」

「えっと、わかったよ、ディン。」

 修錬場には、他の勇者パーティもいて、守護者がなんだと話を聞いていたからか、見物客が多い。

 そんな中で、アリナとジン、ソーラだけで戦う、それは初めての経験だ。

 ディンが、モートには身体強化などの魔法を使わない様に、と釘をさして、ぴりついた空気の中アリナ達は武器を構える。

「死にやがれ!」

「来やがれ!」

 コルドの一撃、普通のモンスターであれば、一撃で倒せると豪語しているだけの事はある一撃、大振りの剣による攻撃を、まずはジンが受ける。

「……?」

 軽い、攻撃が軽い、そう感じた。

 ジンは、ディンとの修行の中で、もっと強い攻撃を受け流していたり、正面から受けていた。 

 だから、なのか、コルドの攻撃が軽いと感じる、これでは魔物に太刀打ちは出来ないだろう、と即座に認識できてしまう程度に、その攻撃は軽かった。

「てめぇ!」

「私が相手だよ!」

 コルドのパーティの戦士が横から攻撃を仕掛けてくる、それをアリナが受ける。

 アリナも、勇者の実力はもっともっと高いと感じていた為、予想以上に軽い攻撃に驚いていた。

「私達もやるー?」

「……、断る。」

「あらー、賢明な判断ねー。」

 コルドとジン、戦士とアリナが剣を交えている間、魔法使いは何をしていたかと言うと、それを眺めていた。

 ソーラが戦うかと聞くが、冷静に返してくる、それは、ソーラの実力を測って、ウィッチであるソーラと魔法使いである自分の間では、差がありすぎると感じたのだろう。

 ソーラが申し出た当時にはいなかった顔だったが、魔法使いはパーティの頭脳、と呼ばれる立ち位置にいる事が多く、賢いだけではやっていけない、少しずるがしこい程度出ないと務まらない、とソーラは考えていた、だから、この魔法使いの考えはよくわかる、と何も手を出さずにいた。


「はぁ、はぁ……。てめぇ……!」

「魔力も持たねぇガキに負けた気分はどうだ?って言っても、俺達まだ全力じゃねぇけど。」

「兄貴……!こいつら……、てぇ抜いてますぜ……!」

「ちっ……!引き上げ、だ……!」

 五分と持たなかった、それはディンの予想通りの結果だった。

 前回の時間軸では、もう少し拮抗していたのだが、それを踏まえて修行をしていた為、それ以上に実力差が生まれていた様子だ。

「あの人達、勇者の中では強いの?」

「中程度、ってところだな。街はずれのギルドではでかい顔をしてるけど、中心部に行ったら、もう少し骨のある連中がいるはずだ。」

 呼吸一つ乱さずに剣をしまったアリナは、あの程度で勇者が務まるのか、と感じていた、モンスターと戦った事はない、アリナは魔物としか戦った事はなかったが、確かに、あの実力では魔物相手には太刀打ち出来ないだろう、と。

「じゃあよ、中心部に行きゃ、もっとつえぇやつと修行出来るって事か?」

「そうなるな。モートの身体強化を使うか使わないか、程度のレベルの人間はまだまだたくさんいる、その人間達相手に、身体強化を使わずに勝つ事、それが当面の目標だな。」

「勇者の中でも、魔王討伐に志願するレベルの勇者達、だね?確かに、今のアリナ達では、そのレベルの勇者達には勝てないかもしれないね。でも、彼もここら辺では有名な勇者だったはずだよ?あんなにあっさりと終わるとは思っていなかったな。」

「それだけアリナ達が強くなってる、って事だな。知らずのうちかもしれないけど、それだけの能力を持ってる、って事だ。」

 ディンは、この世界の勇者のトップレベルの人間相手には、まだ身体強化は必要だろうと感じていた、ただ、コルドレベルでは、アリナ達の修行の相手にもならない、それを改めて確認した、それで満足した様子だ。

「それじゃ、今日は宿を取ろう。明日、中心部のギルドに行って、もう少し強い勇者と組み手をする事になるかな。」

 ディンの音頭で五人は宿へ向かう、その道中にまた視線を感じていたが、それよりも、今現在のレベルを確認出来て良かった、と安心しながら、宿に向かった。

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