表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
四章 向かうべき場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/58

二十七話 都市へ行く準備

「そろそろ都市の方に移動するか。移動して、勇者と修行をしてみるのもありかもしれないな。」

「え?ディンとの修行はお終いって事?」

「いいや、そう言う事じゃない、まずはこの世界の基準を知っておいた方が良いと思ってな。俺と修行を続けるのも構わないけど、この世界の勇者、強さの基準点と考えて、祖の基準点とどれだけ近づいてるか、って言うのは、アリナ達にとっても自信に繋がると思うんだ。」

 ウェイルに来てから一か月、修行に明け暮れていた四人だったが、ディンの提案で都市に向かう事になりそうだ、という感覚になっていた。

 確かに、守護者の頂点たるディンとの修行で感覚が狂っているかもしれない、だとしたら、現在時点での強さを測るのには、勇者に相手をしてもらうのが正しいだろう、と。

 魔王に対応できるだけの力を持っているか、それを確認する為にも、勇者との修行は正しい事だろう、とも。

「じゃあ、すぐ行くんか?」

「明日にしようか、今日は各自休憩だ。」

「はーい、わかったわー。」

 修錬場を出て、宿に戻る五人。

 この世界においては、守護者というのは絶対的なアドバンテージを持っている、だから、宿の代金などはかからない、ディンはそこが変わっていないかを心配していたが、そこのあたりは変わっていない様子だった。

 守護者の証明、と言われると難しいのだが、ディンが竜神剣を出せば、基本的に信頼される、それだけ竜神剣は特別な剣であり、特別な存在だ、という事が伺える。

 竜神剣と同じ形の剣の鋳造は許されていない、それがこの世界全体の掟であり、それは精霊であっても変わらない、人間にとっては上位存在である精霊でさえ、竜神の定めた掟には従っている、それだけ、竜神の存在というのは畏怖されていて、崇める対象であると同時に、恐怖の対象でもあるのだろう。

 その中でも王、竜神の長がやってきている、それは各地のギルドにもう情報は回っていて、ディンの容姿やアリナ達の事も、共有されているだろう。

 それはディン達にとっては有難い事だ、この世界では守護者は知られている存在、ディンのいたセスティアと違い、正体がばれた所でなんの問題にもならない。

「都市って、どんなところなんだろう?」

「そうだね……。高いビルや、発達した魔法の文明って言えば良いのかな。僕達にとっては当たり前の魔法が使われてるけど、アリナは驚くかもしれないね。」

「楽しみだね!」

「そだな、俺も都市なんて行った事ねぇし、楽しみだわ。」

 ジンとアリナは、都市がどんな場所で、なにがあるのかを想像している。

 ソーラとモートは都市に行った事があるからか、特にソーラは、あの環境にいったん戻るのか、と少しげんなりしている様子さえ見受けられる。

 モートは、都市での精霊の扱いに関して問題があったのか、それとも単に都市に良い思い出がないだけか、あまり良い顔はしなかった、ただ、ディンがそれを必要だ、というのなら行く、というスタンスの様子だ。

「まあ、明日になったらわかるさ。今日はゆっくりと休むと良い。」

「はーい!」

 修錬場を出て、夕暮れの中を歩いて行く。

 この景色を、アリナは忘れない気がしていた、ふと感じた事、こうして皆で歩いて、夕暮れの道を帰る、そんな景色を、忘れない様な気がしていた。

 何故か、と問われるとわからない、が正解なのだが、ふと、そんな事をアリナは感じていた。


「夕食は何だろうね?」

「さて、何だろうな。」

 夕食までは自由時間、という話をして、アリナとソーラは大浴場に入っている、ディンとモートは紅茶を飲みながら話をしていて、ジンは部屋で少し寝ていた。

「……。ディン、都市に行った場合、アリナの事がばれてしまう可能性もあるんじゃないかな?」

「ん、そうだな。その可能性は無くはない。」

「なら、危険なんじゃないかな?アリナが混血だとばれてしまったら、守護者だったとしても、糾弾を避ける事は出来ない、僕はそう思えて仕方がないんだ。」

 モートが感じている危険、それはアリナの出自の事に関して、だ。

 アリナが混血である事は、都市にいるウィッチやウィザード、グランの座にいる者達なら、簡単に理解してしまうだろう。

 それを危惧していた、それが基になって、アリナが糾弾の対象になってしまう事、それをモートは危険だと言っているのだ。

「……。大丈夫だ、とだけ言っておこうかな。多分だけど、守護者として活動をしている限り、アリナが糾弾の対象になる事は無い、それは大丈夫だと思う。ウィッチ達も馬鹿じゃない、アリナが死んでしまったら、世界を守る者がいなくなってしまう、それを避ける為にも、自分達の研究の為にも、アリナの正体を暴こうとはしないだろうな。」

「だと良いんだけれど……。でも、それは逆に言えば、アリナが守護者としての役目を終えた瞬間が危険なんじゃないかい?」

「その時には、アリナは隠居する事になるだろうな。それは避けられない、精霊と人間の混血である事、それがばれてしまったら、アリナは街や都市では生きていけないだろう。でも、アリナは生きる術を知ってる、お母さんから教えてもらった生きる術、それを基に森で生きていくんだと思うな。」

 それは、希望的観測だ。

 ディンは、一度アリナを失っている、前回の時間軸で、アリナは守護者としての役割を果たした後に、人間の手によって殺された。

 それが起こらない様に手を打っているには打っているが、それが実るとも限らない、どれが正解で、どれが間違いで、どれが正しく、どれが過ちか、それをディン自身知ってはいない。

 だから、ではないが、希望的観測に任せる他ない、と感じていた、それが実らなかった場合、アリナはまた、人間の手で殺されるだろう。

 ただ、それは人間の営み、人間の営みに、ディンは介入を許されていない、それをしてしまったら、人間の運命を捻じ曲げてしまう事になる、本来の未来を迎えず、間違った未来へと進んでしまう可能性がある、だから、ディンはそれ以上の事が出来ない。

「もしも、人間達によってアリナが殺されてしまったら……。そうしたら、世界を守る事は出来るのかい?」

「出来ない、とだけ言っておこうか。アリナ抜きで、世界を守る事は出来ない。守護者って言うのは、必要である当時に、必然でもあるんだ。先代の守護者ドーガンの孫であるアリナが選ばれた理由も、アリナが精霊と人間の混血として産まれた事も、全ては意味がある。代々、人間から選ばれていたはずの守護者、その守護者が、五百年前精霊から選出された事、それも意味がある、とは思うな。」

 本来、守護者は人間から選ばれる、人間の器に守護者の魂が宿り、そして生まれ、守護者足り得る人生を送る、それがこの世界群の決まり事だ。

 それが、先代の守護者の時から変わった、それが何故かと問われると、ディンも明確な答えは持っていないが、しかし、それには意味がある、とは考えていた。

 それはモートも変わらない、モートも、代々守護者は人間から選出されていた事は知っていた、ドーガンが守護者になったのは、何かの間違いだった、とまで精霊の中では言われていた。

 しかし、モートはそう感じていなかった、ドーガンが選ばれたのには、明確に意味がある、と感じていた、その孫であるアリナが選ばれた事も、何かの意味や意思が介在しているのではないか、と感じていた。

「ディンは、何か知っているのかな?この世界では五百年前、ディンの過ごしていた世界では何が起こっていたのか、とか。」

「この世界での五百年前は、俺のいる世界では千年前になるな。……。一つあるとしたら、デインの事だろうな。」

「デイン?」

「俺にとっての先代の守護者、セスティアを魔物の危機から救った守護者、その名をデイン。千年前に世界を救って、そして陰陽師と呼ばれる術師達によって封印された存在、それがデインだ。その事と、先代の守護者ドーガンの事では、時系列的には重なるかな。」

「じゃあ、そのデインという竜神様の事がきっかけで、世界の仕組みが変わった、って言う事かな?」

「かもしれない、の話だから、眉唾だと思ってくれて構わないよ。ただ、あるとしたらデインの事だろうな、って言う程度の認識だから。俺だって万能じゃない、わからないことだらけだ。希望的観測を持つ事もある、基本的にワーストケースに備えてるってだけで、希望を持たない訳じゃないんだ。」

 デイン、現在ではセスティアの守護者の一人であり、竜神王の血族、そしてハーフヒューマンと呼ばれる、ディンの叔父であり兄である竜神。

 デインは、千年前にセスティアを守護した竜神であり、本来であれば竜神王しか立ち入る事を許されていないセスティアに立ち入る事を許された、数少ない竜神でもある。

 勿論、例外はある、ディンが使える召喚術、契約召喚という魔法で、ディセントと呼ばれる世界に遺っている竜神達を使役する事は出来る、ただ、基本的にセスティアに居られる竜神は、竜神王だけだ、という話になってくる。

 それが、何故か千年前にデインはセスティアで存在を許されていた、守護者の代理だ、と本人は言っていたが、それならば、千年前に退去をしているはずだ、セスティアに残って封印される、という流れにはならないだろう、と。

 それは本人もわかっていないと言っていた、本人がわからない以上、誰にもわからない事なのかも知れない、ただ、デインは何かを知っている、とディンは考えていた、デインは、知っていて何かを黙っているのだ、と。

「デインがどうしてセスティアに残ったのか、残れたのか、それと同じ時期に、本来であれば人間からしか選出されない守護者に、精霊であるドーガンが選ばれた。それは、偶然じゃない、とは思ってるよ。」

「偶然ではなく、必然だった、という可能性がある、という事だね?そのデインという竜神様は、今はどうしているんだい?」

「そうだな、それ位は言っても構わないか。デインは、今は光に帰還してるよ。つい最近の話だ、闇にとらわれてたデインを、やっと助けられたんだよ。」

 デインの事を聞いて、モートは驚いている。

 竜神が闇に捕われる、という事実が、受け入れがたいのだろう、人間を滅ぼすという選択を取ろうとした竜神達がいた事にも驚いたが、それ以上に、竜神ですら闇に捕われる事がある、という事実に驚いていた。

 ディンにとってそれは当たり前の事でも、光の象徴であり、化身とも言える竜神が、闇に堕ちるというのが、信じられないのだろう。

「じゃあ、デインという竜神様は、闇に堕ちていたのかい?」

「そうだな。千年前、世界中の人々の闇を背負って、その結果、闇に堕ちかけた所で封印される事を選んだ。結果として、千年の時を経て、闇に堕ちたんだ。……。竜神が闇に堕ちる、それは衝撃的かもしれないな。確かにそうだ、それは衝撃的な事実だろうな。でも、そうなってしまう理由については、俺もわからなくはないんだ。」

「どういう事なんだい?ディンも闇に堕ちる可能性があった、って言う事なのかな?」

「そうじゃないんだけどな。世界中の闇を一手に引き受けて、己の中に封じ込めて、それで魔物を消滅させた、それがデインの過去だ。だから、それだけの闇の濁流の中にいたら、闇に堕ちてしまったとしても、おかしくはないんだろう、って言う話だ。」

 正確に言えば、ディンも一度闇に吞まれそうになった事があった。

 何百年か前、ディンが世界軸を渡り、そして目を覚ましてから少し経った時の話だ。

 世界の業、というものをその身に宿してしまっていたディンは、闇に呑まれかけた事があった。

 それを助けたのは、今では生きているが、一度死んでしまった悠輔であり、陰陽王と呼ばれるだけの素質をもって生まれた存在だからこそ、ディンが背負った業を何とか出来た、という経緯がある。

「……。デインは、優しすぎたんだ。だから、闇と戦う事じゃなくて、闇を背負う事を選択した。俺には出来ない事、だと思ってるよ。」

「優しさは時に残酷な結果を生み出す、その結果が、その竜神様だった、という事だね?」

「そうなるな。」

 デインは、今でこそ笑顔でいる、今でこそ、光に帰還して、今を生きている。

 ただ、デインは一度死んでいる、それは、以前の時間軸で、ディンの兄弟だった子供達を殺めた後に、ディンによって斬られた、という結果だ。

 それを変えたくて、ディンは時間を逆行した、結果として、それは世界軸の移動になってしまったのだが、今では父として生きている、皆が生きている、ディンにとっては、それだけで十分だった、それだけの為に世界を巻き戻そうとしたのだから、それを甘んじて受け入れなければならない、と感じていた。

 たとえ、二度と兄と呼ばれる日が来なかったとしても、父と認識されて、そのまま子供達が逝ったとしても、ディンはそれでも尚、守りたいと願ったのだ。

「……。モートは、この戦いが終わったらどうするつもりなんだ?って言っても、まだまだ終わるわけでもないけどさ。」

「そうだね……。もしも無事に生き残れたら、そうだね……。あの街に戻るというのもありだけれど、世界を旅して回ろうかなと思ってるよ。ソーラ達が逝ってしまった後、大切な友人達を送った後の話、だけれどね。」

「そっか、それは寂しいな。」

 精霊と竜神、生きる年数、寿命は違えど、人間よりは長く生きる種族同士、感じる事はあるのだろう。

 モートは精霊の湖畔に戻るつもりはない、そして、ディンも竜神達の住まう世界に戻るつもりはない。

 お互い、別れを告げる日が来るのだろう、と。

 ただ、それは今ではない、今は、世界を守らなければならない、それもわかっていた。

 モートは、いつか精霊と人間の垣根を超えた、仲介者になりたいと願っていた、アリサやアリナの様な、迫害される人種をなくしたい、と願っていた。

 ただ、それは今ではない、今は、世界を守る事に注力しなければ、世界を守る事など出来ない、それは理解していた。

 ただ、いつか、きっといつか、と願っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ