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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
三章 戦いの始まり

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第十六話 初めての戦い

「何だあれは!?モンスターじゃないのか!?勇者は何をしてるんだ!?」

「ディン!」

「あれが魔物だ、アリナ達の敵、世界の負の思念、それがあれだ。モンスターとは別種の存在、それが魔物だ。」

「戦える、かな……。」

「戦うしかない、戦うか、勇者の命を無駄に散らすかどちらかしか、選択肢はないな。」

 旅に出てすぐ、隣街に到着する、という前、街と街を繋ぐ街道を歩いていた五人、その後人の先に、悲鳴が聞こえた。

 それは、人間が魔物に追われている姿、魔物は、四足歩行の獣の様な形をしていて、黒い靄の様なものを纏っている。

 ジンやソーラは見た事があった、獣種と呼ばれるモンスターによく似ていたが、モンスターは黒い靄を発している事はない、だから、あれが魔物だという事は、すぐにわかった。

 魔物、それは本能的に生物を襲う性質がある、それを知っているのは、ディンだけだった。

 だから、街道を歩いていた人間が驚いて、そして襲われそうになっている、アリナ達にはそうとしか見えなかった。

「アリナ!剣だせ!戦うぞ!」

「私も行くよー?」

「わかった!」

 アリナはライトリュミエールを出現させ、ジンとソーラは戦闘態勢に入り、街道の人間と魔物の間に駆け出す。

 怖い、本能的に恐れてしまう、それは、人間として、生物として、正しい感情だろう。

 ただ、戦わなければならない、勇者では太刀打ち出来ない、それがこの世界の理であり、守護者しか、魔物と戦う事は出来ない、それは、この世界がこの世界として成立してから、五千年間変わらない理だ。

 戦うか見殺しにするか、二択しか選択肢は与えられていない、それはアリナ達が重々承知していた。

「来るぞ!構えろ!」

「うん!」

「行くわよー?」

 魔物の数は三十体程、対してアリナ達は五人、数の面では劣勢だ。

 それに加え、ディンは基本的に戦わないと言っていた、自分を戦力として数えられても困る、と言っていた、そして、モートは基本的に回復魔法しか使えないと言っていた、だから、三人で戦わなければならない。

 アリナは、一か月の修行の内容を思い出す、まずは、余裕のあるうちに魔力を膂力に変換し、基礎能力を向上させる。

 ソーラからある程度魔法は教わった、この世界では中級魔法に当たる、エンチャントの魔法を剣に掛ける。

「行くよ!」

「おう!」

「援護は任せてー!」

 アリナとジンが、先陣を切って攻撃を仕掛ける。

 魔物は、何を喋っているのか、どういった声帯をしているのかわからない、奇声と悲鳴の中間の様な音を出しながら、二人に突撃してくる。

「えいやぁ!」

「せい!」

 まずは二体、大剣とブロードソードで斬られた魔物が、霧散する。

「炎よ!」

 そこに、ソーラがすかさず魔法を唱え、杖の先から炎が迸り、魔物を焼いていく。

「まだまだぁ!」

「私も行く!」

 炎によって身動きが取れなくなっている所に、アリナとジンが攻撃を加え、魔物を霧散させていく。

 元になっているのがモンスターだったとしても、これはモンスターではない、と認識していた三人は、躊躇なく敵を屠っていく。

 これが仮にモンスターだったとしたら、それは勇者の役割であり、自分達の役割ではない、と考えていたかもしれないが、しかし、魔物である以上、自分達にしか倒せない。

 だから、ではないが、手心を加えていたら、人間や他の生命に影響を及ぼす、そして、街や都市に被害が出てしまう、それはわかっていた、だから、戦う。

「喰らいやがれ!」

「ジン!そっち!」

「わあった!」

 特に、ジンとソーラは元々レンジャーとウィッチ、卓越した能力の持ち主であったり、そもそもが修行を重ねていた身だ、アリナがついていけるかどうか、ぎりぎりの速度で魔物を倒していく、アリナは、それに置いていかれない様に、と必死に喰らい付く。

「っ……!」

「アリナ!てめぇら!こっちだ!」

「アリナ、一旦引くんだ!僕が治す!」

 アリナが、不意を突かれて獣型の魔物の牙に噛みつかれる、初めて感じる痛み、激痛とまではいかないが、森で過ごしてきたアリナにとっては、感じた事のない痛み。

 左腕を噛まれた、それを庇いながらその魔物を倒し、一旦後ろに下がる。

「癒しよ……。」

 モートが唱える魔法、癒しの魔法は、光を灯し、そしてその魔力によって回復をする魔法、回復魔法の中では初級と呼ばれる魔法だった。

 ただ、モートのそれは精霊魔法と呼ばれる魔法で、人間には使う事が出来ない、と言われている魔法だ。

 ディンなら使えるだろうが、ディンが特例なだけであって、それ以外に基本的例外はない、精霊にのみ扱える魔法、それがこの癒しの魔法だった。

「治った!行ってくる!」

「気を付けて!」

「うん!」

 数秒と経たずにアリナの傷が癒え、アリナが前線に復帰する。

 ジンとソーラによって三割まで減少していた魔物を、アリナも含めた三人で倒しに掛かる。

「これで、最後!」

 アリナが最後の一匹の魔物を倒し、霧散した所で、魔物の気配が消える。

「……。ふー……。」

 そこで緊張の糸が切れたのか、アリナはその場に座りこんでしまう、それだけ緊張していたのだろう。

 ジンとソーラも、魔物を相手にしたのは初めての経験、恐怖はあったのだろう、深くため息をつく。

「アリナ、大丈夫か?」

「ディン……。戦うって、怖いんだね。勇者って、凄いんだ。こんなに怖い事を、当たり前の様にやってるんでしょう?私、頑張れたかな。」

「十分だったよ。初戦でここまで出来た、って言うのは、誇っていい事だと思うな。アリナは素質がある、怖かったとしても、戦える覚悟がある、とも言えるな。」

 剣を持つ手が震えているアリナに、ディンが声をかける。

 ディンは、アリナの持つ素質は知っていた、そして、怖がっていた事もわかっていた、ただ、それでも尚、戦う道を選んだ事を褒めていた。

 守護者だと言われてからたった一か月、一か月で、実戦に使える様に叩き上げた、それは間違いではなかったが、気概、勇気と言うのは、アリナ自身が持っているものだ、と。

 守護者としての素質、それは生まれ持ったものかもしれない、ただ、それを表面化、顕現させたのは、まぎれもなくアリナだ、と。

「ディンは、怖くないの?魔物と戦い続けてるんでしょう?怖いって、思わないの?」

「……。そもそも俺は竜神、皆とは性質が違う存在だ。最初から戦う前提があって、俺達の剣は、闇を癒す軌跡として使うんだ。怖い、って言う感情が無いかと問われたら、想った事はないな。ただ人間としては、怖いと思うのはまっとうな感情だ、それを忌避する必要も、抑え込む必要もない。ただ、人間には勇気がある、守護者足り得る者達には、勇者以上の勇気がある。魔物と言う、未知と戦う勇気、それは、守護者を守護者たらしめる素養だからな。」

「あんなんとずっと戦ってたらよ、参っちまわねぇか?俺だってモンスター相手には戦った事あるけどよ、怖かったぜ?魔物って、なんつーんだ?心臓の底がぞわぞわするってか、そんな感じがすんだよ。」

「そうだねー……。私達は、ある程度戦えるって自分達の事を理解してたから、戦えたけど、確かに、あれは勇者でも倒せないってわかるなー。ディンはずっと、守護者を育てて回ってるんでしょー?怖いと思わないのねー?」

 ジンとソーラも、恐怖という感情と戦いながら、戦闘を行っていた、未知への恐怖、心の底から、悍ましいと感じるその存在と戦う事、それは、勇気がいるのだろう。

 それだけではない、この世界において、の話だが、魔物は普通の攻撃では倒せない、魔物が当たり前の様に存在している世界では、対抗手段として魔物を倒すだけの力を持つ者は一定数いるが、この世界においては、数百年に一度現れる、いわば天変地異の様な存在だ。

 勇者であろうと、それには敵わない、守護者として武器を与えられて、初めて戦うステージに立つ事が出来る、それはこの戦闘でよく理解した、とソーラは感じていた。

「怖いって言う感情は、そもそもが未知の者に対する感情だ、っていう風に俺は教わったな。だから、そもそもが魔物の事を知っていた俺は、恐怖を抱いた事はないんだ。ただ、一人だけ、怖いと思った事がある存在がいたな。」

「ディンでも恐ろしいと感じる事があるのかい?竜神王として、世界を守り続けているのに、恐怖する事があるとは思えないんだけれど。」

「そうだな、本来であれば、俺は恐怖を許されていなかったんだろう。恐怖は剣を震わせる、その軌跡を揺るがす、迷いは、世界を守る事において不要、そう俺は教わっていたから。ただ、それでも怖かった相手はいたんだぞ?今では怖いというより、哀れに思ってる相手だけど、何百年か前、怖いと思った事が一回だけあったな。」

 それは、セスティアにおいて千年前に世界を守ったとされる存在、その名をデイン。

 ディンの叔父であり、兄であるデインは、ディンが唯一恐怖した相手、そして、唯一敗北した相手。

 完全開放を使っていれば勝てたかもしれないが、人間の姿を捨てる決心がついていなかったディンが、唯一その心の迷いで負けた相手、そして、ディンが世界線を渡るきっかけとなった、そんな存在。

 今でも、デインは封印されている、その封印は、いつか解かれるものだ、その時ディンは、もう一度デインと戦わなければならない。

 現在のディンの力、自分自身の力を三割も取り戻していない状態のディンで、勝てる相手なのかどうか、それはディン自身わかっていない、ただ、勝たなければ世界が滅びる、そして、時空超越はもう一度は使えない、それは理解していた。

「……。俺は、勝てるかどうかわからないんだ。その存在に、一度負けてるから。だけど、今度はやり直しは出来ない、だから、勝つか世界が滅ぶか、どちらかしか道は残されてない、とも言えるな。」

「竜神王様でも勝てない相手、なんて想像がつかないよ。私達じゃ、いくら数がいても勝てないんじゃないかな。」

「そうだな、守護者が束になってかかったとしても、一撃で屠られて終わりだろうな。……。俺は勝てるか、勝たなきゃならない。それ以外に、選択肢はないんだからな。そう言う意味では、恐怖って言う感情を持ってる、とも言えるな。」

 アリナは立ち上がり、剣を消してディンの方を見る。

 ディンの怯え、それはきっと、アリナ達では立ち向かえない程の敵なのだろう、アリナ達守護者、数多ある世界の守護者が総出で掛かっても、勝てない相手なのだろう。

 それを知っている、という顔をしているディンは、どこか悲し気な表情をしていた。

 哀れに思っている、その言葉に間違いはないのだろう、ディンは、デインを哀れだと思っていた。

 他者の闇を抱える事で、世界を守った先代の守護者、デインは、千年前、セスティアを魔物の脅威から守った後、生物達の抱えきれない闇を一身に宿し、救済し、そして陰陽師と言う存在に封印された。

 それを知っている、それを知っているから、ディンはデインを憐れんでいるのだろう。

 アリナ達はその事を知らない、デインと言う竜神が闇に堕ちた事も、ディンが一度負けて、世界軸を移動した事も知らない、ただ、ディンにとっての恐怖、それは計り知れない存在によってもたらされるのだろう、という事だけは理解した。

「ディンだって、生きてるんだもんね。怖い事の一個があったって、おかしくは無いと思うな。それがたとえ竜神王様だったとしても、世界を脅威から守り続けている、凄い人だったとしても、怖いって言う感情は、何処かにあるんじゃないかな。」

「……。そうだな。俺にも怖いって言う感情自体はある、ただ、魔物に対して感じる感情じゃない、ってだけの話だ。」

「ディンが怖がる相手、それはどれだけの強さを持っているのか、僕達では計り知れないんだろうね。ただ、この世界において、ディンに怖いものはない、って言う認識なのかな?魔王デモスだって、ディンには敵わないんだろう?」

「そうだな、この世界群の誰よりも、俺は強くなきゃいけない。それが、竜神王としての宿命、宿業、枷、そして使命だからな。俺は誰よりも強い、それを覆す事になったら、世界が滅ぶだけだ。さ、次の街に行こう、まだまだ旅は始まったばっかりなんだ。アリナには、色んな人間を見てもらわないと。人間を知らずに世界を守る、それは危うい事だとも言えるからな。」

「うん。私は知りたい、人間がどんな存在で、どんな事を考えてて、守りたいと願える存在なのか、それを知りたい。」

 魔物の気配は今の所しない、という事は、ディン達の脅威足り得る存在は現在はいない、とも言える。

 アリナは、ディンが人間を疎いと言った事を覚えている、ただ、それでも人間を守る道を選んだ、それも知っている。

 だから、知りたい。

 人間を、守る価値がある存在なのかどうか、人間は、守るに値する存在なのか、そして、世界は、美しいのか。

 ディンが見ている世界、それを知りたいとは願えない、ディンと自分達では、見ている世界が違いすぎる。

 ただ、知りたいと願う、それは、ディンに恋をしているからかもしれない。

 ただ、それだけではない、世界を守る者と、世界群を守る者、それぞれ意味合いは違えど、同じ守護者として、知りたいと願った。

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