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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
二章 街並みの中で

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第十三話 竜神王とは

「ディンってよ、竜神王様なんだろ?色んな世界を回って、って言ってたけど、それって元居た世界の時間とか、そー言うのってどーなってんだ?」

「ん?そうだな。俺の使う魔法には、世界を超える魔法がある、それを使って世界を移動してるわけだけど、そうだな、ある程度時間には融通が効く魔法、って言えば良いのかな、タイムラグはあるけど、でもどれだけ過ごしてても一日経過するかしないか、位の感覚だな。」

「竜神様の扱う魔法、それは僕達とは全く違うものだ、って言うのは聞いた事があるけれど、そうなのかい?他の魔法は、どういった魔法になるのかな?」

「言っていい範囲であれば、まず炎の魔法は戦う為の物じゃない、って言う所かな。」

 アリナとソーラが話をして、夕食の席に戻ってきた後、ジンがディンに質問をして、ディンがそれに答えると、モートが興味深げに話に入ってきた。

 精霊としてはまだまだ若輩者だったモートだが、魔法に対する造詣や、探求心と言うのは、ソーラと同等か、それより少し少ない程度には、強いのだろう。

「炎って、一番か二番目に火力に直結する魔法だと思ってたけどー、竜神様の使う魔法では違うのー?」

「俺達の使う炎って言うのは、浄化とか、安らぎの意味が強いんだよ。竜神術、竜炎。それは、死者の魂に安らぎと安息を与えて、そしてその欠片を宝玉に変える、そう言う魔法なんだよ。」

「死者に安らぎを与える魔法……。それは、どういう事なんだろう?たとえば、死者をどうしたいのか、によって、安らぎの意味合いが変わってくると思うんだけれど……。」

「それはそうだな、明言されてないと思う。ただ、俺が思うに、魂の循環から外す事、だと思ってるよ。これ以上転生をしない、転生した先で、魂の尊厳が傷つけられる事が無い様に、って言う魔法だと思ってる。そう言う事をする、所謂儀式だともな。」

「竜神様らしいね、そう言う、優しい所って言うか、本当に世界の為に存在するって言う理由が、そう言う所に出てるんじゃないかな。」

 竜神術、竜炎。

 それは、魂を輪廻の循環から外し、安らぎを与える魔法。

 その過程として、魂の欠片である宝玉が生まれる、ディンは、その宝玉を大切に持っていた。

 今この世界に持ってきているか、と聞かれると否なのだが、普段はディンだけがアクセス出来る世界の隙間にしまってある、必要な時、それを持ち出す事はあっても、基本的にそれをする事はない。

 ディンは一度、家族を失っている、その時に、真竜炎と言う、竜炎の上位互換の魔法を使い、いくつもの魂を一つの宝玉として、そして世界を渡った。

 その結果、なのか、それともこの世界線では陰陽王の子が現れるという事が無かったからなのか、悠輔はこの世界には生まれず、代わりに竜太という子供が、ディンの次代の竜神王ディンを名乗るべく、この世界に産み落とされた、リュートという竜神と、魂を一つに融合して存在している。

 竜神王はディンと言う名前の竜神にのみ許される呼称、だから、歴代の竜神王は須らくディンと言う名なのだが、十代目である現在のディンは、ディン・L・アストレフと言う名があった、それは、何かの違いかと問われると、ディンが竜神と人間の混血である事に起因する事だろう。

「俺も混血の身だからな、使えない魔法があったり、そもそも制限があったりする、それこそ、本気の本気って言われると、どういう時に使うかを、しっかりと吟味しないといけないな。」

「それはどうしてだい?混血である事で、何か不都合な事があるのかな?」

「そうだな……。俺と父さん、そしてデイン、竜太は、竜神と人間の混血として生まれた、俺に関してはクォーター、俺の息子の竜太に関してはハーフクォーター、それは、竜神としての力を行使し続けると、竜に変貌してしまう枷がある。元来、竜神は人と竜、二つの姿を持つ存在だ。だけど、俺達混血は、竜になる事が出来ない、なるとしたら、力を行使しすぎた結果、人間としての肉体が耐えられなくなった結果であって、人間に戻る事は出来なくなってしまう。だから、俺達は能力を普段は封印してるんだ。」

「それで、ディンの魔力は私達とそう変わらないって、感じたんだー。能力を封印してるのなら、それも納得って言うか、なんていうんだろー?」

「そうだね、ディンの魔力は、感じる限りでは僕やソーラ、アリナとそう変わらない、でも、それだけじゃ、世界を超えるだけの力にはなりえない、なっているのなら、そもそも僕達が世界を渡れなくちゃおかしい。……。ディンは、どれ位本気を出したら人間ではいられなくなるんだい?」

「わからないんだ。今は、刻印は大体体の半分を覆ってる、だから、後どれ位か、と問われると、わからないんだ。」

 そう言えば、ディンは刻印を見せた事が無かったな、と思い出し、魔力で左腕の服の裾をずらし、竜神の刻印を四人に見せる。

 それは、人間と竜神の混血である証、純血の竜神には現れず、そして、人間でいられるリミットを示した、そんな紋章だ。

 形としては、一匹の竜が火を噴いていて、その炎の線が肘の方にも広がっている、と言った様子だ。

 これは、ディンをディンたらしめる刻印でもあり、そして、人間でいられるリミットを表した刻印でもあり、ディンにとっては、必要であり、悲しいものだった。

「これが、竜神と人間の混血の証なの?」

「そうだな、そう言う事になるか。俺とデイン、そして父さん、竜太、悠輔の体には、同じ紋様が浮かんでる、それは、それぞれが人間でいられる限界値を表してる、まあ、竜太に関しては、魂自体が人間と竜神の融合体だから、どうなるかはわからないけどな。」

 夕食の牛のソテーを食べながら、ディンは息子である竜太の事を想う。

 竜太、彼は、そもそもが生まれるはずではなかった、陰陽王の生まれ変わりと言われる、悠輔の代わりに生まれた存在だ。

 何故そうなったのか、世界軸が違い、そして他の弟達はそのまま生まれたにも関わらず、悠輔だけが生まれなかった理由、それをディンは知らない。

 代わりに生まれた存在である竜太は、陰陽師の血族である事に間違いはないが、陰陽王の生まれ変わりではなかった、それもわからない事だ。

「って言う事はー、人間と竜神様の混血と、その融合体では、違うって事ー?」

「そうなるな。細かい違いになるけど、俺の場合は、肉体を持たずに生まれたから、依り代となる少年の中で眠ってた、そして俺の息子である竜太は、そもそもが竜神と人間の魂を融合した存在だから、俺に切り替わらなくても力を行使出来る、って感じだな。俺は、俺が切り替われなかったせいで、依り代だった悠輔を失った、だから、そうなって欲しくなくて、人間である竜太と、竜神であるリュートの魂を融合させた、って言う経緯があるんだよ。」

「ん-っと、分かんねぇけど、結局どっちがつえぇんだ?」

「そうだな、基本的な能力としてなら、俺の方が段違いに強い、ただ、潜在能力を全て使いこなせた場合、俺は竜太に勝てないだろうな。俺の完全開放、それはタイムリミットがあるし、そもそもの能力として、竜太の方が潜在能力は高いから。ただ、それを使いこなすだけの心構えと下地が出来てない現状では、俺の方が強い、って感じだ。」

 ジンは、難しい事は自分にはわからない、と、竜神である竜太とディンではどちらが強いのか、という疑問を聞いた。

 その結果はご覧の通り、ディンの中では結論が出ていたが、ジンやソーラにとっては、一介の竜神が、竜神王の息子だったとしても、竜神王を超え得るポテンシャルを持っている事、それが驚きだった様子だ。

 ソーラにとっては、魔導とは血縁などは基本的に関係ない、自分がグランの名を冠する二人から生まれただけで、性質としては人間の範疇であれば、魔力の総量や、出力に関する強さは、遺伝ではなく個人の問題だ、とは知っていたが、それが竜神となると、王であるディンより強い存在がいる、というのが驚きだった様子だ。

「じゃあ、十一代目になるその子は、ディンより強いんだ。」

「今のところは俺の方が強いけどな。潜在能力をフルで使いこなした時の竜太には、俺が完全開放をした所で勝てるかどうか、と言われると、自信がないな。一度、リミッターが外れた状態の竜太と戦った事があるけど、その時、人生で二度目の完全開放をした位だったからな。あの時の竜太は、正気を失ってた、本能のままにって言えば良いのか、理性を失ってた状態だったから、まだ何とかなったけど、あれが理性がある状態だったら、俺は勝ち目がない。」

「凄いんだね、ディンの息子さんは。ただ、理性を保っていられないって事は、使いこなせていないと同義、でもあるのかな。であれば、今はディンが表立って動いてるのも、納得かな。」

 アリナは、ディンより強い存在、というのが信じられなかった、ディンが言っていた、ディンは、五段階に分けて能力を封印していて、修行をつけている際は、漏れ出た魔力を膂力に変えている、と。

 だから、その状態でもアリナやジンより何段階か上手なディンを超える存在、というのは信じられないのだろう。

 ディンの完全開放、それは、ディンが人間体でいられる時間を削り、人間としての存在証明を失う代わりに、人間の姿を失う代償があって、初めて使える究極の状態。

 その状態を見た事はない、見た事はないのだが、先代の竜神王が世界を幾千に分けた、という伝承が残っている事から、ディンもそれをするだけの力を持っている、と認識していた為、それを超え得る力、というのが想像出来ないのだろう。

「九代目竜神王は、その命をもって、世界を幾千に分けた、分け隔て、世界に安寧をもたらした。その世界が、今あるこの世界がその一つである事は知っていたけれど、ディンの息子さんは、それ以上の偉業を成し遂げる可能性がある、という事だね?」

「ポテンシャルだけを見れば、そうなるな。今の俺に、世界分割の大偉業は遂げられない、俺自身、俺の魔力って言うのは、殆どを失っているから。ただ、それでも竜神達よりは強いだろうな、そもそも、今の俺は使っている魔力の回路や様式が違うから。」

「魔力の様式って、ディンに流れてる魔力は感じるよー?竜神様と一緒じゃないのー?」

「そうだな、今の俺は、生命力を魔力に転換する能力と、先代や母さんから受け継いだ魔力を行使してるんだ。だから、俺自身の魔力、それは殆ど使えてない状態だ。竜神は何百万年と生きる種族、だけど、俺はもう、半分位は消費してる、って言う感覚はある。」

 ディンの言葉を聞いて、四人は驚く。

 ディン本来の魔力が失われている、という事実もそうだが、生命力を魔力に転換して使っている、つまり、寿命を前借りして能力を行使している、という事に、驚いている。

 そこまでして守りたいと願う物がある、それはそれで構わないのだろうが、そもそも、生命力を魔力に転換する術、という行為自体が、この世界では例がない。

 前例がない、と言い換える事も出来るだろう、人間の魔法にも、精霊の魔法にも、生命力を魔力に転換する方法は、存在しない。

 と言えば、竜神にはその術があるのか?という問いが出てくるだろうが、竜神の多くも、そんな事をする術を持ち合わせてはいない。

「それは、竜神様固有の魔法って事なのー?この世界じゃ、そんな魔法聞いた事もないよー?」

「いや、竜神固有って言うか、俺固有の能力だな。そもそも俺もそんな力は持ってなかった、ただ、とあるタイミングで教えられてな。俺の祖父に当たる人物、その人が持っていた固有の能力、だとは思うんだけど、生憎とそこまで聞く時間はなくてな。ただ、ある時から使える様になった、そして現在においては、その能力に足して先代達の魔力を借りてる状態、って感じだ。」

 それは、ディンほどの覚悟と決意を持って、初めて発動出来る魔法なのだろう、とソーラとモートは感じていた。

 ジンとアリナは、その性質に驚いていたが、ソーラとモートは、その覚悟に驚いていた。

 並大抵の存在であれば、自分の寿命を削って力を発揮する、という事自体が出来ないだろう、そしてそれを、もう半分は使っている、それも衝撃的だった。

 現在のディンは、その力を知った時と違い、燃費よく能力を引き出す事が出来る様になっている、ただ、それを出来る様になるまで、が長かった。

 そこまでに使ったのが八割、そしてそこから使ったのが二割、と言えば、その違いが大きくわかるだろう。

「ディンって、凄いんだね。世界より家族を守りたいって言ってたけど、立派に世界を守ってるんだもん。私、寿命と引き換えに力を使え、って言われたら、使える自信がないよ。」

「無くたっていいんだ。そんな事を出来る存在は限られてる、あったかもしれない、無かったかもしれない、なんて事を考えてたら、きりがない。皆は、それぞれの力の発動の仕方がある、それぞれの思うやり方がある、それで良いんだ。」

 そんな事を考える必要もなければ、それをするだけの素養もない、ディンは、だからこそこの話をしたのだろう。

 いつか、自分が死んだ時、世界を任せられるだけの存在であってほしい、と願った、その想いから、この話をしたのだろう。

 ディンは、敬ってくれとは一言も言っていない、尊敬されたい、という概念がディンの中には存在しない。

 対等な守護者として、それを育む者として、知っておくべき事と、知るべきではない事、それがあるだけなのだ、それがディンの持論だった。

 異世界について言及されていない世界に行った際には、異世界に関する事は一切言及しない、それが、ディンなりの考えであり、この世界群におけるルールだった。

 知っている者、知らない者、それぞれが存在していて、世界によって伝承が曖昧であり、詳しく知られている世界があれば、何も知らない世界がある、ディンは、それを知っている世界にいるから、異世界の話をする、ただそれだけだった。

 元来竜神が担当しているはずの世界、それを竜神王であるディンが来ている、という理由も、偽る必要性が無いから偽らない、というのがディンのスタンスであり、偽る必要があれば、いくらでも偽る、それも正しいのだろう。

「さ、食べ終わったら今日は寝るんだ。そろそろ魔物が現れてもおかしくない気配がする、悠長に修行を重ねてる場合でもない、それは各自認識しておいてくれ。」

「いよいよ、なんだね……。私、出来るかな。モンスターとも戦った事が無いけど……。」

「きっと出来るよ、アリナ。ここにいる皆は、それが出来るから、ここにいるんだ。」

 もうすぐ魔物が出現する、それは世界を覆う気配で理解していた。

 だから、悠長に修行をしている状態ではいられない、もってあと一週間、目測が外れれば、あと三日と経たずに、魔物は出現し始めるだろう。

 勇者では敵わない、そもそも向かうベクトルが違うのがこの世界の理だ。

 だから、アリナ達にやってもらう他ない、というのが、ディンの出した結論だった。

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