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聖獣達の鎮魂歌外伝~精霊の世界の物語~  作者: 悠介
二章 街並みの中で

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第十話 魔法の修行

「じゃあ、今日から魔法の練習だねー?」

「お願い、ソーラ。」

「わかったー。じゃあ、まずは魔力の流れを見てもらおうかなー。どういう風に魔力が流れてて、どういう風に放出するのかー、そう言うのを見てもらって、実践してもらおうかなー。」

 修錬場に出ていたソーラとアリナ、そしてディンに鍛えて欲しいと願って出てきていた、ディンとジン。

 二組に分かれて、それぞれの修業を始める。

「こうしてねー、武器の先端に魔力をためてー……。」

「こうかな……?」

「そうそうー!アリナは筋が良いねー!」

 まずは、火属性の初級魔法を習得させよう、とソーラがやっている事を、アリナが真似をして、魔力を練る。

 アリナは近接攻撃が主体だろうとソーラは見ていて、それならば武器に魔力を纏わせるのが一番ではないか、と考え、エンチャントの魔法を教えていた。

 ソーラ自身、この魔法は使えるというだけで、近接戦闘が出来るのか、と問われると出来ないが、原理を教える分には問題ない、と判断したのだろう。

 本来、魔力を武器に流す、所謂エンチャントという魔法は、中級程度の魔法に位置するのだが、アリナの武器を見たソーラは、それが初級に値する所まで難易度が下がっている、と見た。

 事実、アリナの武器、ライトリュミエールは、精霊である母アリサの魂を基にしているだけあって、魔力を流すのに適していた。

 魔法使いにとって中級魔法だったとしても、アリナにとっては初級魔法になるだろう、その見立ては間違いではなかった、とソーラは確信していた。

「それをねー、炎の形に変えるんだよー?炎をイメージして、剣に纏わせるんだよー。」

「うーん……、こう、かな……?」

「そうそうー!アリナは本当に筋が良いねー!」

 アリナの剣から炎が少しだけ出てきて、それを最初から出来るのであれば、教えるのも楽だ、とソーラはそれを褒めていた。

 魔法剣、それをどういった風に活用していくか、それはこれからの課題だが、ひとまず魔法が使えないという事はなさそうだ、と。


「そっちだ!」

「どっちだ?」

「くっそ!」

 その横で、ディンがジンに修行をつけていた。

 ジンは人間としては上位に入るだけの膂力を持っている、それは、魔力を本能的に膂力に変える術を身に着けていて、それを知らない内に発露しているからだ。

 ただ、それだけでは魔物には立ち向かえないだろう、魔力を体外的に放出する事は出来ないままなのかもしれないが、ディンとの修行の中で、体内で魔力を増幅する術を身に着けてくれたら、というのがディンの目論見だった。

 まだディンは能力の開放をしていない、僅かな魔力を膂力に変えて、その修行をしている。

 それに追いつけない内は、まだまだ半人前だ、という事になるだろう。

「ディン、早すぎねぇか!?」

「そんな事は無いぞ?まだまだついてこれるはずだ。」

 今やっている修業は、基礎的な身体能力の向上、詰まる所近接戦闘なのだが、ディンは剣すら出していない、ジンの攻撃をひらりはらりと躱し、次の攻撃を誘う、という行動を取っていた。

 まだ魔物は出現していない、それはディンの中ではわかっていたが、その兆候はあった、世界が薄靄に包まれている様な感覚、探知に引っ掛かる世界の状態が、薄靄に掛かった様な状態になる、それが、魔物が現れる兆候だった。

 それが徐々に濃くなってきている、それが一定値を超えた所で、魔物は現れるだろう、というのがディンの経験則で、今の所数十の世界の守護者を育ててきたが、それが間違える事はなかった。

 だから、悠長に構えている場合ではないが、まだ間に合う、それがディンの認識だった。

 現在の皆のレベル、ソーラとモートは実戦でも通じるレベルだが、ジンとアリナはまだそのレベルになっていない、そして、ソーラとモートも、実戦経験が無い、それを補う為にも、それなりに急いで修行をしなければ、それがディンの今の考えだった。


「皆頑張れー。」

 モートは、その様子を眺めながら、自分はどの立ち位置にいるべきか、を考える。

 仲間になってほしいと言われた、ならば前線に出るのが妥当な所だろうが、モートの魔力は回復特化型、前線で活躍出来る魔法と言うよりも、後方支援が妥当な魔法しか使えない。

 アリサが遺した魔導書を読んで、それを発動しようとした事はあったが、それはモートには使えない種類の魔法の様で、発動しようとすると詠唱が出来なくなる、それが現在だった。

 修行を重ねれば発動できる様になる、という話でもなく、本質的に魔法が合わない、とモートは感じていた。

 ディンなら使えるかもしれないが、ディンは育てるのが役目であって戦うのは役目ではない、それはわかっていた、だから、ディンがアリサの遺した魔法を使えた所で、意味がないだろう。

「まったく……。」

 精霊達は、アリナが守護者に選ばれた事を認識しているだろう。

 本来は精霊か人間かどちらかから選ばれるはずの守護者に、精霊と人間の混血であるアリナが選ばれた理由、それも知っているかもしれない。

 ただ、モートは精霊の湖畔を出た身だ、今更守護者の仲間になったから、と言って受け入れられる事は無いだろう、精霊達は、モートの在り方に見限りを付けていた。

 モートがまだ幼かった頃、十歳にも満たなかった頃、乳母であるアリサに教えられた、守護者の在り方。

 そして、精霊の身でありながら、世界の運用ではなく、守護者として生きた、アリナの祖父の在り方、それを精霊達は、剰え嫌悪すらしている、と言っていただろうか。

 精霊が、下位世界の存在である人間の為に動く、それは精霊にとって侮辱であり、屈辱なのだ、と年長の精霊が言っていた。

 モートは、そんな精霊の在り方に疑問を抱き、アリサがデュオと子を成した頃に、精霊の湖畔を出て、人間と共に生活するようになった。

 そんなモートに、精霊達が情報をくれるとは思っていない、モートが知らなかった、アリサの遺した魔法に関する知識や、守護者の戦うべき敵の事、そして、この世界の在り方、という疑問に対し、精霊達が答える事はないだろう、と感じていた。

 モート自身、そのつもりは毛頭ないが、精霊達は、モートやアリサを追放したという認識を持っているのだろう、精霊の在り方を穢した存在、精霊として、世界を運用する方法ではなく、人間との在り方を見出そうとした存在、それを精霊達は受け入れないだろう、と。

「モート、考え事かー?」

「ん?何でもないよ。ジン、水を飲みたいのかな?」

「ちょっち休憩でな、ディンはまだまだ力を使ってねぇってのが、ちょっと悔しいぜ。」

「竜神様の能力や魔力は膨大だからね。ディンは能力を封印していると言っていたけれど、それでも漏れ出ている魔力が僕達のそれより高い魔力である事に変わりはない。だから、ディンに本気を出させるのは不可能、だね。ただ、ジンの能力の高さもなかなかだと思うよ?大将が言ってた、ジンは俺を超えるレンジャーになる、って。その言葉は、あながち間違いじゃないと思うんだ。」

 考え事をしている所に、ジンが水を飲みに来た。

 モートは、精霊ですら感じ取れないジンの魔力を見出したディンの慧眼、それに驚いていた、モートでさえ、魔力を持たない人間がいるのだな、程度二しか感じ取っていなかったのだが、ディンにとってはそうではない、ジンは、魔力を体内で循環させる力に長けている、と言っていた。

 だから、体外に魔力を放出する事が出来ず、それが結果として、魔力を持たないと誤認する事になっている、と。

 事実として、ジンは今までレンジャーとして活動するだけの力を持っていた、そして、レンジャーの中でもトップクラスに強いと言われているジンが、魔力を持たないというのに、モートは疑問を持っていた。

 それを解決した、ディンが言っていた通り、自分達が感知出来ないだけで、ジンは魔力を持っている、それが正しいだろう、とモートは考えていた。

「んじゃ、もういっちょ行きますか!」

「行ってらっしゃい。」

 休憩を終えたジンが、ディンに喰らい付いて攻撃をしている様子を眺めながら、アリナが魔法剣を発動している様子も確認するモート。

 アリナは魔法に長けている方だ、とは考えていたが、初級魔法を通り越して、いきなり中級魔法である魔法剣を発動している、それにモートは驚いていた。

 ソーラが普段使っている様な上位魔法は使えないかもしれない、と何処かで思っていたモートだったが、今のアリナになら、きっと上位魔法も使いこなせるだろう、そう見えていた。


「ねぇディン、この攻撃受けてくれない?」

「ん?お、魔法剣を発動したか。良いぞ、どれ位の威力になるかは、ソーラにはわからないかもしれないし、そもそもソーラは近接戦向きじゃないからな。」

 夕方、ある程度魔法剣を習得したアリナが、その威力を確かめたい、とディンに話を振る。

 魔力を膂力に変える魔法とは併用は出来ていないが、現在時点での威力を知りたい、問いう事なのだろう。

「竜の誇り。」

 ディンが剣を出して、構える。

「行くよ!」

「来い!」

 アリナが、渾身の力と魔力を発動して、炎の魔法剣をディンにぶつける。

 その威力は、まだディンが能力を全閉状態にしていても受けられる程度だったが、あと少し火力が上がっていれば、ディンも怪我をせずにはいられなかっただろう、というレベルの攻撃になる。

「アリナ、凄いねー!私、近接戦闘はからっきしだからー、この魔法ってこんな威力になるんだー、って言うの知らなかったよー?」

「俺も驚いた、もう少し火力が高かったら、俺の能力も解放してないと危ないレベルだったな。ジンとの身体的修行が実を結んだ結果だな。」

「お、俺も役に立ててたって事か?そりゃありがてぇ話だ!」

 魔法剣を使えない、見た事もなかったジンは、アンナ火力の技を受けて平然としているディンに驚いていたが、ディンとしては、まだまだ発展途上の技、という認識名のだろう。

 もう少し修行をする時間が欲しい、と思っていて、同時にこの世界の様子を探知し続けていた。

「モート、確認したい事がある、良いか?」

「え?うん、なんだい?」

「魔王デモスは南の大陸を支配してる、それは間違いじゃないな?」

「うん。先代の守護者に討たれたはずの魔王デモスが、復活してモンスターを使役している、って言うのは聞いた事があるよ。それがどうかした?」

「その先代の守護者に討たれる際に、魔物を使役していたって言う情報はあったりするか?例えば、魔物とモンスターを融合して生み出した、とか。」

「うーん……。記録を見る事を許されてた精霊は、僕達の中でも上位の数人だったから、わからないな……。アリサもそう言った事は言っていなかったし、どうしてそう思ったんだい?」

 ディンの質問に対する答えは持ち合わせがなかった様子のモートは、逆にどうしてそう言った疑問を持ったのか、と質問を返す。

 ディンの過去の記憶では、モンスターを魔物と融合したキメラが、アリナ達の敵だった、そして、その統率である魔王デモス、それが討伐対象の最終的な目標だった。

 それがこの時間軸で変わったのかどうかを確認したかったのだが、生憎とモートは知らない様子だ。

「いや、なんとなくだよ。魔王って言うのが、どういう手を使って世界を手中に治めようとするか、それに付随して、なら魔物を使うのも一つなのかもなって。」

「うーん……。僕は聞きに行く事は憚られるけど、ディンなら精霊達も教えてくれるんじゃないかな?竜神様は僕達より上位の存在として認知されているから、竜神王であるディンの質問になら、答える気がするよ?」

「……。俺も混血、人間の血が混ざってる身だ。精霊にとって混血が忌避するべき存在なのであれば、それは俺だったとしても変わらないだろう。いちいち竜神達がいなくなった理由を説明するのも面倒だしな。」

「それもそうだね。そうか、ディンも混血だったね。確かに、精霊は混血という存在を忌避している、それこそ、それが竜神様であったとしても、竜神の長であったとしても、許されない事だろうね。アリナは何か聞いていないかい?お母さんから、それらしい話を聞いた事がある、とか。」

「うーん……。私は、おじいちゃんが守護者だった事も知らなかったから、当てにならないかなぁ。お母さんは、何か知ってるのかもしれないけど、私は何も聞かされてないんだ。ごめんね、役に立てなくて。」

「良いんだ。アリナのお母さんの想い、伝えたくなかったって言う気持ちは、よくわかるから。ただ、そうなってくると、誰も現状を知らない事になるな……。ふむ、皆は修行に集中してくれ、もしも魔王が魔物を使役する様になったら、討伐対象として最終目標になる、それだけを念頭に置いておいてくれ。」

 魔王を討伐する、それは本来であれば、守護者ではなく勇者の役割だ。

 アリナはアリサから聞いていた、人間の営みの一つとして、人間はモンスターと戦い、時に魔王と戦い、そして幾人もの勇者が、倒れてきたのだと。

 その役目を担う事になる、それは少し恐ろしい、怖いと感じる、ただ、世界を守りたい、それも感情として強く存在している。

 立ち向かわなければならない、それを覚悟する、アリナは、ディンがそう言ったからには、何処か確証めいたものがあるのだろう、と感じていた。

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