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MAO.U  作者: Sei
7/7

滅亡の始まり


マオ達は別に警察に止められる事もなかった。大体、殺人の証拠が無くなってしまったからだ。

だが次の日学校が休校になった。


「何でだろうな。」

マオはトーストをかじった。

「休校になったの。」


ケンタロウは新聞を見ながらコーヒーを啜っていた。ああ見えて意外と大人気あるんだなとマオは思った。


「多分この事だろ。」

ケンタロウが大見出しの記事を指差した。

そこにはこう書いてあった。


アトランティス連邦新聞


<号外:都内で十分に八十五人が殺害。前代未聞の連続殺人事件>


昨夜の午後9時頃、都内で十分に八十五人が殺害された。凶器は撲殺やナイフだと思われる。アトランティス連邦警察は今日未明、今回の殺人事件の犯人は全て同一人物が起こした物だと発表した。

政府は緊急事態宣言を出し、全ての小中高を休校とする事を発表し、自宅待機を要請した。

また連邦大学の教授は殺人事件の犯人の行動ついて、統一帝国時代に猛威を振るった勇者と言う人物が行なっていた大量虐殺「列可路上げ<レベル上げ>」と一致する所が見られ、勇者派テロ組織の関連性を示している。


「例可路上げって何だ?」マオが聞いた。


「例可路上げは統一帝国時代の時に勇者っていう奴が行った大量虐殺の名前だ。特定の魔物を殺しまくってレベルっていう物......まあ強さだな。それを上げる。そういう物だ。だけど今は世界中で禁止されている。」


「とんでも無い奴だな。」


「他にも勇者はシュテルカーを密造したり、他人の家のチェストを漁ったりしていたんだ。」


「ちょっと待って。シュテルカーって密造できるの!?」


「アア。今は植物とか化学薬品で代用されているけどな。昔はゴブリンの歯とか魔物から採れた素材を使っていたらしい。」


「おっそろしい時代もあったんだな。」


「何回も言っているが、密造するなよ。」


「わかっているよ。」

そう言うとマオは食器を片付けた。


ケンタロウは相変わらず新聞を読み続けたので、暇になったマオはテレビの前で寝転がった。

突然、ケンタロウが叫んだ。


「マオ!!古代語でテレビはなんて言う?!」


余りの急な質問にマオはビクッとした。


「んーッと.......エー......フェルンゼーアーだったっけ?」

物凄く曖昧な答えだ。


「ブッブー。正解はフェアンゼーアーだよ!お前授業、聞いているか?」


「いや、ほとんど居眠りしている。そもそも古代語ってなんだ?」


ケンタロウは目を見開き口をポカーンと開けた。まったく予想を上回る答えが返って来たからだ。


「マオ。お前のフルネームは?」


「マオ・アンゴルモア。」


「違う。真の名は?」


「マオ・F・トイフェルフランメ」


「その真の名が古代語だ。」


マオの頭の中は?の文字でいっぱいだった。


「ん?じゃあお前のフルネームは?」


「ケンタロウ・ハヤミ。真の名はケンタロウ・プファイルシュピッツェ。」


「それじゃあその......プファイル......何とかが古代語って事?」


「大正解。」


<“tp.main character”>


その頃勇者は........


<“/tp.main character”>


<Walking.Streets>


シティの通りを歩いていた。


<“\Walking.Streets”>



勇者の服装はTシャツに短パン。

彼の虚な目には生気はなく、とにかく歩いていた。

突然、目に止まった一人のエルフを尾行し始めた。別にストーカーのようでは無く堂々と尾行しているのだ。


エルフが路地に入った瞬間、勇者はカランビットナイフをサッと空中から取り出し、エルフに切り掛かった。


<アテーナーと遭遇した!>


<勇者のターン。切り付け!>


エルフの正体はアテーナーだったのだ。いくらイキっている彼女でもいきなりナイフを突き立てられたら驚くだろう。叫び声を上げて振り向いた。


<MISS>


振り向いたおかげでナイフは当たらなかったが、勇者も容赦しない。今度はアテーナーの首に両手を突き出すと首を締め始めた。


<スペシャルターン!首絞め!>


アテーナーは苦しみながらも腰から日本刀を引き抜き、締め付けてくる勇者の片腕をザッと切り落とした。


<アテーナーに10ダメージ!勇者に50ダメージ!>


勇者の腕がベチャッと言う音を立てながら吹き飛んだ。

切り口から血が噴水のように噴き出てアテーナーの顔や辺りの壁に飛び散った。


だが勇者は無表情だ。彼はもう片手をアテーナーの首から離すと、懐からフラスコを取り出して中身を一気に飲み干した。

次の瞬間、赤茶色の木の根っこのようなものが傷口からニュルニュルと生えてきた。そしてその根っこが手の形に固まると、それを伝って肌色の液体が垂れてきた。数十秒後に液体は固まり、元の健康な腕になった。

血痕もいつの間にか消えていた。


アテーナーは無言で日本刀を構えた。


<アテーナーのターン。アテーナーは様子を伺っている。>


<勇者のターン。キリツケ。>


勇者は目にも止まらぬ速さでナイフの先端を日本刀の刃にぶつけた。

ガキィン!!

一瞬グリッチが刃を包みこむと、アテーナーの日本刀は柄の部分を残して粉々になった。


「うわぁ.......な......なんだお前は?!」


アテーナーは汗でびしょびしょだった。


<この人は仲間に出来るぞ!仲間にする?>

→<仲間にする>

 <仲間にしない>


後退りをしようとすると勇者が口を開いて、口をパクパク動かした。

少し遅れてエレクトリックな、トーンがばらばらな声が聞こえた。


「アナたハ、ぼくノさガシもとメタヒトだ。」


「?」


「なカマにナッてクレますカ?」


「ホヘ………?エ?はい……….?」


「イま、はいトイいマしたか?」


そう言うと勇者はアテーナーの額に手を当てた。

カチッと音が聞こえてアテーナーの意識は深海….いや心海にブクブクと沈むように遠くなった。

その代わり、別の意識が心海から上がって来た。

その意識は空っぽのアテーナーの体にじわじわと根を張った。


「………………………….勇者様?」

アテーナーの声は変わり、目の色が青から深緑に変わった。


<アテーナーが仲間に入った!>


「あテーナー。キミはイまかラボくノナカまだ。」


「は......はい!何をしたら良いのでしょうか!?」


「マズはレベるアゲがヒツようダ。」


そこで勇者は少し考えて言った。


「キみのガッこうニ、たくサンせイトがいルダろ?」


「はい!」


「セイとを殺せバいいンだ。」


「は......。」

アテーナーがそう言いかけた時、心海に沈んだ元の意識が暴れ出した。


「バカやろー!!ワタシの体を勝手に使うな!!」


「うるさい!ワタシの名はゼリュウ・アテーナー!勇者様のお付きだ!!」


「勇者だと?!だけどアイツは何億年も前に死んだはずじゃあ......。」

元の意識は戸惑った。


「それが違うんだ。勇者様は生きておられた。」


突然、元のアテーナーの意識はゾッとした。


勇者。この言葉には重い意味がある。

何億年も前に死に、魔物を大虐殺し、他人の物を奪い取り、統一帝国を滅ぼした者。

それが勇者だ。

そしてその勇者が復活したのだ。


「勇者様は唯一無の存在!ワタシ達はユートピアを作るために生まれたのだ!!だがその為にはレベルが必要だ。」


「違う!違う!!」

元の意識は叫んだ。

「ワタシは、人殺しになんかになりたく無い!!!!」


「殺すんじゃ無い。倒すんだよ。」

そう言うと今の意識はグイッと元の意識を押し込めた。


「いやだ!!いや.....だ!人を...殺した...く無い...............殺し.......たく.....ない...........。」元の意識は必死に叫び続けたが、ブクブクと心海のさらに深くに沈んでいった。


「シずまッタか?」

勇者が聞いた。


「はい。」

アテーナーは答えた。


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