表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/208

第58話 それはやりすぎだよ

 ざわつく人々(ひとびと)をかきけるようにして、騎士達きしたちまちなかはしってく。

 やっぱり、なにかあったみたいだね。

 すこさきほうたましいてみると、結構けっこうかずひとあつまってるみたいだし。


 正直しょうじき、すごくになるけど、ひとあつまってるところくのはあぶないかな?

 いまはハナちゃんもいるしね。


 そうして、わたしそと様子ようすているあいだに、ハリエットちゃんたちがおかねはらってくれたみたい。

 入浴剤にゅうよくざい香水こうすいを、ハナちゃんが大事だいじそうにかかえてる。


「あんなに沢山たくさん騎士きしかうなんて、なにかあったのかしら?」

にいさんじゃないかな? 最近さいきんぬすみの被害ひがいえてたしね。戦争前せんそうまえってこともあって、まりを強化きょうかしたんでしょ」

ぬすみ……あっちにはなにがあるの?」

「あっちはたしか、貧民街ひんみんがいだったはずよ」

「そうだね。っちゃわるいけど、ボクはあんまりちかづきたくないかな。下水道げすいどうぐちちかくて、ふくにおいがくからね」


 眼鏡めがねをかけなおしながらうホリーくん

 って、そんなことをにしてる場合ばあいじゃないよね!


「ちょ、リグレッタ!? どこにくの!?」

「リグレッタさま!? おちください!!」

「ごめん! ちょっと様子ようするから、ハナちゃんのことねがいね、ベルザークさん!!」


 下水道げすいどうって、盗賊団とうぞくだんいえがあった場所ばしょだよね?

 ホリーくんも、においについてってたし。

 ってことは、ラフじいやカッツたちがつかまっちゃったってことかも。


 心配しんぱいだ。

 ペンドルトンさんにちゃんとあやまって、仲直なかなおりが出来できてればいいんだけど。

 もし、喧嘩けんかになっちゃってたりしたら、だれかがめてあげなくちゃだよね。


 ざわつくひとだかりの頭上ずじょうえて、わたし騎士達きしたちあつまってる場所ばしょかう。

 あつまってる騎士達きしたちなかには、あかかみ少年しょうねんがいるみたい。


 つかまったのは、かれみたいだね。

 またなにかをぬすもうとしたのかな?

 もしそうなら、つかまっちゃってるのは仕方しかたがするけど。


 ちゃんとあやまって、ゆるしてもらおうよ。

 そしたらわたしが、ものつくかたとかかたとか、おしえてあげるのに。


 なんてかんがえながら、少年しょうねんもとようとしたわたしは、直後ちょくご下水道げすいどうぐちからひびいて怒号どごういて、おもわずうごきをめてしまいました。


「うらぁぁぁぁぁ!!」

「この! あばれるな!!」

「うるせぇ!! 邪魔じゃまするなぁ!」


 制止せいししようとする騎士達きしたちを、巨大きょだいなツルハシで蹴散けちらすラフじい

 ラフじいうしろから、ぼうきれとかをったカッツたちもてる。

 みんなで、少年しょうねんたすけにたみたいだね。


 あっという赤髪あかかみ少年しょうねんもと辿たどいたラフじいは、そのまま少年しょうねんうできながら下水道げすいどうかえしてく。


 やっぱり、ラフじいたちあやまるつもりがないみたいだね。

 どうしてなのかな?

 このままじゃ、ペンドルトンさんが本気ほんきおこっちゃうよ。


 わたしがそうおもったとき周囲しゅうい様子ようすていたまちの人々《ひとびと》が、一斉いっせいみちはじめた。

 そのみちとおって姿すがたあらわしたのは、うわさのペンドルトンさん。


 あぁ……すっごくこわかおをしてるよ。


「その少年しょうねんわたしてもらおうか、ご老人ろうじん

「うっせぇ!! だれがテメェらなんぞにわたすかってんだ」

「その少年しょうねん罪人ざいにんだ。罪人ざいにんさばかれなければならない。わたさないというのならば、お仲間なかま全員ぜんいんらえることになるのだが、それでもいのか?」

「バカにしやがって、どうせテメェら、こいつをわたしても全員ぜんいんしょっくつもりだろうが!!」


 威圧いあつするペンドルトンさんをまえにしても、ラフじい全然ぜんぜん退かないんだね。

 それどころか、ほかみんな下水道げすいどうがしながら、自分じぶんぐちとどまりつづけてる。

 きっと、みんなまもりたいのかな?


 すくなくとも、ペンドルトンさんにあやまるなんてつもりは、全然ぜんぜんなさそうだね。


「どうしようかなぁ……いまわたしはいっていったら、ぎゃくあぶなくなったりしないかなぁ」


 騒動そうどうのせいで、まわりに沢山たくさんひとがいるからね。

 もし、乱闘らんとうはじまって、だれかがわたしれちゃうようなことがあったら、ダメだもんね。

 ホントはもっと、おだやかにおはなし出来できればいんだけどなぁ。


 そんなかんがえなんて、だれにもとどかないものなのです。

 ツルハシをかまえたラフじい反応はんのうするように、ペンドルトンさんがいきおいよくうごきました。


 はしりながらながくておもそうなやりを、かまえるペンドルトンさん。

 むかとうとするラフじい

 直後ちょくごやり一閃いっせんとともに、おおきなツルハシが空高そらたかくにげられました。


 正直しょうじき、なにがきたのかえなかったよ。


 かったこととえば、おくれたように金属きんぞくはじけるおとこえてきたこと。

 そして、下水道げすいどうぐちかべにツルハシがさったこと。


「ぐぅ……」

「……」


 そのくずちるラフじいに、ペンドルトンさんはつめたい視線しせんげてる。


らえろ」

 ペンドルトンさんのその言葉ことばで、周囲しゅういにいた騎士達きしたち一気いっきにラフじいかこはじめた。

 それでも、ラフじいあきらめられなかったみたい。


「い、かせんぞぉ!!」

「っ……」

 騎士達きしたちつかまれながらも、ペンドルトンさんにしがみくラフじい


 そんあラフじいて、おおきなためいきいたペンドルトンさんは、にしてたやりおおきくげて……。


「ちょっと!! ペンドルトンさん!!」


 あわててさけんだわたしは、手袋てぶくろげつけながら2もとびました。

 でも、ちょっとおそかったみたい。

 やりさきがラフじい右肩みぎかたさり、あかながてるよぅ。

 い、いたそう……。


 げつけた手袋てぶくろが、やりつかんでくれてるから、重傷じゅうしょうにはなってないみたいだね。


「ペンドルトンさん! それはやりすぎだとおもうよ!!」

「リグレッタさま……」

じょうちゃん!?」


 おどろくラフじい、それにたいして、ペンドルトンさんはおどろいたりはしてないみたいだね。

 かれ冷静れいせいわたしあと、フッと視線しせんわたしうしろにうつしてから、くちひらきました。


「ハリエットに、ホルバートンまで。こんなところでなにをしている?」

 その言葉ことばに、あわててうしろをかえると、ハナちゃんたちっててるところでした。

 いてちゃったのかぁ。

 ってことは、なにがあってもまないように注意ちゅういしなくちゃだ。


「ちょっとものてるだけだよ。それよりにいさん。このさわぎは?」

てのとおり、罪人ざいにんまっているだけだ」

「そっか。それなら、ボクらが邪魔じゃまするのはわるいね。ほら、ハリエットにリグレッタさまもどりましょう」

「ふんっ」


 すぐにこのはなれようとするホリーくんと、ちょっと機嫌悪きげんわるそうにはならすハリエットちゃん。


 ホリーくんにはわるいけど、わたしはこのはなれるつもりはいんだよね。

 なんか、このままラフじいいてはなれたら、すごく後悔こうかいしそうだから。


 わたしうごくつもりがいとかったのかな、ホリーくんすこしだけ不思議ふしぎそうなかおでこっちを見上みあげててるよ。

 ハリエットちゃんは、腕組うでぐみをしたままペンドルトンさんをにらんでるし。

 あぁ、まずい。

 だれか、なんとかしてよ~。


 なんか、もりそとてから、おなじようなまずい空気くうきあじわうようになったよね。

 どうしてこうなるのかなぁ。


 しばらくつづいた沈黙ちんもくあと何事なにごとかったかのように動き出したペンドルトンさん。

 ラフじいとらえておくように、数人すうにん騎士きし命令めいれいしたかれは、そのままのこりの騎士きしれて下水道げすいどうなかはいってっちゃいました。


「だぁぁぁぁ。緊張きんちょうしたぁ」

「……だったら、すぐにこの離脱りだつすればよかったのに」

なさけないわね! ホリーにいさんは、すぐにそうやってそうとするわよね」

戦略的せんりゃくてき撤退てったいは、かしこ選択せんたくだとおもうんだけどな」


 安堵あんどしたのか、そんな言葉ことばわすハリエットちゃんたち横目よこめながら、わたしはポケットにれておいた傷薬きずぐすりして、手袋てぶくろわたした。

 えず、これを使つかえばラフじいきずなおせるはずだよね。


 わたしちかくにったからかな、騎士達きしたちはラフじいつかまえようとはしないね。

 丁度ちょうどいいから、かれなにがあったのかいてみよう。


 そうおもって、私がラフじいそばりようとしたそのとき

 かたからながすラフじいいきおいよくがり、下水道げすいどうけてはししたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ