表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/208

第38話 ずっとずっと

「いやぁ。やはりリグレッタ様の作る風呂ふろ格別かくべつですね。良いおでした」

よろこんでくれるのはうれしいんだけど、せめて上になにか羽織はおってきてくれないかな」

「おいたん、風邪かぜひいちゃうよ」

「この清々(すがすが)しさがいのですが……。まぁ、たしかに。風邪かぜをひいてしまってはもともありませんね」


 上裸じょうらのまま、ソファにすわろうとするベルザークさんを、阻止そしすることが出来できました。

 くやった、わたし

 そして、ハナちゃんもナイスアシストだね。


 お風呂ふろはいって火照ほてった身体からだを、フカフカのソファで休める。

 なんという贅沢ぜいたくなのでしょう。


挿絵(By みてみん)


 贅沢ぜいたくすぎて、ボーっとしてるだけで時間じかんけてっちゃうよ。

 いたら、いつのにか上着うわぎ羽織はおったベルザークさんが、対面たいめんのソファにすわってるし。


 あぁ。最高さいこう


「リグレッタさまかお腑抜ふぬけになってますよ」

「むぅ。べつにいいジャン。一仕事ひとしごとえたんだからさぁ。ちょっとくらい休憩きゅうけいさせてよ。ね、ハナちゃん」

「むにゅぅ~」


 ちょっとちょっとちょっとっ!!

 なにいま可愛かわいこえ!?

 寝言ねごとかな!?

 ほんのりあかっぺたをふくらませて、ソファに寝転ねころがってるから、きっと寝言ねごとだよね!?


 あぁぁぁ!

 ほっぺた、プニプニしたいなぁ。

 ぜったいやわらかいよね。

 多分たぶんかあさんのむねと同じくらい、やわらかいはずだよ。

 あぁ、なつかしい。


今度こんどあぶないですよ」

「っ!? なんか。ベルザークさんにわれたくないなぁ」

「なぜですか!?」


 なんとなく?

 まぁ、とく理由りゆういけど。

 釈然しゃくぜんとしてない様子ようすのベルザークさんは、ひとつためいきいたあとなおすようにくちひらいた。


「ところで、ネリネをうごかすのは、いつになるのでしょうか?」

「あぁ。そうだねぇ。それもかんがえなくちゃだったねぇ」

きたひがしか。ですね」

ひがしかなぁっておもってるけど、でも、ベルザークさんはきたってしいんだよね?」

「そうですね。最終的さいしゅうてきには、リグレッタさまのご判断はんだんにおまかせしますが」

丸投まるなげかぁ」

信頼しんらいしているのですよ」


 ものは言いようだね。

「そういえば、万能薬ばんのうやくきた必要ひつようになるってかんじのこと言ってたけど、あれってどういう意味いみなの?」

「それは……あまり面白おもしろ話題わだいではないですが、よろしいですか?」

 そう言ったベルザークさんは、ハナちゃんに視線しせんげた。

 スヤスヤ寝息ねいきこえるし、大丈夫だいじょうぶじゃないかな。


 そんな私の意図いとってくれたみたいで、ベルザークさんははなはじめる。


じつは、ブッシュ王国おうこくのカルミアより、先日せんじつ襲撃しゅうげきについて情報じょうほう提供ていきょうけたのです」

襲撃しゅうげきって、しろくろの2人のこと?」

「はい。あの2人。つまり、プルウェア聖教国せいきょうこく会合かいごうのことをらした間者かんじゃが、カルミアのそばに見つかったとのことでした」

「そ、そうなんだ」


 ダメだね。

 なに言ってるか、分かんないや。

 間者かんじゃって、なんだっけ?

 らすって、なにを?

 間者かんじゃさんがおらししたっておはなし……じゃないよね。


 なんてかんがえてる私に、真剣しんけん眼差まなざしをけてるベルザークさん。

 ここは、真剣しんけんいてるフリをしなくちゃ、失礼しつれいだよね。


「その情報じょうほうを、ブッシュ王国おうこくは私だけでなく、フランメ民国みんこくにも共有きょうゆうしたとのことで、現在げんざい北方ほっぽうにあるフランメ民国みんこくとプルウェア聖教国せいきょうこく国境こっきょう近辺きんぺんが、緊迫きんぱくした状況じょうきょうになっているようです」

「それはそれは。大変たいへんだねぇ」

「……リグレッタ様。ちゃんと理解りかいされていますか?」

「ごめん。かっていや。簡単かんたんおしえてよ。ベルザークさんは何をそんなに不安ふあんになってるの?」

不安ふあんに……? 私が不安ふあんそうに見えるのですか?」

「え? ちがうの?」


 まゆをひそめて、なんかむずしいことを言って。

 そして、私にたすけをもとめてくる。

 それはもう、不安ふあんそうに見えるんだけど。

 ちがうのかな?


「そうですね……私が不安ふあんおもっていること。それは、戦争せんそうはじまるのではないか。ということです」

戦争せんそう……それは」

「んぁぁぁぁ」


 そんなにこわいものなの?

 ってこうとしたんだけど、ハナちゃんがきちゃった。

 なんか、目をゴシゴシとこすったあと、私の方をボーっと見て来る。


「おかあたん……?」

「え? えへへぇ。おかあさんじゃないよ。リグレッタだよぉ」

一気いっきにデレましたね」

「リッタ。ねぇ、キラキラはしないの?」

「キラキラ? って、なんのことかな?」

「はて、私も知りませんね」


 ハナちゃん、ぼけてるのかな?

 ソファからがった彼女かのじょは、覚束おぼつかない足取あしどりで、階段かいだんほうかって行った。


 そのまま放置ほうちするわけにもいかないよね。

 私とベルザークさんは、視線しせんわしたあと、ソファから立ち上がる。

 ちょっとだけ名残なごりしいけど、それよりもハナちゃんをいかけなくちゃ。


「ハナちゃん、どこに行くの?」

「キラキラ、しないとダメなんだよ」

「ハナちゃん、そのキラキラと言うのは、何のことでしょうか?」

「おいたんも知らないの? キラキラにおいのりしないと、ダメなんだよ」


 おいのり?

 もしかして、ハナちゃんのおうちでは何かおいのりをしてたのかな?

 そのときに、キラキラするもの使つかってたとか?

 でも、きゅうだよね。

 いままでおいのりなんてしたことなかったのに。


「もしかして……いや、ですが……」

「ん? ベルザークさん、何か心当こころあたりがあるんですか?」

確証かくしょうはありませんが」


 5かいのキッチンまであるいてくハナちゃん。

 そんなキッチンのたなけて何かをさがしてるみたいだけど、つからないみたいだね。

 ちょっときそうになっちゃってるよ。

 そのおいのり、そんなに大事だいじなものなの?


 なんとか、手伝てつだってあげたいけど。

 なにさがせばいいか、分からないんだよね。


 項垂うなだれてるハナちゃんに、なんてこえければいのか私がなやんでると、ベルザークさんが口をひらいた。

「ハナちゃん。もしかして、さがしているのはこれではないですか?」


 そう言って、かれふところからり出したのは……。

 なにこれ。

 しろぼう

 私はたことないなぁ。


 でも、ハナちゃんは見たことがあったみたいで、パァッとかおあからめると、元気げんきよく「それっ!!」と言った。


「ベルザークさん。それはなんなの?」

「これは蝋燭ろうそくです」

 そう言った彼は、蝋燭ろうそくをキッチンのテーブルの上にいた。

 そして、おなじくふところからり出した火打石ひうちいしで、火を付けてみせる。


 はぁ。

 なるほどね。

 キラキラって、このあかりのことを言ってたんだ。


「リッタ、これがキラキラ」

「そうだね。綺麗きれいだねぇ。ハナちゃんは、これにおいのりしてたの?」

「うん!」

「ハナちゃん。ちなみに、この蝋燭ろうそく……キラキラに、どんなおいのりをするんですか?」

「えっとね、ずっとずっとたのしいがつづきますようにって、おねがいするんだよ」

「へぇ。素敵すてきだね。私もおいのりしようかな。ちなみに、ベルザークさんは、どんなおねがいを……」


 なんとなく、たずねようと思った私は、ベルザークを見て口をざしちゃう。

 だって、まさかすなんて思ってなかったんだもん。


 右目みぎめから、一筋ひとすじだけなみだこぼしてる。

 そんななみだぬぐったかれは、何事なにごとかったようにいつもの様子ようすもどったのです。


「私も、ハナちゃんとおなじことを、毎日まいにちいのっていますよ」

「……え!? ちょっとって、毎日まいにちってどういうこと?」

毎日まいにちは、毎日まいにちです。まえ自分じぶん寝室しんしつで。リグレッタ様の方角ほうがくかって、いのりをささげる。それは私の日課にっかなのです」

「それで、蝋燭ろうそく火打石ひうちいしあるいてるの?」

「はい。いつ、いかなる場所ばしょでも、いのりだけはささげられるように」

「ちょっとこわいんだけど」

大丈夫だいじょうぶです。いつもは見えない場所ばしょでやっていますから」


 そう言う問題もんだいじゃないんだけどなぁ。

 ってうか、今、私が目の前にいるのに、いのはじめちゃったよ。

 ハナちゃんまでいのはじめてるし。


 えず、私もいのっておく?

 なんていのろうかなぁ。

 そうだ、ネリネのはたけでも、美味おいしい野菜やさいれますように!

 うん。完璧かんぺきだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ